28.フィットネスクラブなどの「入会金」制度

●入会金の性質
かって私が所轄していた事業の話で、まだ私も納得しないまま結論を放置したことがある。
それは、フィットネスクラブの「入会金」のことだ。

普通フィットネスクラブへの入会は、入会金を頂くのが普通だ。最低でも何千円である。 そして我社の私が担当しているフィットネスクラブでもお客様から頂いている。 
しかしこのお金の性質は何なのか?私にはよくわからない。

こういう説があった。
  • 施設開設時の固定費を顧客に一部ご負担いただくものだという説明。
それはおかしい。小売業で店舗を作るときに大きな初期投資がかかる。これをお客様に負担していただくことはありえない話で、スポーツ施設でも同じである。

またフィットネスクラブがお客様を獲得するのによく「入会金半額」とか「今なら無料」とかいう手段をよく使う。 よくよく調べてみるとクラブ会員の過半数のお客様が入会金無料か半額のときに入会しているではないか。 ゴルフの会員権とも異なり、べらぼうに大きな金額でもない。これほどいいかげんな根拠はないではないか?

私にはお客様が短期で辞めると入会金の相対的負担が大きい事を狙って、辞めにくくする手段に使っているのではないかと疑っている。あるいは、新規顧客を獲得するコストは大きいが、そのコストをこれで吸収することを意図して作られた慣習ではないか?とも邪推?している。
しかしそれでも入会金をまともに払っていない顧客の方が多いのであれば、その目的を十分達していないことになる。
また顧客の方を向いた制度とは思われない。
フィットネスクラブが運営内容で勝負する気なら、こんなもの頂かないのが筋ではないか?

●私の提案
フィットネスクラブの退会率は入会後半年以内が最も高い。
この時期の顧客のケアーは特に重要であり、神経を使うところである。
他方、長期に会員であり続けている顧客は、自分の居場所も比較的はっきりしており、自分のこなすべきトレーニング内容もよく理解している人が多いようだ。あまり手のかからない人が多い。

そこで私の提案として暖めている制度は次のようなものである。
  1. 入会して半年間、入会後2年まで、3年目以降と月々の会費が逓減する制度を採用する。
  2. 入会金は一切頂かない。
長い滞留暦を持つお客様は、今後も顧客であり続ける期待価値が高い。 逆に少し割引をして差し上げてもよい。 
昨日今日入会されたお客様は、お世話もかかるし、また退会リスクもあり、期待生涯価値が低い。 当然正規の料金を頂くのが筋である。
しかし、わけのわからない「入会金」なるものは頂かない。
逆に長期にわたっての会員は、既存の実現収益も高く、退会リスクは相対的に低い。長期会員暦顧客には多少の割引を設定する。
このように提案してみたいと考えている。



ポイント: 業界慣行である「入会金」制度を疑いもなく受け入れている不思議さ。 顧客中心主義に合致しない。