68.OB社員雇用のための人材派遣会社論に足りないもの

企業OBの人材派遣事業について
いわゆる「2007年問題=団塊世代の大量定年退職開始年」で、企業の戦力低下が懸念されているという。量販店のイズミヤが来るべき団塊世代の大量定年退職に伴い、これらの元社員を戦力として雇用すべく人材派遣会社を設立したという報道があった。
なるほどそれはよい試みだとそのときは思ったが、よく考えてみるとそれでいいのかなというのが今の考えである。
イズミヤがどのような考えでこのことを実行されようとしているのかは分からないので論評するつもりはない。
私のいた会社でもすでに子会社で人材派遣事業を行っている会社があり、これに定年退職OBを登録してもらってそこから必要な人材を調達しようという動きがあるようだ。詳細は分からないが私はもう少し知恵が必要と思う。

人材派遣会社方式の発想と問題点
この考え方の発想はたぶん、会社からすれば不足しているスキルを持った人を会社の内情や雰囲気、ルールを知ったOBで補えれば即戦力として使いやすいこと。また働きたいOB社員も勝手知った職場で職を得られて両方良いのではないか、という考え方であろう。一見よさそうに見えるし悪いとはいえない。
しかし、この考え方は雇用する会社の都合が優先し、元社員との関係は人材派遣「契約」という契約関係を媒介にしたものになってしまう。これではOB社員の企業に対するロイヤリテイーは強化されない。
流通業企業OB家族は、その地域の有力な顧客であり、元いた企業へのロイヤリテイーが高ければ強力な“サポーター”になるはずである。サポーターに仕立て上げるという発想が必要だ。

もう1つの発想と提案
OB社員を活用できる道、OB社員にビジネス心があればやれるビジネスがあるのではないだろうか?
たんなる「再雇用」という契約関係だけでは弱い。OB社員の自己実現や、元の会社への貢献のために喜んで活動できる“場”づくりと、その運営を会社が支援、活用するという発想がほしい。

OB社員との関係づくり例は例えば次のようなことが考えられる。
  • 不足する人材のOB活用
  • 競合店状況のリサーチ活動にOB活用
  • 自社店舗モニタリングにOB活用
  • 商品モニターにOB社員家族起用
  • 自社商品の社外販売にOB活用
  • スキル教育に優秀なOB社員を登用する、あるいは勉強会講師登用
  • 手作業を要するような内職的仕事をOB家族に依頼
  • OB社員およびその家族への広報活動や連絡業務の引き受け
  • 企業の社会貢献活動にOB社員も巻き込む。
  • OB社員の起業活動支援
  • OB社員の再就職支援(教育も含めて)
  • さらには広くアウトソーシング化出来ることで、OB社員に受け皿会社を作ってもらってそれを活用することができないか。
などなど、いくつでも考えることができる。こうしたことの受け皿をOB社員に会社を作ってもらってOB社員で運用することも望ましい。
このような視点で考えてほしいものだと私は思っている。


ポイント: OB社員が喜んで活動できる場を作っていくこと、これによって自然と彼らがもといた会社のサポーターになってくれる環境づくりを考える視点に立つこと。