50.お気楽問題: 少年野球監督の野球観
●T少年野球クラブ監督
スポーツ少年野球のお手伝いを10年間やってきた。自分の子供達が長くお世話になっており、お礼奉公の意味もあった。
私の住む市の近隣(郡部)にT少年野球クラブがある。このチームは地方でありながら常に全国トップクラスの実力で有名である。このチームの監督は野球が強い高校の野球部出身であり、まだ30歳代の方である。
たまたま私の息子が、毎年恒例の高松市選抜チームと対戦する地元側選抜チームメンバーに選ばれ、その監督にT少年野球クラブ監督が担当されることがあった(2002年)。選抜チームの練習期間は約1ヶ月あったので、私はよくこの練習を見学に行った。
あるときこの監督が、バックネット裏から練習を見ている私を見つけて話しかけられてきた。地元選抜メンバーの父兄と分かり、自分の野球観を熱心に話されたのである。
●監督の野球観変貌
私はこの監督の10年位前の少年野球指導を少し覚えている。いい印象は持っていなかった。
要するに「勝ちにこだわる」野球であったのである。この時代にこの監督に教わった小学生が中学では野球部に入部しない子供も多かったと聞いていた。
- 対戦相手の守備力が弱いと見るや、バントの必要性がないにもかかわらずバントの連続。
- うわさであったが、体罰も時々・・・。
この監督が私の息子の選抜チーム監督のときは大変身を遂げられていた。私に話された内容は、
こんな趣旨の話であった。
- 「自分は野球観が変わった」。
- 「子供は、バントの必要な場面ではきちんとバントをして役割を果たしたことに満足し、走者のいないときは思い切りバットを振って、出来ればホームランを打つことが最高にうれしいもの」。
- 「それが若いときの私は分からず、ただひたすら勝ちに行った。子供が本当に心から喜んでいないのである。これではいけないと思った」
事実、私の息子もこの監督にうまく乗せられて気分よく活躍してくれた。最終練習試合では長打を、高松戦ではヒットエンドランを決めて監督から誉められたと聞いている。
●少年野球監督は職場の管理職と同じ
この監督の話を聞いて、
- 勝ちにこだわる野球=勝ちにもっともこだわっているのは選手ではなく本当は監督自身=選手は監督の手駒(道具)となってしまう。
これは職場の管理職の部下観と同じではないか?
- この監督の今の野球=子供の気持ちを大事にする野球=子供が野球をずっと続けたいと思う指導=子供をパートナーと考える。
この監督が指揮されているT少年野球クラブは今も勝率9割以上、いろいろのチームから招待がかかり、今も全国トップレベルの強さである。
私は少年野球の現場では怒鳴ってばかりで、ダメ指導員だなと思う。