コラム

社員の化学日記 −第201話「タビビトノキ」−

この前、暇だ暇だと騒ぐ子供たちを連れて大阪の植物園に行きました。 園内では世界中さまざまな気候で育つ植物を育てており、地域や気候でエリア分けされております。

熱帯気候のエリアは、冬時期に訪れると少し夏気分が味わえて不思議な感覚になります。 何度か訪れたことがある植物園ですが、「今までなぜ気が付かなかったのだろう」と思えるほどの、とても大きくユニークな形の木を見つけました。

それがタビビトノキ(旅人の木)です。 英名はトラベラーズパームと言い、葉っぱの感じがパーム=ヤシの木のそれに似ています。 ヤシの木に似ているのですが、タビビトノキは葉の広がり方がとても独特で、大きく扇状に広がります。 最大20mにもなるその木はまるで大きなうちわです。ジャイアントファン(=巨人のうちわ)という別名があっても不思議じゃありません(※そんな別名ありません)。

元い、タビビトキの名前の由来は諸説あるそうで、葉っぱが東西に伸びる特徴があることから方向確認や目印として使われたから、 葉っぱの根本の部分に溜まる水が旅人の水分補給に使えたから、などがあります。

この面白い木を我が家のシンボルツリーにしたい!と調べてみたのですが、この木は原産がマダガスカルで外で育てる場合は日本の寒さには耐えられないとのこと(沖縄だったら育つみたいですが)。 まぁ、育てられたとしても5階建てビルより大きく育たれては管理しきれませんし日照権でご近所さんから文句が出そうです。

このタビビトノキ、実はその種子も変わっており、まるで宝石みたいに鮮やかな青い種をつけます。きれいなこの種をインテリアとして飾る人もいるんだそう。 植物とは思えない鮮やかな色の種ですが、この青色はコバルトやアントシアニン等の成分によるものではなく、種表面にある繊維による"構造色"で青色に見えます。

構造色って言葉あまり馴染みが無いですが、クジャクや蝶の羽の色なんかと同じ発色の仕方とのこと。その他にも、チタンやビスマスに見られる虹色も酸化被膜による構造色によるものらしい。 これはなかなか奥が深そうです。もしかすると開発が進んで構造色スクリーン内臓の新しいテレビができるかもしれません。

あ、話が逸れました。とりあえずシンボルツリーにすることは諦めましたが、種子をどこかで手に入れて飾ってみたいなーと思っている今日この頃です。

【栗正(ペンネーム)】

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