コラム

社員の化学日記 −第15話 「粗大ごみ置き場には」−

小学生のころ,帰り道には大きな粗大ごみ置き場があった。学校が終われば,石蹴りや山に昇ったり,猫を追いかけたりしながら,粗大ごみ置き場の前を通って帰宅する。 そのごみ置き場は,田舎のだからかわからないが,非常にオ−プンで,産業廃棄物でも,何でも捨て放題といった感じの場所だった。そこは,小学生の僕らにとっての遊び場でもあった。

ある日,いつものように帰宅していると,そこには,よく見慣れた赤い筒状のものが捨ててあった。近寄ってみてみるとそれは消火器だった。 おそらく近くに住む人が捨てたものだろう,ところどころさび付いていた。そんなことお構いなしに僕らは,大興奮。 使用したことはそれまで1度もなかったが,安全栓を抜き,レバ−を握ることぐらいは想像がついた。 そして,実際にレバ−を握ってみる。すると,何も起こらない,ん,,,力を入れて握ってみる,,,なにも起きない。やはり,捨ててあるような古い消火器では駄目なんだと肩を落とした。

しかし,他の子がレバ−を握ると勢いよく白い粉が噴出された。そのときホース部分を手には握っていなかったため,ありとあらゆる方向へ噴出。まるで蛇がのたうちまわるようだった。

どうやら,当時の僕は握力が弱かったためきちんと握れていなかっただけのようだった。自分の非力さを思い知らされた出来事だった。

このとき,使用した消火器からは,白い粉が噴出したため重曹(炭酸水素ナトリウム)を主成分とした消火器のように思われる。 重曹の粉末に消化作用があることは,古くから知られていたようで,おがくず等を混ぜたものを消火砂の代わりにしていたようだ。

今では,厚生労働省が食品への利用を許可する原材料だけを使用し人体への影響も少なく(なめても大丈夫らしい),利便性も高まった商品も出てきているようである。 また消防法では家庭用消火器を「赤」にしないといけないとは規定が無いため,赤色にこだわらない物も出てきているようだ。

必要の無くなった消火器は,業者へ連絡。勝手に捨てれば,誰かがぶちまける。

【白色林檎(ペンネーム)】

次のコラムへ>>

<<前のコラムへ

▲このページのtopへ