10.ある子会社の苦情処理体制について

●子会社の監査での経験
子会社の監査担当業務を1年間担当した。
既に「苦情処理体制」を子会社の監査項目に新たに追加していた。
ある子会社で、こんなことがあった。
  • 最近「顧客担当」の専任者が配置され、店および本社でのクレーム処理体制も整えられた。
  • 苦情の実態や大きなクレームは営業会議で毎週報告され、そこから何を学び、どんなことをやっていかねばならないかを模索していく体制作りが始まった。
  • これにはその会社の社長の熱意が反映している。
  • 他方この会社はお客様の来店やご利用についていわゆる「ポイントカード」を採用しており、これをてこに上位顧客の維持拡大を目指した取り組みも行い始めていた。

●助言内容
ここが作った苦情カードを見て「顧客氏名」欄にカード会員番号にないのに気がついた。
当然苦情を申し出た顧客がどれくらいこの会社のお店を利用しておられる方なのかの情報は何もない。 これではせっかくカードを採用していても苦情処理との連動はなく、考え方が不十分であった。
私の助言は次のとおりであった。
  1. 「苦情承り簿」にお客様のカード情報を記入する欄を設ける。
  2. 苦情のあったお客様のカード番号、最近3ヶ月間のご利用状況を記入する。
  3. あわせて、このお客様のランク判定を記入する。(ランク判定はそのお客様の重要度を何かのものさしでたとえばS、A、B・・・のようにランク付けしたもの)
  4. 苦情の原因になった原因解明と対策については、相手がどのようなお客様であっても同じように取り組む。
  5. S、Aランクのお客様(重要顧客)に対しては、苦情解決の1〜2ヵ月後にそのお客様が苦情以前と同じようにご利用お買い上げ状態に戻っているかどうかを確認する。(それも苦情処理記録に残すこと)
  6. もし以前と同じようなご利用にほど遠い状態であれば、それは苦情処理に本心から納得していない可能性が強いと考えられるから二次対策を考える。
  7. このようなお客様に対しては、店からでもお客様に電話や手紙などの手段でそのお客様に何らかの働きかけが必要と思う。     
  8. 苦情処理は、そのお客様が以前と同様、またはそれ以上に来店されることを望み、またそれが実現されてこそ苦情処理が終わるという考え方が必要。
苦情のあったお客様に対しては、そのお客様の情報を可能な限り収集し、そのお客様にふさわしい解決をし、できれば苦情以前よりいいお客様になっていただきたいという強い「願い」が必要と思う。
そして苦情の原因になった対策を「このように進めています」という事後報告情報をそのお客様に入れることも場合によっては必要である。

この意見に子会社社長は大きく納得し、すぐ部下に指示を出すとともに、翌期の会社方針説明の中でこのことを子会社幹部社員に改めて説明、徹底を図られた。 監査としてもうれしい行動であった。



ポイント: 苦情原因の一時的除去だけでなく、その顧客が心から納得するまでの解決が必要。