2003年6月26日 生野南小学校にてセレッソ大阪さんの協力で行われた講演「熱中症...その対策と予防」から、生南FCをはじめ皆さんが安全にスポーツを楽しむために、このページを作成しました。  講演して下さったセレッソ大阪・中田、服部両氏に心から感謝致します。


熱中症講演会の様子

生南FC低学年のこども達には少しむずかしいかもしれないけど、ページ一番下の「生南FCの大切な約束」だけでもしっかりと覚えるようにね!
「熱中症について」
「熱中症」とは日射病や熱射病などの総称で「高温下での運動や労働のため、発汗機構や循環系に異常をきたして起こる症状。体温上昇、発汗停止とともに虚脱・けいれん・精神錯乱・昏睡などを起こし、生命の危険を伴うこともある」とされています。

通常人間の体は体温が平熱より上がると汗をかき、その汗が蒸発すること(気化熱)により、上昇した体温を下げるという機能を本能的に持っています。
しかし、高温多湿(熱くてジメジメした状況)な場所で水分補給をせずに長時間激しい運動を続けると、当然、体内の水分が不足してしまいます。 つまり体温を下げる気化熱が発生させられずに体温が上がり続ける...ということになってしまうのです。
これは真夏の炎天下でも、風通しの悪いグラウンドでも、体育館でも水分をとらずに激しい運動をし続けると同じ状態になるのです。
そしてそのままいつまでも体温を下げらない状態のままでいると、人間の脳は体温を調節する機能を失なってしまい、さらに体温はドンドンと上昇、頭痛や吐き気、めまい等を起こし、最悪の場合は死亡してしまう可能性もあるのです。

この熱中症、大きく分けると、症状に応じて熱失神、熱性痙攣、熱疲労、熱射病とに分類され、なかでも熱射病がもっとも重症です。
熱中症の予後は、高体温、意識障害の持続時間、倒れてから救命処置までの時間に左右されるので、一刻も早く搬送を行う必要があります。


すこし難しいですが、このページでは”なぜ熱中症になるのか? どうすればそれを防ぐことが出来るのか? また、もし熱中症になってしまった場合の対処法”などを学びます。



[熱中症の起こりやすい具体的な環境、時期、好発種目、性差・年齢]

[環境]

@高温A多湿B無風C通気性の悪い体育館などの劣悪な環境下で激しい運動を行ったときに生じやすく、スポーツ障害のなかでは最も重症度が高く、死亡例も散見されている。

[時期]
4〜9月と幅広く起こるが、7〜8月に圧倒的に多発発生する。
熱中症の起こりやすい条件は気温28°C以上、湿度が60%以上。気温25°C以下でも、湿度が90%を越えると体熱の放熱がうまくいかなくなり死亡することもある。発生時刻は10〜14時に多く、10時以前や18時近くに起こるケースもある。 発生に至る練習時間は4時間以内が顕著だが、1時間以内のランニングなどでも起こる事があるので注意が必要。

[好発種目]
競技人口が多く、野外で行う野球やサッカーで好発する。 長時間のランニングによる発生率が最も高いが、直射日光とは関係のない屋内スポーツでも発生することがある。体育館は通気性が悪く、温室状態なので外気温ほど高くなくとも発汗の妨げとなり、熱中症が発生しやすい環境にあると言える。

[性差・年齢]
男子が9:1と圧倒的に発生しやすく、年齢は高校1〜2年生に多く、以下中学生が続く。小学生に以外と少ないのは事故発生に至るとされる時間まで体力がもたないからなのかも知れない。


[熱中症の事例とその対応の難しさについて]
ある事例では 19歳男子が10キロマラソン中に倒れ、20分で救急センターに搬送され、冷却液の輸液や胃洗浄を施し、7時間後に41.9°Cから37°Cに回復させ救命しえたが、4〜5日後から肝、筋障害(横紋筋融解)が現れ、熱中症治療のむずかしさを報告している。

熱中症の予後は高体温、意識障害の持続時間、倒れてから救命処置までの時間に左右されるため、監督者はその状況を的確に判断し、躊躇せずに一刻も早く搬送を求めることが重要である。
 
[熱中症の段階別に見た症状と応急の対処法]
1.熱失神
皮膚血管の拡張による循環不全で血圧が低下する。脳に血液が行かなくなり、顔面蒼白、めまい、失神、呼吸回数の増加などが起こる。まだ体温の上昇はみられない。

2.熱性痙攣
激しい運動をして大量の汗をかき、水分や塩分などが失われたり、また水だけを飲み過ぎると、体内の塩分平衡障害のため突然、四肢や腹部の筋肉が痙攣を起こして痛くなる。この時点では、
まだ体温の上昇はみられない。

 応急処置としては、
 @ 運動を中止させ、横に寝かせる。
 A 衣服をゆるめる。
 B 手足に水をかけて冷やし、こもった熱を放散させる。
 C 0.9%の食塩水を飲ませる、などの処置を行う。(ナトリウムを多く含んだスポーツ・ドリンクでも可)

3.熱疲労
暑さに慣れない時期によく起こる.スポーツ活動による脱水状態によって末梢循環不全となり、汗を異常にかき、ときに意識障害を伴い顔面蒼白となる。

応急処置としては、熱性痙攣と同じ処置であるが、最寄りの病院に運ぶほうが安全である.輸液によって早期回復が期待される。

4.熱射病
熱中症のなかでももっとも重症で生命にかかわる危険がある.体温が40℃以上(41℃〜43℃)になることが多く、汗はあまりでず、意識が消失、痙攣発作を起こす.ただちに全身冷却を続けながら一刻も早く救急センターに搬送する。

 
[熱射病に陥ったときの応急処置まとめ]
意識のあるうちに電解質をを含んだ水分(薄めたスポーツ・ドリンクでも可)の補給をさせ、体を冷やすことが重要なので出来る限り早めに応急処置を施すこと。
 先ず病院へ転送する手配を行うと同時に、直射日光の当たらない木陰などに足を高くして寝かせ、体の表面(首、脇の下、大腿部の付け根など、血流の表面化しているところ)を氷りや濡れタオルで冷やしながら、うちわなどで風をあてる。一般に熱を下げると言うと、頭や額を冷したりするが、これは”体温を下げる”と言う意味では余り効果は期待できない。 ひとまず38度を目安に熱を下げる。もしも余りにも急激に冷しすぎて筋肉が震えるようならば、冷しすぎであり、一端冷すのを止めて徐々に行う。(常に体温を確認すること)
 
 間違ってはいけないことは上記の処置は救急車が到着するまで、もしくは車で病院へ運ぶ際に行うべき、あくまでも"応急処置"であり、一刻も早く、然るべき施設へと運ぶ事が何よりも重要である。下記の事例にあるように発祥当日は回復しても数日後に肝・筋障害を併発することもある。 絶対にこの応急処置だけで症状が完全に回復するなどとは考えてはいけない。
 
  熱中症を予防するには 〜スポーツ現場での水分補給〜

真夏のハードトレーニソグは根性を養う絶好の機会だ」、「スポーツ中に水を飲むとだらける」とか、「水を飲むと運動能力が落ちる」などといって水を飲ませない指導者が今もっているが、それは全くの間違いである。

運動時の水分補給が、脱水、体液成分の変化および体温上昇をゆるやかにしてくれ、生命の危険にさらしてしまう熱中症の予防に効果があることは広く知られている。特に暑くなる季節には普段から栄養のバランスを考えた食事と睡眠をしっかりと取り、健康管理をさせる。
サッカーの練習や試合の前後には必ず、準備運動と整理体操、ストレッチングをさせて水分補給も忘れずに行う。
  練習中にも、こまめに、「のどが渇いた...」と感じる前に水分補給することが大切。

   

そして試合中は外気温、湿度、日光の状態などを観察し、こまめに水分を補給させる。冷した水、お茶だけでなく、スポーツドリンクも併用すること。

具体的には練習や試合前後には薄めたスポーツドリンクを、試合中には冷した水や、お茶を補給させるのが望ましいが、絶対に必要な量と言うのは個人差もあるので一概には言えない。

最も大切なことは、 小学生の頃から「自分は汗かきだからこれくらいは必要」と、
運動時の水分補給の必要性を理解させ、子どもたちに水を飲む習慣を身につけさせる事とともに、自分自身でも少しずつ体調管理を含めて健康への意識を持たせることである。
  今やスポーツ時には欠かせないスポーツドリンク。 その中には熱中症を防止する成分がたくさん含まれている。     
>>スポーツドリンクについてページへ
     

◎上手な水分補給方法◎ 
                            
@ スポーツの15分位前にコップー杯(約200cc)のスポーツ・ドリンク等を約1/2に薄めたものを飲む。
A スポーツ時は飲みたいときに少しずつ(1回に100cc程度)を何回も補給する。
B ドリンクは冷たいものがよい。胃壁の働きを活発にして水の吸収を早くする。
C 水、麦茶、ウーロソ茶でも代用できるが、電解質、糖質を含むスポーツドリソクが販売されており便利である。(しかし、市販の物の多くは甘く作られていて胃に長く残り、水の吸収を遅くする。また、喉がベタ付いたりする事も多いのでスポーツ中では1/2程度に薄めて利用する方が良いだろう)
 
                            
 
〜スポーツ指導者のみなさんへ〜 ◎現場での監視◎
子どもを預かるスポーツ指導者は、技術面の向上だけでなく、健康管理にも目を向ける必要があり、 暑いさなかスポーツをしていると熱中症の危険が常にあると思います。しかしそれでも熱中症はそのメカニズムを理解して適切な予防で確実に防ぐことが出来るのも確かででしょう。
万全にスポーツを楽しむために、指導者としては運動前・中・後の全般にわたり、子ども達の状態を注意深く観察すると同時に、万が一の場合の処置、救急車の手配なども頭に入れておくべきではないでしょうか。
子供達に水分補給の重要性を十分に理解させ、水を飲む習慣を身に付けさせる事が熱中症予防の第一歩と言えます。 言い換えると熱中症を予防するにはこまめな水分補給の実行と、そのコツを教えること”が最も重要だと思います。

こども達へ 〜 生南FCの大切な約束

@ 普段から好き嫌いをせず、3食とも、しっかりと食事を取ること
A 練習中のどが渇いたら、いつでもコーチに言うこと
B 特に暑い季節には、練習前に先ずコップ一杯くらいの水やお茶を飲んでから練習すること(出来ればスポーツ・ドリンクも用意する)
C 練習中は少しずつ、何度も水分を取ること
D 試合の前の日は必ず、はやく寝ること
E もしも、試合中や練習中に「めまい」や「頭痛」がしたり、気分が悪くなったら、必ず、すぐにコーチに言うこと
もしも試合中などに気分が悪くなったら、例えそれが君にとって、生南にとって大切な試合だったとしても、絶対に無理をしてはいけません。何よりも大切なのは君自身の健康です、すぐにコーチに言いましょう。 

 


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