56.アルバイトさんの顧客を見る眼から
●大きなチラシが出た日の顧客の特徴
5年くらい食品レジでチェッカーをしているアルバイトさんからこんな話を聞いた。
その店はあまり大きな商圏の店ではなく、食品レジでは見覚えのあるお客様が普段は多いそうだ。ところが大きなチラシが出ると、いわゆる「バーゲンハンター」的なお客さんが急激に増える。そのお客さんは、所得的にやや低い人が多いのかどうかは分からないが、非常にシビヤーな買い方をするという。いわゆる目玉品だけを買いあさる人が多く、しかも何か売り手側にまずいことがあると性急な追求をする人が多いそうだ。必ずしもいいお客とはいえないのに、このようなお客さんとの小さなトラブルでも身構えてしまうという。
- 「大きなチラシが出る日はなんとなく緊張する。お客様が多くなって仕事量が増えるのは別になんともないが、普段あまり見かけない顧客が増え、しかもこのお客さんの身なり雰囲気が必ずしもいいとは言えない人が多い」。
- 「そういうお客さんともし何かクレームがおきたりするとお客さんの人柄が分かっていないから受け答えする調子にすごく気を使う」
●私のコメント
このアルバイトさんとの話のなかで私の言ったことは、
ポイント: 小さな商圏の小さい店では、チラシを出すと客層がどのように変わるか? 店にとって好ましからざる面をアルバイトさんなりに細かく見ている。
- 「君はお客さんをよく観察しているね。」
- 「お客さんを身なりや所得で差別してはいけない。低所得の人を主たる客層に商売することも立派な戦略だからね」
- 「でも普段あまり来ないお客さんが来て、それがそのまま定着してくれるお客さんならいいけど、目玉商品だけ買っていって、チラシが終われば来なくなるお客さんはこちら側からするといいお客さんとはいえないよね」
- 「小売業の大事なことは、自分の狙った客層の人が固定客(=頻度の高い顧客)になってくれることだ」
- 「チラシを出したら自店のいいお客さんもいつもより買ってくれることは確かだけど、少しありがたくないお客さんも増えることは確かだ」
- 「これからの小売業は、自店のロイヤリテイーの高いお客様の数とそれによる売上を増やし、お客さんも会社も両方成り立つ未知を探って行く時代に入ってきた」
- 「店舗での君の観察と、これからの小売業の戦略のあり方は密接に結びついている。だから君も卒論のテーマにそれを選ぶのもいいと思うよ」