コラム

社員の化学日記 −第39話 「無題」−

先日の新聞で面白い記事を見つけた。
「がん予防にブロッコリー脚光−抗酸化作用,ピロリ菌除菌効果も−」
という見出しの付いた小さな記事だ。

この記事によると,ブロッコリーの新芽には「スルフォラファン」という物質の前駆物質が含まれており,それを食べると加水分解酵素と反応して「スルフォラファン」に変化する。 この物質が肝臓の解毒力を高め,がん予防効果があり,抗酸化作用やピロリ菌の除菌効果も報告されているとのこと。 さらにはスルフォラファンと放射線を用いた新たながん治療法への応用も期待されているとか。

ブロッコリーという野菜は,アブラナ科の野菜で,カリフラワー,キャベツ,菜の花などと同じ仲間。 原産国はイタリアで,日本に持ち込まれたのは明治期だが,広く一般家庭で食べられるようになったのは1980年代かららしい。

確かに,小生が幼少のころ(今からウン十年前)はブロッコリーという野菜は見たことがなかった。 当時は大根,ニンジン,ゴボウなどの根菜類やホウレン草,白菜などの葉物野菜が中心で,しかも今のように年中同じ野菜が食べられるということはなかった。 家業は農家ではなかったが,その季節にできる野菜しか食べられないのは当然のことで,土にまみれた根付野菜や根菜類も今まで土に埋もれていたかのごとく,葉までついたものが売られているのが当たり前だった。 もちろん,根菜類の葉の部分も捨てることなく煮炊き物などに料理して食べていたものだった。

休日には家内の買い物の荷物持ちや孫が遊びに来た時の散歩のついでに近所のスーパーに行くことがたまにあるが,野菜売り場には年中同じ野菜が売られていることが多い。 しかも,衛生面からか土がついたものはおろか,根付の野菜はほとんど売られていない。 虫食いもなく,形状もまっすぐに揃ったものをきれいに洗って根っこを切り取って束ねてあるだけならまだいい方で,最近ではご丁寧にすぐに食べられるように切って袋詰めにされたものまで売ってある。 おまけに見たことも聞いたこともないような野菜が普通に売られている。

先日も野菜サラダ用として袋詰めして売られている野菜の中身を確認してみたら,
 デトロイト(アメリカの地名??)
 シュンギク(春菊と漢字で書け!!)
 ルッコラ(コアラの親戚か!)
 レッドパクチョイ(アジア系の人名??)
 ロラロッサ
(年寄が言ったら舌を噛みそうな名前。そういえばブロッコリーを「ぶっころり」としか言え ないおばあちゃんがテレビに出ていた。)
など,ほとんどが聞いたことのない野菜ばかり。

インターネットで調べてみたら,
「デトロイト」;
「ビーツ」(これまた聞いたことがないが,ホウレン草の仲間のサトウダイコンの変種で, 地中海沿岸が原産だそうな)の若芽。
「ルッコラ」;春の七草のスズシロ(要は大根の葉)と同じ仲間で,原産はこれも地中海沿岸。
「レッドパクチョイ」;名前の通り中国野菜。
「ロラロッサ」;葉先が赤いサニーレタスの仲間で,これまた地中海沿岸が原産とのこと。

まさに西洋野菜のオンパレード,”食に国境なし”といったところか。 最近ではスーパーで売られているだけではなく,家庭菜園用の種も普通に売られており,そのうちこれらの野菜もブロッコリーのように原産は海外であることも忘れられていくのだろう。

【Y(ペンネーム)】

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