1日目
マンガテポポ駐車場からマンガテポポ・ハット
(Mangatepopo Car Park to Mangatepopo Hut)

2日目
マンガテポポ・ハットからワイホホヌ・ハット
(Managatepopo Hut to Waihohonu Hut)


出発の前々日
オークランド(Auckland)からバスで昼過ぎにタウポ(Taupo)に着き、直ぐにビジター・センター(i-SITE)に行って、トンガリロの天気予報を尋ねた。明日は雨または曇り、明後日は曇り時々雨となっていて、どちらも同じような天気。雨ばかり連続して歩くのもかなわないので、出発を1日遅らせ明後日からトンガリロ・ノーザン・サーキットを歩くことにした。2泊分のグレート・ウォーク・パス(1泊1人$25)を発行してもらい、行き返りのシャトル・バスの予約もした。
グレート・ウォーク・パスは、使用する山小屋は自由だが、使用日と使用者の名前が記載される。


1日目  ちょっと歩いただけ 

Mangatepopo Road Car Park-(25min)Mangatepopo Hut
Total:25min、小屋に停滞、泊
標高差:50m
最高標高:1200m

1日出発をずらしたが朝起きると雨、朝6時にタウポのモーテルを出発。シャトルバスの客は我々2人のみ。タウポ湖の湖岸の道を走り、高原らしい林の中を走るが風も雨もどんどん強くなり、何処を走っているのかさっぱり分からない。その内道路脇にDOCの緑色の標識が時々目に入るようになり、トンガリロ国立公園に入ったことを知る。

1時間20分程走って着いた所がワカパパ・ビレッジ(Whakapapa village)、「ここではなくマンガテポポ(Mangatepopo)の登山口だ」と言うと、「行き先はワカパパ・ビレッジと聞いてきた。 風が強く、トンガリロのレッド・クレータを越えるのは危険だ。他のシャトル・バスも今日はマンガテポポには行っていない」と言う。どうやら、行き先に食い違いがあったので走ってくれたが、マンガテポポの登山口だったら今日は走らなかったということのようだ。
ワカパパ・ビレッジで下されたのでは後の予定が立たないので、「とにかくマンガテポポに行ってくれ、歩けなければマンガテポポ・ハットに泊まる」と言うと、「悪天候での経験はあるのか?」と心配顔で聞いてくる。アジア人の老夫婦がたどたどしい英語でしゃべるのだから心配するのも無理はないが、自己主張をしないとどうにもならないので、「沢山の国の山を歩いてきた」とか、「無茶な歩きはしないので心配しないでくれ」、などと説明して、ようやくマンガテポポの駐車場(登山口)まで送ってくれた。

着いたのは8時前。風雨とも強く周りの景色は何も見えない。駐車場は草原のような所に屋根だけの休憩所があるだけ。誰もいないし車も止まっていない。1日ハイクのトンガリロ・クロッシングには何百人も歩くと聞いていたので、シャトルバスが運行していないのは事実だったようだ。
運転手が「明日も荒天ならワカパパ・ビレッジ迄戻った方が良い。何かあったら電話をするように、名前はGusだ」と言って我々2人の写真を自分のカメラで撮ってくれた。後で写真をくれた訳でもないので、事故でもあった時の写真だったのかなー、などと思ってしまう。2日後のワイパパ・ビレッジのピックアップを再確認して別れた。
(日本に帰ってからこのシャトル・バスの会社のHPを見ていたら、コンタクト先の名前はGusとなっていた。単なる運転手ではなかったようだ)

マンガテポポ・ロード・駐車場(登山口)


とりあえずマンガテポポ・ハットまで歩いて様子を見ることにし、駐車場の休憩所で雨具に身を固め出発。草の葉や小さなブッシュが風と雨で一方向になぎ倒されたようにゆれている。
緩い坂を少し登ると右にワカパパ・ビレッジ、左にトンガリロのメイントラックに出る。左に曲って進んで直ぐにマンガテポポ・ハットの分岐を左に入る。緩やかなコブを1つ越えるとハットが見えた。

ハットの入り口に立つと、レンジャーの若い女性が何処に行く予定か聞いてきたので説明すると、「ケテタイ・ハット(Ketetahi Hut)に行くのは今日は難しい」とのこと。「様子を見て駄目な場合はここに泊まる。グレート・ウォーク・パスを持っている」と伝えると、「小屋の中に今朝の天気予報が張ってあるので見るように」と言ってくれた。



天気予報は雨、夕方曇り、標高1600mで風速70km/hとある。午後には歩けるかなーと思って天気予報を眺めていると、単独行の男性が近づいてきて、「昨日も行ってみたが、風が強くて危険なので引き返して来た。今日も駄目。この風が治まらないと無理だ。明日の予報は40km/hなので多分大丈夫」とのこと。4人のグループがいて、「昨日は強風で歩けず泊まった。今日も駄目で、もう帰らねばならずこれからワイパパ・ビレッジに歩いて引き上げる」と言って小屋を出て行った。皆苦労している。

ダイニングキッチンを挟んで左右にベッド・ルームがある。ベッド数は23。

仕方がない、とりあえず小屋に停滞と決め、ベッドに横になる。さーどうするか。今日歩けなかったら、クロッシングだけしてケテタイ・ロード駐車場から帰る方法があるが、車の手配ができない。エメラルド・レイク(Emerald Lake)からワイホホヌ・ハット(Whaihohonu Hut)まで一気に行けるか時間を調べるてみると標準時間で約8時間〜8時間半とある。これなら遅い足でもワイホホヌ・ハットまで歩けるし、次の日にワカパパ・ビレッジに着ける。明日歩けたら何とかなりそうだ。


ゴロゴロしながら昼過ぎになる。雨は小止みになったが風は治まらない。
今日の行動はもう駄目と諦めて昼のパンを食べる。ガスコンロは日本のリンナイ製で、しかも焼き網のグリル付で完全な日本仕様(他のトンガリロのハットも同じだった)。スライスしたぶどう入り食パンを持っていたので、トースター代わりにグリルを使ってみたら、うまく焼けた。

一時的な晴れ、マンガテポポ・ハットとナウルホエ山


午後になり、3組ほどがワイパパ・ビレッジからやってきた。その内の単独行の小父さんは一昨日と昨日でノーザン・サーキットを一周したが、天気が悪くナウルホエ山に登れなかったので、もう一度行って登るとのことだった。
山は思うようにならないものだ。

午後3時、夕方明るくなったので外に出ると晴れている。相変わらず風は強い。
ここは広い谷で、ナウルホエ山(Mt Nhauruhoe)が聳えて見える。富士山の小型版だ。

「マウント・フジに登ったことはあるか」とここでも聞かれた。日本人としては、やはり、富士山に登っておかないとまずいのかなーと最近思うようになっている。


夕方、雲が広がり青空がまた見えなくなった。




2日目:  一気にワイホホヌ・ハットへ  サウス・クレーターからレッドクレーターまでは濃いガスの中

Mangatepopo Hut-(1h40min)South Crater-(45min)Mt Tongarilo分岐 -(10min)Red Crater Peak-(20min)Ketetahi Hut分岐-(1h 50min)Oturere Hut(Lunch time 40min)-(2h)森に入るー(1h)Waihohonu Hut
Total:7h45min(休憩を含んで8h35min)
標高差:(登り)686m (下り)756m   
最高標高:1886m

溶岩の中の登り


朝起きると、風は大分弱くなったが、裾野から上が雲の中。ナウルホエ山に登るといっていた小父さんは7時前には出発して行った。我々も7時20分に出発する。小屋から直ぐメインの広いトラックに出てなだらかな登りを歩く。マンガテポポ谷(Mangatepopo Valley)と言うらしいが雲っていて山が見えないので広い荒野に思える。
今日はマンガテポポ・ロード・駐車場から出発したと思われる登山者が前にも後にも見える。

40分ほどして、右手前にポツンと小さな小屋が見え出す。近づくとトイレの表示がある。駐車場と山小屋以外にトイレがあるのはここだけだ。何故ここにトイレを作ったのかなーと思いながら歩いたせいか、ソーダ・スプリング(Soda Springs)の表示を見ていない。左に小さな滝が見えたが、それがソーダ・スプリングかもしれない。

トイレを過ぎた辺りから草が無くなり、溶岩だらけになる。60年ほど前にナウルホエ山から流れ出たもので、まだ新しい溶岩らしい。次第に急な登りになるが所々に階段が作られていて歩き易い。


歩いてきたマンガテポポ谷を振り返る


登るにつれて景色が良くなるかなーと思っていると、ガスが濃くなってきた。振り返るとぼんやりとマンガテポポ谷が見える。更に登ると完全にガスの中、何も見えなくなった。風もある。所々にある目印のポールと足元のトレイルを見て登る。

Mieが「時々足が暖かくなる」という。そんなことは無いだろうと思っていたら、確かに感じた。横風がきつくても感じるほどの地熱があるようだ。





登りが緩くなったと思ったら急に平になり、横風が強い。人があちこちの岩陰に身を潜めている。ガスで影絵のようだ。サウス・クレーター(South Crater)の表示があり、ナウルホエ山の登り口の表示もある。風が強いので休まずに歩き続けた。

直ぐ前を歩く人がぼんやり見える以外に濃いガスで他には何も見えない。地面は平で砂地なのは分かる。まるで海岸を歩いているような感覚。道を外れたら何処に行くか分からなくなりそうなので、目印のポールを確認しながら進む。幸い道は真っ直ぐのようだ。

途中トンガリロ山(Mt Tongariro)に登る分岐の標識を左に見た。

レッド・クレーターの下り


突然前の地面が見えなくなった。前が切れていて崖になっているようなので足を止めた。トラックはほぼ直角に左に曲がっている。
曲がると急な登りになり同時に強烈な風が真横から吹き上げてきた。尾根の上を歩く感じだが、ここがレッド・クレーター(Red Crater)の外周のようだ。

今日でさえこれほどの強い風では、昨日も一昨日も強風で歩けなかったことが頷ける。

風に逆らいながら登りきると、今度は急な砂の下り坂でズルズルと滑るようにして下りる。硫黄の臭いもする。下り続けると風も弱まり少しガスが薄くなった感じなので、久しぶりにカメラを取り出し、後から歩いて来る人達を写した。



(4年ほど前にトンガリロとよく似た北海道の雌阿寒岳と阿寒富士を登ったことがある。この時も濃いガスの中で何にも見えず、火口のゴーという音と噴気ガスとその臭いと阿寒富士の下りの砂走りだけが記憶にある。どうやら火山の景色には縁がないようだ)

うっすらと見え出したエメラルド・レイク 辛うじて形が分かったエメラルド・レイク

なおもザラザラと滑り下りながら進むと、何やらボーっと下に青い色が広がった。よく見ると湖だ。えー、もうエメラルド・レイク(Emerald Lake)に着いたの、という感じ。
核心部分の景色が何も見えず霧の中を必死でくぐり抜けてきたので、早く着いた感じがしたようだ。
近づくと、湖の全体がようやく見えた。湖の岸に下りてみたが、ボヤーっとした景色でぱっとしない。暫く待ったがガスが次々と吹き込んでくるので、諦めて歩く。

もう1つのエメラルド・レイクの横を通る


平坦になって直ぐケテタイ・ハットとオツレレ・ハット(Oturere Hut)の分岐に出る。時計は未だ10時半、この先のブルー・レイク(Blue Lake)まで足を伸ばしてみたかったが、今日はワイホホヌ・ハット迄歩かねばならないので先を急ぐ。

右に曲がったとたんに前後に歩く人は誰もいなくなった。

エメラルド・レイクにまた近づいて湖の岸を歩く。さっき見た湖とはどうも違うようなので地図を見る。湖は3つ有って、これはどうやら北側にあるもう1つの湖らしい。



手前の噴気ガスと雲に隠れたナウルホエ山 溶岩の尾根を下る
湖を過ぎると突然目の前からガスが無くなり青空が見え出した。風も殆ど無い。目の前に噴煙というのか噴気というのか煙が立ち上がっていて一帯が黄色い。回り一面が溶岩の流れた跡で遥か先まで続いている。殆ど植物が無い茶色の世界が広がる。この溶岩はレッド・クレーターから流れ出たそうだ。

振り返る   真ん中の盛り上がりは溶岩流だろうか、この上を下りてきた

急な下りを下りてきて振り返る。尾根筋の上を下りてきたと思ったが、溶岩流が固まった跡の上を下りてきたようだ。

先ほど歩いてきたエメラルド・レイク辺りは晴れているようで、あと1時間程遅かったらもう少しは景色が見られたのかもしれない。





溶岩のまっただ中


次第に下りが緩くなり、見渡す限り無数のブツブツの岩が転がり溶岩の荒野の中にスッポリと入り込んだ感じだ。

東から次第に南東方向に向きを変えて歩く。



ナウルホエ山 溶岩の向うにルアペフ山が綺麗に見え出す

右横に雪渓の残ったナウルホエ山の姿が見え出した。山の裏側(北側)の歩いてきたは辺りは未だ厚い雲の中で、北側と南側では全然天気が違うようだ。南の方向には、溶岩越しにはっきりとルアペフ山が真っ白な姿を現した。綺麗な山だ。頂上には大きな噴火口があり、今でも活動中らしい。


溶岩がにょきにょきと立っている     東から見るナウルホエ山

溶岩は相変わらず続くが、ほぼ平坦になり、所々に紅葉したような草がへばりつくように生え、砂の中に溶岩が林立していたりと結構変化があって面白い。

オツレレ・ハット


大分草が多くなったかなーと思う頃、オツレレ・ハットに着いた。小さいが綺麗に使われている。
ベッド数は26あるそうだ。

丁度昼時だが誰もいない。中に入らせてもらう。ここにもリンナイのガスコンロがあり、グリルでパンを焼かせてもらう。ゆっくり休憩して出発。



オツレレ・ハットを出て直ぐはナウルホエ山の方向に向かう


ハット横の標識の矢印に従いナウルホエ山の方向に向かう。
ナウルホエ山が大分見えるようになったが、頂上部分は相変わらず雲の中。




砂地の平原をルアペフ山に向かって歩く ルアペフ山の拡大

少し歩くと、方向を西から南に変え、丁度ルアペフ山に向かって歩く。アップダウンがないので気持ちの良い歩きだが、景色に変化がなく、だだっ広いだけで休憩するような落ちつた場所もないので、ただひたすら歩く。

まるで砂丘 ポールを頼りに歩く 


次第に砂地が多くなり、最後には砂丘のような風紋が残る平地になる。踏み跡が消えポールだけを頼りに歩く。

南から東に向きを変えて歩くようになり遠くにバスが走るのが見える。国道1号線だ。このまま歩けば1号線に出てしまうのではと心配になるほどどんどん東に向かって歩いた頃にブナの林の中に入る。トンガリロを歩いて始めての林だ。

林の中で小川を渡ると登りになる。久しぶりの登りできつい。登りきると林が切れて一旦景色が良くなるが再び林に入ってダラダラと下ると突然小屋の前に出た。

ようやく今日の終着点ワイホホヌ・ハットに着いた。午後4時で思ったより早く着いた。



オツレレ・ハットの入り口から見るルアペフ山 ハット裏から見るルアペフ山


小屋にはベッドが29あるそうだ。まだ誰もいない。小屋はルアペフ山を向いて建てられていて眺めが良い。
小屋の後ろは小山で、ちょっと上がるだけで更に見晴らしがグンと良くなる。

濡れた訳ではないが、靴下や靴やシャツを小屋のベランダで天日干しする。


1時間半ほどして若いカップルが到着した。マンガテポポ・ロード駐車場から直接来たそうだが、レッド・クレーターもエメラルド・レイクもガスが切れて見えたそうだ。
遅かった方が良かったようだが致し方ない。目的の小屋まで来た事で良しとしなければと自分に言い聞かせる。


この若いカップルはコッフェルや食器を持ってこなかったので貸してあげた。小屋に炊事道具が有ると思っていたようだ。思い込みは失敗のもと、他山の石です。 

この夜泊まったのは我々と若いカップルの4人のみ。静かな夜を過した。



3日目 Waihohonu Hut to Whakapapa Villageに進む