@ ロートホルンヒュッテ (Rothornhutte) 1泊


ロートホルンヒュッテ(Rothornhutte)はツェナールロートホルン(Zinalrotohorn 4221m)やオバー・ガーベルホルン(Ober Gabelhorn 4063m)などを登るクライマーが主に利用する山小屋で、ハイキングのために泊まる人は多くない。予定では次の日の行動を考えて、ロートホルンヒュッテに登った後はトリフト(Trift)に戻りそこで泊まる予定だった。しかし当日トリフトヒュッテが満員で予約ができず、やむなくロートホルンヒュッテに泊まる事にした。
予定外のロートホルンヒュッテの1泊だったが、展望は良いし、食事も良かったし、長い登りだったのでロートホルンで泊まってちょうど良かったのかもしれない。
ロートホルンヒュッテに着いて、
テラスで足を投げ出し、ビールを飲む

は、左からモンテローザ(4634m)、リスカム(4527m)
ブライトホルン(4165m)、クライン・マッターホルン(3883m)
参考地図:
No2515 Zermatt, Gornergrat 1/25,000
 


 歩いた日;2010年7月10日
 コース;Zermattー(50min)Wedelweiss Hutte(10min休み)ー(1h15min)Trifthutte(15min休み)−(20min)Mettelhorn分岐ー(40min)小川(昼食30min)ー(40min)モレーンの上(15min休み)ー(1h15min)Rothornhutte
合計時間: 5h05min (総合計時間:6h10min)  標高差:登り 1,578m  最高標高:3,198m 



登山口は、ツェルマットのメイン通りの中ほどの路地にあり、トリフト(Trift)の標識が立っている。ホテルからそのまま歩き出すのは、山小屋を出て歩き出すのと似て気分が良い。
エーデルワイスヒュッテを過ぎた所、右上の山はゴルナグラート
8時少し過ぎにメイン通り近くのホテルを出て、家並みを過ぎると直ぐトリフト谷沿いのジグザグの急な登りになる。所々に小さな滝があるが渓谷美というほどのものではない。一汗かいて、ツェルマットの町から崖上に見えるエーデルワイスヒュッテ(Wedelweiss Hutte)の横を通る。





トリフト谷沿いの登りが続く 


エーデルワイスヒュッテを過ぎると登りは緩やかになる。後ろを振り返ると、通過したエーデルワイスヒュッテが右の傾斜地にぽつんと建ち、登り始めたツェルマット町が谷合に見えて、登ってきたのが実感できる。しかしまだ先は遠い。



トリフトホテルと、見え出したヴェレンクッペの山と氷河


右手上にピンク色のトリフト小屋が見え出す。大きくHotel Triftと壁面に書かれていてホテルとなっているが、紛れもなくヒュッテ。上方にヴェレンクッペ(Wellenkuppe 3903m)の山とトリフト氷河(Trift Gletscher)が見え出す。今晩ここに戻って2泊する予定だったが、予約が取れなかったのでトリフト小屋泊りは明日の晩のみの1泊となった。テラスでジュースを飲んで出発。





トリフト小屋を出ると直ぐホーバルメン(Hohbalmen)の分岐を過ぎる。小川が流れる穏やかな牧草地になって、上方にはヴェレンクッペの山とツェナールロートホルンの前峰(3788m)が聳え、ガーベルホルン氷河(Gabelhorn Gletscher)とトリフト氷河(Trift Gletscher)が広がって見え出す。振り返るとモンテローザやリスカムの4000m峰がトリフト谷越しに姿を現わしている。
右手の山裾に来るとメッテルホルン(Mettelhorn 3460m)とロートホルンヒュッテ(Rothornhutte)を示す標識が立っていて、ロートホルンヒュッテまで2時間半とある。直進してロートホルンヒュッテを目指す。

トリフト小屋の上部
山は左にヴェレンクッペ、右にツェナールロートホルンの前峰
メッテルホルン分岐
山は左にモンテローザ、中央にリスカム



穏やかな草地から次第にガレ石が多くなり登りもやや急になる。これを登ると突然平地になり、さらさらと幾筋にも分かれて流れる小川が現れる。そこはモレーンで囲まれたカール状態で、ちょっとしたオアシス気分。昼食時間なので小川で手と顔を洗ってパンとオレンジを食べる。
小川の上には、ガーベルホルンからウンター・ガーベルホルンへ続く尾根と、氷河の末端が目前に迫ってくる。
ロートホルンヒュッテへの登りは何処かと右手を見上げると、モレーン(下の写真の右端)の上にトレイルが見えた。

オアシスのような小川の上のガーベルホルンの山々とその氷河
山は左からウンターガーベルホルン(3391m)、中央ミッターガーベルホルン(4063m)、頭だけ出しているオーバーガーベルホルン(3685m)、右端はヴェレンクッペ(3903m)


川下を見る
中央:リスカム、右:ブライトホル


川下を見ればキラキラと輝く小川の流れ越しに4000m峰が並ぶ。
ゆっくりと休んで出発。


モレーンを登って振り返る


小川を飛び石伝いに越えてモレーンに取り付く。円弧を描いたような綺麗なモレーンでその上を歩く。次第に登る傾斜がきつくなるとともに左右に流れ落ちている砂礫の角度もきつくなり、滑り落ちないように慎重に歩く。
モレーン上の歩きから右に出て小さな川を渡ると絶好の休憩場所。振り返ると登ってきたモレーンの先に幾筋にも分かれた小川が池のように見え、その先がトリフト谷に落ち込んでいく。
谷を挟んだ山裾には、へメッテルホルンへ登るジグザグのトレイルが左に見え、斜めに登るホーバルメンへのトレイルが右に見える。正面にはモンテローザが聳えその下にゴルナグラートへの登山鉄道の線路までもが見える。



南方向にマッターホルンが見え出す
山は左からウンターガーベルホルン、中央マッターホルン、
氷河は、左上ガーベルホルン氷河、右から左に流れているのがトリフト氷河



小さな川を渡ってからはモレーンから離れ、ジグザグの急な登りが続く。見上げても何処にロートホルンヒュッテがあるのか分からない。フッと左を見ると、オー、マッターホルンが顔を出しているではないか。ヌーッと立ち上がった姿はちょっと異様に見える。
ウンターガーベルホルンに押し寄せ覆い被さる氷河が凄い。


東の方向には数日前に歩いたオーバーロートホルンが見え、その奥にミシャベル山群の4000m峰が並び、その右に大きく広がったフィンデルン氷河が見える。


北東方向にはメッテルホルンとその右にプラットホルンが見える。ここから見るメッテルホルンは鋭角に尖った茶色の山で直ぐそれと分かる。できれば明日登りたいが、無理ならとなりのプラットホルンには是非登りたい。



奥の山は、左からリムプフィッシュホルン(4199m)、
シュトラールホルン(4190m)、アドラーホルン(3988m)、
その右はフィンデルン氷河
奥の山は、左がテッシホルン(4491m)、右がアルプフーベル(4206m) 
手前の山は、左がオーバーロートホルン(3415m)、
右がウンターロートホルン(3103m)

東方向
中央茶色の山がメッテルホルン(3406m)、
その右がプラットホルン(3345m)
北東方向




なおもジグザグに急な登りが続く。上を見るとようやくロートホルンヒュッテが見えた。張り出した赤い岩の下にあるが背景の岩に溶け込んでいて良く見ないと分からない。もっと下から見えていたのかもしれない。

赤い岩の下にロートホルンヒュッテが見えた
(写真では良く分からない)

左のピークはトリフトホルン(3728m)
小屋の拡大
(小屋の色が背景と同じような色で分かりにくい)




目の前には荒々しく重なり合うトリフト氷河の流れが見え、マッターホルンの頭も大きさを増し、ウンター・ロートホルンも同じような高さになって見え出す。もう標高は3000mを越えていている。

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トリフト氷河(手前)越しの景色





ロートホルンヒュッテ直前で一息入れて、午後2時20分にようやく小屋に到着。標高差1600m近くを登ったことになる。小屋は立派で清潔。テラスでビールを飲みながら展望を楽しむ。残念ながらミシャベル山群からモンテローザ辺りまで雲がかかりだしたが、ブライトホルンから右の方は良く見える。マッターホルンの頭も曇り空の中に辛うじて見える。眼下には登ってきたモレーンやトリフト谷があり、トリフト小屋もはっきり確認できる。

ロートホルンヒュッテ裏からマッターホルンを見る ロートホルンヒュッテから、トリフト小屋も見える




小屋の西側のガレ石伝いに少し登ってみた。荒々しく見えていたトリフト氷河が滑らかな雪原のように広がり、その奥にはツェナールロートホルンから伸びるポワント・デュ・ムンテ(Point du Mountet 3877m)とトリフトホルン(Trifthorn 3728m)、それにオーバーガーベルホルンの手前に聳えるヴェレンクッペ(Wellenkuppe 3903m)の山が氷河を囲むように連なる。

                             オーバーロートホルンから西側に少し登って
山は左から、ヴェレンクッペ(3903m)、中央トリフトホルン(3728m)、右ポワント・デュ・ムンチ(3903m)
氷河はトリフト氷河



左に目を転じると、トリフト氷河が急角度で落ち込んでいて、対岸にはウンター・ガーベルホルンが氷河に飲み込まれるような姿で立っている。オーバー・ガーベルホルンやツェナールロートホルンの4000m峰は陰になって見えないが、迫力ある景色を堪能できた。

                          オーバーロートホルンから西側に少し登って    
左遠くの山はブライトホルン(4165m)、その右はクライン・マッターホルン(3883m)。手前左はウンターロートホルン(3391m)、
頭を出しているのがマッターホルン(4478m)
手前氷河はトリフト氷河

ウンターガーベルホルンの氷河


午後4時頃から雷雨、ヒョウも混じっていたようで周囲が白くなる。早く小屋に着いていて良かった。
夕食はスープに生野菜にベークドポテトに牛のブロック。うまい。同席した内の2人はスイス人でオーバーガーベルホルンに明日登るそうだ。その内の1人は5ヶ国語を話すとのこと。こういう人に珍しくも無く会うので何時も驚く。30人程の宿泊者の大部分は明日オーバー・ガーベルホルンかツェナールロートホルンに登るようで、クライミング無しで下りるのは完全に少数派。ヨーロッパのクライマーの層の厚さを感じる。
食事を終えて外に出ると既に雨が止み晴れ、夕方ながらまだ明るく東に並ぶ4000m峰が一望できた。明日はメッテルホルンかプラットホルンに登るつもりなので早々にベッドに入る。

左からテッシホルン、アルプフーベル、
アラリンホルン
手前左はメッテルホルン、右プラットホルン
左から、リムプフィッシュホルン、
シュトラールホルン、アドラーホルン
 
モンテローザ(左)とリスカム(右
        雨が止んだ夕方7時半、ロートホルンヒュッテから見るミシャベル山群とモンテローザ




プラットホルン→