54.社内LAN普及でコミュニケーション体制は向上したか?
●社内ネットワーク、店の声
大手の小売業では店舗にパソコンが置かれ、それが本社とつながっていて、本社からの指示連絡の類がパソコンネットワークで伝達、報告もそれによって本社へなされるという企業が多いと思う。一見便利で、コミュニケーションが向上するように思えるのだが、現実はそうでもないらしい。
私のいた企業の店側の指摘は要約すると次のような声が多かった。
こうした声の店長や店の中間管理者の中には、「催促のあったものだけ報告するようにしている」ということを言う人もいるくらいである。
- 毎日本社から伝えられる指示・連絡、調査報告依頼、情報の総量は極めて多い。
- その重要度合いがわからないため、、最初はすべてに目を通そうとするが、かなりの時間を要する。
- なかでも音をあげるのは、本社各部署からくる、報告を要する指示依頼事項である。
- よく似た項目を本社から別々の部署や管理者から報告を求められるが、何とか一本にまとまらないかと思う。
- 報告の中でもっとも大変なのは、自店のデータを調査して報告をしなければならないような指示事項である。
- すぐわかるものなら別だが、POSデータを拾ってパソコンで簡単な分析をして報告するようなものは部下の手も煩わせるが、それでも1日の大事な時間をデスクワークに取られることが多い。
- 苦労して作成した情報がどれだけ本部で活かされているのかと思う。
一次的問題点は次のように集約出来よう。
この弊害を緩和するために、店舗に報告を求めるものは事前に某部署に許可を得るなどの措置が取られたこともあったが長続きはしなかった。このような形の情報「統制」には無理がある。
- 一人の店管理者が消化できる情報許容入力量と、本社への報告書作成量(情報提供量)は限りがある。その許容度と現実の関係を誰もチェックしていない(量の問題)。
- 本社が店へ流す情報には、自ずと重要度の優先度合いがあるが、パソコンネットワークではそれが判断しにくい(質の問題)。
●本当の問題は・・・
本来有益な情報のやり取りと、コミュニケーション向上のために企業内情報ネットワークシステムが出来たはずなのに、多くの人がこの仕組を疎ましく思っていく。そして、店と本部の良好な関係づくりにも影を投げかけるようになっていく。何かおかしい。
これはチェーンストアの組織のあり様を反映している。
本社に大きな権限が集中すると、本部から店への大量の指示や情報が流され、また大量の報告を求める。店舗は本社の指示を聞き、実行し、結果報告をする。このような軍隊的組織運営の姿が情報システム運営にも投影されてしまう。これが本当の問題である。
システム改善も必要だろうが、技術的な改善や運用ルールの改善だけでは対応しきれない問題があることを見落としてはいけない。
そしてこれについて、情報システム担当者も逃げないで発言、行動してほしいと思う。
ポイント: 情報システム運用で起きる問題は、組織問題であることも多い。