コラム

社員の化学日記 −第42話 「赤い星(3倍速って内容ではありません)」−

冬のこの時期は夜空を見ることが多くなる人は少なくないはずです。 大気が澄み,きれいな星空を見上げれば,冬の大三角形やオリオン,北斗七星など,冬の星座を簡単に見つけることができます。都会の明るい街中でも微かに見えることもあったり,田舎の自宅(当方は奈良在住なものですから)へ駅からの帰り道に空を見上げると,たくさんの数の星が見えたりして,帰ってきたなーと安心したりします。 冬に星を見ていると,宇宙という大きな存在にロマンを求める,,,とまではいきませんが,寒さと上を見上げることによる首の痛さがなければずっと見ていたい景色です。

先日もふたご座流星群が見れる,とのことで,家のベランダに電気カーペットを敷き,毛布にくるまって完全(寒全?)防備状態でこの流れ星のショーを見ました。ただ,流れ星のショーといっても,5分に一度くらいしか流れませんし,一瞬のことなので瞬きもままならず,あまり気が抜けません。「あっ,見えた!」と言ってる間に終わってしまいます。また,家のベランダなので南面しか見られない状況で,その日は1時間半粘って10個しか見ることができませんでした(ほんとは1時間くらいで終わるつもりだったのですが,10個は見るぞ!という謎のやる気で30分延長しました。。。)

冬に見ることができる星の中に,ベテルギウス(Betelgeuse)という星があります。 先にも書いた,冬の大三角形とオリオン座の中の一つの星で,オリオン座を見て左上に位置する赤い星ですが,実はこの星は近々爆発するらしいのです。 ベテルギウスは地球から640光年(キロで計算すると約6054867502451712km,まさに天文学的数字!)先にあり,太陽の1000倍という,とてつもない大きさの星で,地球から見ることのできる恒星(自ら光を出す星)の中では2番目に明るい星です。 太陽の1000倍という大きさゆえ,星の輝く(核融合反応)ために必要な,水素原子やその他元素の消費が多く,太陽よりもかなり短い寿命の星です。また,この星は地球からの観測上では,最期を迎えており,いつ超新星爆発を起こすのか,いろいろな科学者たちが推測しています。一部の科学者は2012年に爆発が見られるのではないか,との憶測もあり,天体観測の今後のイベントとして注目されております。

しかし,イベントとして楽しみにしているだけではありません。爆発による地球への影響も懸念されております。宇宙では,距離に何万光年,何億光年などの超長距離の話がある中,640光年といえば私たちからするとかなりご近所の星になります。 超新星爆発ともなると,莫大な量のエネルギーが放出され,いろいろな波長で640年かけて私達に降り注ぐのです。波長にはいろいろな幅があり,赤外線,可視光線ならば害は少ないですが,例えばγ線などが人体に降り注ぐと,焼け死んでしまう恐れがあります。γ線は地球の磁力線により,ほとんど地上には届かないとのことですが,膨大なγ線をすべて防いでくれるのかはわかりません。

最近地上波で放映された「ノウイング」という映画では,爆発(この映画では太陽の超巨大フレアだったかな?)により,地球表面が全て焼かれるとラストシーンがあります。(ネタバレすみません) これがもし,ベテルギウスの爆発で起こると考えると,とても恐ろしいことです。 話は変わりますが,2012年人類滅亡説をご存知でしょうか?マヤ文明が残した謎のひとつで,2012年に一度終わりを迎える,といったものです。 1999年に騒がれた,ノストラダムスの大予言(今となっては大失言?)と同じく,予言は予言で終わればいいのですが,マヤ文明は天体観測に発達しており,星の正確な観測を行っていたという文明です。ベテルギウスの爆発と何か関係があるのでは?との憶測がとびかったりして,なかなか興味深いです。

とは言え,もし何か起こったとしても,地球から逃げることなんてできませんので,おとなしくイベントとして待っているほうが気楽です。 因みに,ベテルギウスがもし爆発したらその光は月の100倍の明るさになるそうです。昼間でも見ることができる明るさになり,太陽が2つに見えるということが起こるかもしれません。もし夜間に天体にあれば,昼のように明るくなるそうです。

怖さもあり,ショーとしての楽しみもある,このベテルギウスを見るため,皆さんも今夜,空を見上げてみてはいかがでしょうか?(但し冬季に限る)

【栗林】

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