コラム

社員の化学日記 −第101話 「無題」−

最近,ご近所さんのベランダに柿が吊るされています。干し柿を作っているようです。

最近はあまり食べませんが,子供のころは,ゼリーの様な食感と独特の匂いが好きでよく食べていました。

渋柿を干すと,渋みがなくなって甘くなるというのは知っていましたが,何故甘くなるのかは,よく知りませんでした。

干し柿の作り方を調べてみると,渋柿から渋みを取り除いているのではなく,渋みを感じないものへと変化させているとのことでした。

渋柿に含まれている可溶性のタンニンは,口中の粘膜のたんぱく質を変性させる収斂作用を持っているため渋みを感じますが,これを不溶性のタンニンに変化させるとたんぱく質と反応しなくなるため渋みを感じなくなります。

干し柿の場合は,次のような原理で渋抜きを行っています。

柿の果実は皮を通して呼吸をしていますが,皮をむいて乾燥させると表面に被膜ができて呼吸ができなくなり,その結果,エタノールが作られます。このエタノールが,柿に含まれている酵素により,アセトアルデヒドになります。

そして,このアセトアルデヒドが,可溶性のタンニンを不溶性のタンニンに変化させることで渋抜きが行われます。

渋抜きは,干し柿にする以外にも,ドライアイス(炭酸ガス)やアルコール(エタノール)で処理する方法もありますが,原理は,干し柿の場合と同様で,アセトアルデヒドにより,可溶性のタンニンを不溶性のタンニンに変化させています。

ドライアイス(炭酸ガス)で処理する場合は,干し柿の場合の様に呼吸ができなくなるため,エタノールが作られ,これが柿に含まれている酵素により,渋抜きに必要なアセトアルデヒドになります。

アルコール(エタノール)で処理する場合は,アルコール(エタノール)が柿に含まれている酵素により,渋抜きに必要なアセトアルデヒドになります。

干し柿には,血圧を下げる,便秘解消などの効能があり,体に良いものなので,また食べてみようかと思いますが,カロリーが高いので食べ過ぎには注意しないといけませんね。

【三津和次郎(ペンネーム)】

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