コラム

試薬って何?

1)「試薬」の定義

「試薬」とはひと言でいうと実験室において実験、研究に用いる化学薬品を意味します。化学物質を規制する法律である「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律」(化審法)やJIS規格(JIS K 0211 -分析化学用語(基礎部門)-)では「化学的方法による物質の検出もしくは定量、物質の合成の実験または物質の物理的測定のために使用される化学物質をいう。」と定義され、保健衛生、治療などに用いられる「医薬品」とは区別されています。

またこれらは品質や使用量などの観点から、一般の工業薬品と比較してより正確な純度表示、一般の工業薬品とは異なる生産供給形態が要求されます。ただし、医療関係の検査部門などで用いられる臨床検査薬は、品質や生産形態を考慮すると「試薬」に含まれることになりますが、行政は「体外診断用医薬品」として他の試験用薬品とは区別しています。

試薬は以下のような特徴を有しています。

  • 生産形態:工業薬品に比べて多品種のものが要求され、かつ1ロットあたりの量は非常に少ない。(少量多品種型)
  • 品質表示:高度な品質管理が求められ、純度などの事項がラベルに表示される。(試薬の使用目的に応じた含有不純物の管理)
  • 包装単位:500g、25g、1gと小さい。(工業薬品の包装単位は数十kgが普通)

2)「試薬」の語源

日本で一番最初に「試薬」という言葉が使われたのは、幕末に出版された日本初の化学書の「舎密開宗」(「せいみかいそう」と読みます)全21巻(1840年)です。著者は宇田川榕菴 (1798-1846)という幕末の蘭学者で、イギリスの化学者William Henryが記した"Elements of Experimental Chemistry"という化学書のオランダ語訳本を和訳したものであり、「元素」という言葉を最初に使ったのも榕菴とのことです。

当時の日本では化学や物理学という学問は独立した学問ではなく、治療に必要な医薬品を合成するという医術への応用を目的とした補助的な学問でしかありませんでした。榕菴も医術への応用を目的としてこの本を翻訳したのだそうですが、熱海の温泉水を化学分析するなど実験化学者でもあったようです。

3)おまけ:「舎密」って何?

宇田川榕菴が書いた「舎密開宗」の「舎密」とは何の意味でしょうか?実はこの当時まだ「化学」という言葉はまだ用いられず、代わりに「舎密(学)」という言い方がされていました。つまり「舎密」とは「化学」を意味します。この言葉はオランダ語で化学(Chemistry、ケミストリー)を意味する"Chemie"(シェミィ)を「舎密」(せいみ)と音訳したものです。

では、「化学」という言葉を最初に用いたのは誰かというと、同じく幕末の蘭学者である川本幸民(1810-1871)です。幸民は代々三田藩(今の兵庫県三田)医を勤めた漢方医の家に生まれ、20才のときに藩主九鬼隆国の命で藩費で江戸に遊学し、蘭法医学を学びました。それが契機となり、医者として開業の傍ら物理化学の研究を続け、日本で始めてマッチや銀板写真、ビールを試作、試醸したのでした。

そして晩年、ドイツ人化学者のストックハルトの化学書を翻訳して書名を「化学書」(1860年)とし、翌1861年に第3版を補足翻訳して書名を「化学新書」としました。宇田川榕菴が「舎密開宗」を出版してから約20年後、日本で「化学」という言葉が使われるようになったのです。

(ちなみに幕末に設置された日本初の公立の理化学の学校を「舎密局」(せいみきょく)といいました。1869年大阪(現在の大阪市中央区大手前)に開設され、当時最先端の化学の講義や化学実験を行い、明治になって京都へ移り、旧制第三高等学校、京都大学へと発展していきました。大阪市西区にある大阪市立科学館には当時の教科書や資料が展示してありますので、興味がおありの方はそちらへどうぞ。)

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