41.保険会社と顧客ニーズ
かって私が所轄していた営業事業の中に「保険事業」がある。
といっても損保中心で、一部ガン保険などの生保商品もある。残念ながら私の営業事業でありながら、担当者への指導は十分でなく、あまり業績を伸ばすことが出来なかった。
「保険という商品は顧客と長い間保険代金の支払やサービスでお付き合いをする。このお客さんが10年間いくら保険金をかけてくれるか」といった問題意識は日常的にあるものと思う。また顧客との対話も、事故処理だけでなく、保険の掛け代え等のためにも続く仕事である。実際、一旦顧客となった人へのサービスやケアは各社とも非常に力を入れている。
ところが顧客中心主義というコンセプトからはだいぶ距離がある。理由はこんなところにあると思う。
●業界の問題点
1.保険業界が生保、損保と顧客ニーズとは関係のないところで分かれていたこと。
2.保険業界は以前から代理店、外務員や営業担当を使っての「単品押し売り」業界であったこと。
- 数年前の規制緩和策で壁はなくなったが、行政や業界事情でこれが分かれていたことの名残は今も色濃く残っている。
3.業界全体が再編成の進行と生き残りをかけた競争状態にあって、顧客のこともさることながら、生存、ライバルに負けないことが求められている。
- 「自動車保険獲得キャンペーン」、「○○キャンペーン、目標nn件!」といったようにキャンペーン中心で、いわゆるプッシュ型商売がまだ今も幅をきかせている。
1,2を通じて長年一人ひとりの顧客ニーズを満たすことから遠い状況が続いてきた。これに対して、業界内部からも規制緩和を契機に、反省気運があることも確かで、CRM論議が起きつつあるとも聞く。診断型の営業やそのソフトも作られているようだ。
- 保険会社主催の会合などに出席していると、「○○保険に負けるな」というような話がしばしばでてくる。顧客のニーズは本当は後回しになっているのではないか?
●保険会社の役割とは?
最近では、外資系や新参保険会社が掛け捨て型商品をよく宣伝している。保険事業を分かりにくくしているのは、事故、病気がおきたときの金銭的リスク補償という側面と、保険会社に保険金をかけて広く「貯蓄」を行なうという側面がある。しかし「貯蓄」は保険業界だけの専権事項ではない。これが保険業界を理解しにくくしている。
保険会社は「メーカー」ではないかという理解も無理がある。事故や入院などの対応はほとんど保険会社が行うからだ。販売代理店の立場はどうあるべきなのか?
私は「保険会社は顧客に何を提供しようとしているのか?」、まだ分からない。そして保険代理店事業者の役割も、不勉強の至りで保険担当者にも的確な指示が与えられなかった。
しかし、生損保の壁が取れ、一人ひとりの顧客ニーズに合った対応が出来るよう業界全体が徐々に体制が整えてくことを期待したい。
ポイント: 顧客の保険に対するニーズ、保険会社のスタンスアンマッチだったが、今後に期待。