32.(株)武蔵野社長小山昇氏のコミュニケーション論

企業のなかで「コミュニケーション」をよくする方策というとハタと考え込んでしまうのではなかろうか。
コミュニケーションから想像するのは、ホウレンソウ(報告、連絡、相談)であったり、会議やミーテイング、朝礼、ノミュニケーションであったりで、なかなかこれ以上のものが思いつかない。

小笹芳央氏が社員モチベーションのキーに「コミュニケーション」をあげている(31参照)が、ここに紹介する小山昇氏は現役社長の立場からやはりコミュニケーションを重視している。

株式会社武蔵野の社長小山昇氏は従業員300人程度の中小企業の社長でありながら、日本経営品質賞も受賞されているそうだ。 そして年間多くの講演活動もこなされながら自分の企業の業績も立派にあげられて注目を浴びている人であり、著作も多い。

●小山社長の工夫例
小山社長が日経BPサイトに連載で彼のコミュニケーションへの工夫をみて思わずうなるものがある。その例の一つを引用してみよう。
「ありがとう」の雰囲気を作るサンクスカードの導入

 昨年、私は会社の幹部に「3年以上現場から離れている管理職は社員の指導をしてはいけない」と言いました。 なぜいけないかというと、現場からずれている感覚で現場の指導をしてはいけないからです。 そこで、私は幹部社員に「これからは指導ではなく、現場に行って現場で働いている社員とかアルバイト、パートさんを励ましてあげなさい。 相談相手になりなさい」ということを指示しました。

 うちの会社の社員は、社長が言っていることだから「はい」と返事をします。 でも、現場に行って実際そういうことをやっているかどうか。 たとえば、やっている人が10%だとすると、やっていない人は90%。 人間というのは指示されてもやらない。それがまともな人です。 返事をするのと行動するのは違います。

 そこで私はどうしたかというと、サンクスカードというものをつくりました。 こういうカードをつくって、現場に行って自分が指示したこと、教えたこと、励ましたことをやってくれて、成果が上がったら「ありがとう」という意味で、サンクスカードを出すようにするのです。 この場合は自分の部下に出すのですが、逆もあります。 上の人がいろいろなことをアドバイスしてくれたり、励ましてくれて「ありがとう」と思えば上の人に出します。 もう一つは、スタッフ部門が、たとえばフィールドの人たちに何かお願いして、すぐやってくれた時も「ありがとう」、というわけです。 要するに会社全体が素直に「ありがとう」と言える雰囲気をつくろうということが目的の一つです

 先ほど取り上げた幹部社員への指示は、それだけでは実際に実行してくれているかどうかわかりません。 ところが、サンクスカードを月末になって全員分を回収すると、だれが現場でみんなを励ましているか、だれがみんなにほめられているかということを計量化できます。 いま、そういう仕組みをつくっています。その結果は賞与の評価につながります。 人にあげないと評価が下がるし、もらえないと評価が下がる。 カードをあげるためには自分が何かアクションをしないとあげられないし、もらうためには、普通のことではなくて、ちょっと努力をしないともらえない。 そうするとみんな考えるようになります。

 私の会社は、社員、アルバイトを入れて360人の会社ですが、毎月2000枚近くのサンクスカードが動いています。 1人平均6枚が動いていることになります。 毎月6枚のカードを動かすということは大変なことです。 これが社員としてのサンクスカードの使い方です。
http://smallbiz.nikkeibp.co.jp/members/COLUMN/20020625/101497/
より。
小山氏はこのほかにもたくさんの工夫をされているが、こんな葉書の利用例が感心させられる。
  • 社員を褒める場合、時には葉書にそれを書き、社員宅へ郵送する。
    社員の家庭ではそれを見て奥さんや子供たちが、「お父さん、社長さんに褒められたね」と言葉を交わす風景が見られることになる。 社員本人にすれば家族にまでそういってもらえることがうれしいに違いない。 小山社長はそれを考えていつもポケットに何枚もの葉書を持ち歩いているという。 社員の住所は持ち歩いている携帯端末のなかにあるそうだ。
●我々は工夫が足りない
このサイトの一連の書かれたものを読んでみると小山氏はいくつもの名言を吐いておられる。
  • 「人はぬくもりで生きている」
  • 「コミュニケーションは質より量だ」
  • 「管理職のくせに部下の良いところを探せないのは、感性が悪いんです」  などなど
この方は、
  • 社員を思うこころ
  • 企業収益を追求するこころ
  • IT技術を使いこなすこころ
いずれもが高いレベルである。 コミュニケーションの工夫も「なるほどこういうように考えればまだまだ我々は知恵の出し方が足りない」と勉強させられた。

  なお小山昇氏は2004年10月現在もこのサイトに連載執筆されており、すでに100回以上のシリーズとなっている。
これを読めば分かるが、小山社長は他方で厳しいマネジメントも実行されており、やさしいばかりではない。



ポイント: コミュニケーションは工夫次第。コミュニケーションは質よりも量。