47.取引先関係論U: 取引先厳選とコラボレーション
●取引先の見方
お取引先は、販売商品の仕入先、経費や資産となるものの購入先などがあるが、それはどんな業種でもそんなに変わらない。それが、商品であれ、経費であれ、それはコストが低いに越したことはない。
そのため、会社の幹部も原価見直し、経費見直しを要求してくる。
それはそれで一面の真理があり、それを否定するものではない。
しかし、取引先はそこが供給する商品を安く提供する能力だけで評価すべきものではない。
●取引先決定要素
取引先を決定する要素は次のようなものがある。
企業が購入(仕入れ)するものによっては、2〜5の要素があまり問題にならず、1のコストが圧倒的決定要因となるものも多い。しかし、2〜5の要素を重視せざるを得ないものも多いことは確かである。これを知ってか知らずか、一律にコスト削減、経費削減要求を求められることも多い。
- 供給してもらう財の価格
- 供給体制の質(リードタイム、納品率、物流や納品の方法など)
- 営業サポート体制(苦情処理、突発事情への即応性など)
- 営業マンやその背後組織のソフト的能力(提案力やその企業の将来に向かっての変革能力)
- 供給企業の総合的信用や活力なども2次的要因として重要。
コスト要因を大して分析もせず、取引先にコスト引き下げだけを要求するのは下手をするとイジメと紙一重だ。
私は、取引先を、コスト重視の取引先と、3,4などのソフト重視の取引先とを分けて考えてきた。
●取引先観の二極化、鮮明化
世界の流通業は取引先に対する姿勢を二つの極に分極化してきているように見受けられる。
ひとつの極は、徹底してコスト削減に取り組める領域では、世界中からインターネットを通じて商品(または財)供給を受けられる相手を探すという流れ、つまり「取引先の厳選」である。
もうひとつの極は、取引先が「余人を持って替え難い」場合、商品コストだけでなく、双方の在庫削減、リードタイム短縮など総合的な「付加価値」を、取引先とともに協調(コラボレーション)して追究していこうというものである。
- これは“Eマーケットプレース”(電子商取引市場)と呼ばれ、お互いライバル同士である世界の大手流通業が協力し合ってインターネットの世界に商取引市場を開き、徹底してコスト削減を図るといういう動きであり、2000年頃から稼動している。
- この動きは、直接的にコスト削減を図るべく、新たな取引先を求める動きである。
この話は主に商品調達の話だが、重要なのは取引先厳選とコラボレーションというマネジメント観である。一見矛盾するこの二つに共通するのは「論理と科学」の追究である。“イジメ”ではない。
- これはサプライチェーンマネジメント(SCM)の考え方の基礎となり、そのために情報共有化を図るべく、システム面でもこの仕組みが発展してきている。ここでは、取引先とのコラボレーション(協調)、WIN-WIN関係を築きあう関係として意識される。
- こうした取引先マネジメントは19990年代以降の思想である。
- これはまたCRMにも繋がっている。
●取引先との新しい枠組み作りを!
本稿のテーマは、電子商取引市場や、サプライチェーンマネジメントといった大きな話ではない。取引先をまだまだ調達原価という軸だけで見がちな流通業のマネジメント色に反省を!ということを言いたかったのである。そのために、自社、取引先双方に関わる問題について、取引先との関係では次の二つを強調したい。
これは商品購入先だけでなく、経費調達先も同じだ。
- 自社と取引先の価値観や情報共有化のベースに立ったシステム作り。
- 自社の問題解決や、プロジェクトにも取引先の知恵を求め、ことにあたる姿勢(必要なら自社、取引先双方の内部に立ち入った改善や、仕組みづくりも必要)。
すべての取引先にできることではないが、納入価格以外に、取引先の知恵、力を引き出す軸からも取引先を見、利用しあい、さらに大きな価値(Value)を引き出す視点からも取引先との関係作りを行いたい。もちろん、自社に一方的な利益をもたらすだけのものであってはならないことは言うまでもない。
WALMARTの取引先に対するオープンドアポリシーも同じ視点の考え方であると思う。
取引先に単純にコスト削減ばかりを求める姿勢にはうんざりしている。
ポイント: 取引先をコラボレーションという視点から自社の戦力にしていくために、情報公開、知恵の導入を図るというマネジメント観が必要。
「46.取引先関係論T: 悪い“冗談”」参照