39.スポーツクラブの“CRM"
かって私の担当業務のひとつであったスポーツ事業のうち、フィットネスクラブはCRMの格好の教材である。
●CRM4つのステップ
アメリカの代表的CRMコンサルタント会社である、ペパーズ・アンド・ロジャースグループ(Peppers & Rogers Group)はCRM(Customer Relationship Management)のプロセスを4つのステップに分けて説明する.
であり、第3と第4はフィードバックを繰り返しながら行きつ戻りつする。この説明はわかりやすい。
- 第1はIdentify(顧客の識別)
- 第2はDifferetiate(顧客の区分化つまりセグメント化)
- 第3はInteract(顧客との対話)
- 第4はCustomize(顧客対応のカスタマイズ)
●顧客の初期的「識別、セグメントグループ分け」
フィットネスクラブへ入会する顧客の動機はさまざまであるが、大体次のどれかに入ることが多い。
こうした顧客の動機、目的をしっかり把握しなければならない。
- もう少しやせたい。
- 体力(全体または一部の体力)をつけたい。
- 血糖値を下げたい。
- ストレスを解消したい。
本人と面談の上、初期診断も実施したうえで、綿密な目標設定を合意の上で行う。そしてこれを顧客カルテに書き込む。
ここまでは大体どこでも行っていることと思われる。
そしてこれは顧客の「識別」とニーズに基づく「セグメント化」である。
●「対話とカスタマイズ」を通じて顧客との継続的「関係」作り
そして一旦加入された会員とは、
このような体制が目標になる。簡単に書いたがここは実際には非常に難しいテーマである。
- 正しい知識に裏打ちされた、一人ひとり向けのアドバイスや指導
- 目標に向かっての進捗度等を会員及びスタッフ双方が確認
- 会員とクラブスタッフとの良好なコミュニケーション関係維持
- 上記の過程を、良いことも問題点もきちっとカルテとして記録をとり、情報として整理しておくこと。
- 更にマンネリ化を防ぐために、会員が楽しく参加できるイベント他、いろいろな工夫をしていく。
- 退会者が出た場合でも、本当の退会理由が分かるだけの体制作り。
病院と異なり、クラブ会員には出来るだけ長く会員として継続していただける努力と工夫が必要。
これは顧客満足度向上を通じての優良顧客の維持拡大という視点になる。つまり、顧客との「関係性」マネジメントそのものである。
ここでのポイントは、
これは、「対話」と「カスタマイズ」のフェーズである。
- 顧客との広義のコミュニケーション活動。
- 顧客の活動及びコミュニケーション状態のしっかりとした記録
- 1,2の実行を評価し、顧客対応を改善していくマネジメント。
●新規顧客獲得よりも原則を守り、既存顧客満足を優先!
このビジネスのポイントが、クラブ会員の満足を通じての顧客維持を優先すべきであるにもかかわらず、会員数増加の実績を残すため、新規会員獲得に一生懸命になり勝ちである。 新規顧客が増えても退会者が多くては会員は増えないし、それどころか悪評まで拡がりかねない。
私の管轄であったスポーツクラブも一時期このことを見失っていた時期があったように思う。
2004年10月現在、私の所轄したスポーツクラブスタッフは、この4つの原則をある程度理解してきており、しかるべきバランスのある対応ができてきたと見られる。
結果的に、退会率も低下しながら会員数も増やしていると聞いている。
ポイント: 会員制ビジネスはなおさらであるが、CRMの4つのステップを確実に踏むことが顧客満足とビジネスを両立させる原則だ。