2.モンフォール小屋からプラフルーリ小屋 (Cab du Mnt Fort to Cab de Prafleuri) |
参考地図は「Bモンフォール小屋からプラフルーリ小屋経由アローラ」のぺージにあります
このコースは、前半はモンブラン山群とグラン・コンバン山群を眺め、中ほどでは直ぐ近くに氷河を眺めながら氷河湖を迂回し、後半には氷河から流れるいくつかの小川を渡るなどメリハリの利いたトレイルです。 |
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峠が3つあるこの区間はオート・ルートの中でも最もタフなコースの1つ、と、どのガイドブックにも書いてあるせいか、モン・フォール小屋に泊まった沢山のパーティーも6時か6時半の朝食をとって朝早く出発した。 実際に歩いた感じとしては、アップダウンはあるものの標高差がさほどでもないこと、また、ゆっくり歩いても歩ける距離なので、思っていたほどの困難さはなかった。 ただ、ガスや積雪のあった時のグラン・デゼール近辺の歩きはトレイルを見失う恐れがありそうなので注意が必要だと思う。 また、ショートカットできるシュー峠(Col de la Chaux 2940)越えがあるが、青・白マークのトレイルなので時間短縮にはならないと思う。 |
グラン・デゼール氷河 中央:ロザブランシュ(3336m) 左:モン・カルム(3220m) 右:3141mのピーク |
歩いた日;2010年7月20日
コース;Cab du Mont Fortー(45min)2499mポイント(5min休み)ー(1h10min)Col Termin(10min休み)−(20min)Fionay分岐ー(35min)2715mポイント(5min休み)ー(30min)Col
de la Chaux分岐ー(45min)Pass手前(5min休憩)ー(10min) Col de Louvie(5min休み)−(35min)Lake末端(20min昼食)−(20min)Siviex分岐ー(35min)Pass手前(5min休み)−(50)Col
de Prafleuri(5min休み)ー(55min)Cab de Prafleuri
合計時間:7h30min (総合計時間:8h30min) 標高差: 登り合計852m 下り合計591m
最高標高:2,987m
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モンフォール小屋を振り返る |
今日は長丁場になるのと、とにかく次の小屋に着けば良いのとで、ゆっくり歩くことを心がけようと朝食を6時に頼み6時半の早い時間に出発した。
半円を描くように谷向かいの斜面に向かって歩く。朝日が当たらずちょっと寒いが風もなく快適。
谷の反対側に来てモンフォール小屋を見る。小屋の背後は3000mの山で結構すごい所に建っている。小屋の周りを縦横に走るトラック道はちょっと戴けないが、今いるこの辺りは既に登山道のみで、周囲は自然そのままだ。
草地の斜面をトラバースする緩い上りの登山道を進むと、ベック・デ・ロス(Bec
des Rosses 3223m)から西に伸びる尾根を回り込む。ここは地図の2499mの辺りで、西南に朝日の中のモンブラン山群がパノラマとなって並び、南にはこれから向かうテルマン峠のシルエットの横にグラン・コンバン山群が輝いて見える。
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朝日の中のモンブラン山群 | 朝日に輝くグラン・コンバン山群とシルエットのテルマン峠(左) |
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アイベックス |
朝日の中の美しい山群を眺め、シルエットになっているテルマン峠(Col Termin
2648m)を正面に見て進む。
左上で何か気配がするので見上げると、直ぐ近くの斜面にアイベックスが草を食んでいる。近くでカメラをかまえているのに、全く気にするそぶりもない。胴体しか写っていないがもう一頭がその左上にもいる。つがいだろうか、野生の動物を見ると何時も嬉しくなる。
一番目の峠のテルマン峠(Col Termin 2648m)はベック・デ・ロスから南に張り出した尾根にあり標識が立っている。ここはルヴィー湖(Lac
de Louvie 2213m)やフィオネ(Fionnay 1491m)に下る分岐にもなっている。
モンブラン山群とグラン・コンバン山群の展望は相変わらず抜群。右下にはバニュの谷(Val
de Bagnes)の町が見下ろせる。多分、谷の右奥の斜面下の町が昨日ゴンドラに乗ったル・シャブル(Le
Chable 821m)の町だと思う。
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テルマン峠(2648m)、左上はプチ・コンバン | 下に広がるバニュの谷 (左下方向ががモーヴワザン、右上がマルティニに繋がる) |
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峠を過ぎて少しの間の急斜面のトラバース道 |
テルマン峠までは南を向いて歩いていたが、峠を過ぎると尾根を廻りこんで急角度に北東に向きを変える。峠を越えた少しの間は急斜面をトラバースする細い道になっているので注意しながら歩く。
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谷を見下ろすと、モン・フォールの頂上からも見えたルヴィー湖が近い。湖の右側の高台にルヴィー小屋(Cab
de Louvie 2240m)もはっきり見える。この湖の右下がバニュの谷のフィオネ村になる。 バニュの谷の奥にはモーヴワザンのダム湖(Lac de Mauvoisin 1975m)が朝霧の中に薄っすらと見える。 |
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ルヴィー湖と、バニュの谷奥のモーヴワザンダム湖 | ルヴィー小屋 |
テルマン峠と峠の名がついているが下るのは標高差で数十メートルだけで、しばらくは殆んどフラットなトラバース道が続く。正面に2番目の峠のルヴィー峠(Col
de Louvie 2921m)が見え出し、途中ルヴィー湖への分岐を過ぎる。
振り返ると越えて来たテルマン峠の様子が良く分かる。
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ルヴィー峠(2921m)が見え出す 左はモン・フォール(3328m) 中央はプチ・モン・フォール(3135m |
振り返って見るテルマン峠(中央) |
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テルマン峠の左にはグラン・コンバン山群が相変わらず迫力ある姿を見せていて、進むに連れて、その下にはルヴィー湖が横たわるようになり、バランスの取れた美しい構成になる。もう何度も見ているグランコンバンだが更に美しさが増したように見える。 |
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ルヴィー湖と グラン・コンバン山群 | グラン・コンバン山群の拡大 |
穏やかな登りから次第に急な登りに変わる辺りでショートカットのショー峠(Col
de la Chaux 2940)越えの分岐に出る。左手の斜面の上の方から人の声が賑やかに聞こえていたが、後で考えるとこの分岐を少し上るとプチ・モン・フォール湖(Lac
du Pt Mont Fort 2764m)という池があるので、その畔で休んでいた人達がいたようだ。綺麗な所なのかも知れない。
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分岐を過ぎると大きな石がゴロゴロと重なった荒地になり、次いで急な登りになる。左手を見上げると、直ぐそこにモン・フォールの山がありゴンドラ駅の建屋も見えるのでビックリする。 |
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モン・フォール(3328m) | モン・フォール頂上のゴンドラ駅舎 |
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ルヴィー峠(2921m)手前から グランコンバン山群(左)とモンブラン(右) |
プチ・モン・フォールの稜線上にあるルヴィー峠へ向かって直登気味に登ると峠前の穏やかな勾配になる。振り返ると左にグラン・コンバン山群と右にモンブラン山群が見え、モンブランが雲の合間に辛うじて見える。この2つの山群がはっきり見えるのもこの峠まで、ここから先の景色はガラリと変わる。
なだらかな登りを進むと2つ目の峠・ルヴィー峠に着く。標識のポールが折れたようで岩に直接打ち付けられている。標識を見ると、ここからモン・フォール小屋まで2h30min、プラフルーリ小屋(Cab
de Prafleuri 2624m)まで2h15minとあり、今日一日の行程は足して4h45minということになる。休憩を1時間強としても総時間は6時間、これは自分の足に較べたら4割前後も早い。表示時間で計画したらとんでもない事になりそうだ。
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3つ目の峠・フラフルーリ峠(2987m) ↓ |
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ルヴィー峠(2921m)の標識 | ルヴィー峠から東側を見る |
ルヴィー峠からの東側は、両側に岩が張り出していて見える範囲が狭いが、砂地の荒野が広がっている。この地域をグラン・デゼール(Grand
Desert)と言う様で、文字通り大砂漠地帯だ。
この荒野を越えた稜線の凹んだ所が3つ目の最後の峠・プラフルーリ峠(Col de
Prafleuri 2987m)のようだ。
プチ・モン・カルム(3220m)↓ ロザブランシュ(3336m)↓ |
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峠を少し下りると、 グラン・デゼール氷河が広がる |
峠の残雪を踏んで下ると岩だらけの急な下りとなる。右手後ろにグラン・デゼールの氷河が広がって見える。Desertと云う名に相応しくない真っ白な氷河で太陽の光りを受けてキラキラと輝いている。
岩の道を下りると砂地になりその前に大きな乳白色の水を湛えた氷河湖が横たわっている。地図に書かれたトレイルは氷河の下側と氷河湖の上側の間の砂地に点線で示されているが、実際は氷河湖の下側を通るようになっていた。
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氷河湖の下側から見るグラン・ディゼール氷河 |
この氷河湖は乳白色でも濁ったような色であまり綺麗ではないが、下から見ると氷河が氷河湖に押し寄せ被さってくるように感じる。
この氷河湖から流れ出る水は小川となっていて、渡れるように大きい石が点々と置かれている。
この氷河も年々後退しているに違いない。
小川の近くで休憩し氷河を見上げながら昼食とした。
下りはここまでで、緩い登りになる。乳白色の氷河湖を半周するように回り込むと、もう1つの青い色をした氷河湖も右下に見えるようになる。赤白マークを頼りに進むとナンダ谷のシヴィエ (Siviez 1733m)への分岐(2826m)に出る。
西方向を振り返ると、プチ・モン・フォールの左裾に越えて来たルヴィー峠が見え、周囲は結構険しく見える。
北方向を見ると、ナンダ谷が落ち込み、その中にグラン・デゼール湖(Lac du Grand Desart
2642m)が小さく見える。遠くに見える山はローヌ谷の北側にあるレ・ディアブルレ(Les
Diablerets 3210m)とその氷河だ。
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ナンダ谷のシヴィエへの分岐(2826m) 奥に越えて来たルヴィー峠が見える |
ナンダ谷 中央にグラン・デゼール湖(2742m)、 遠くにレ・ディアブルレ(3210m) |
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一段高い台地に来て振り返る 中央の山はプチ・モン・フォール(3135m)、 その左の凹みはルヴィー峠(2921m)、 右端の山はモンフォール(3328m) |
分岐から少し登ると一段高い台地に出る。ここから西方向を振り返ると、モン・フォールの山も、越えて来たルヴィー峠も、歩いてきた氷河湖の周辺も良く見渡せる。しかもルヴィー峠の凹みに再びモンブラン山群の一部が見え出した。
ほぼ平らな岩場の台地が暫く続き、歩きやすく展望も利くのでとても気持ちが良い。振り返るとグラン・デゼール氷河が穏やかなスロープを描いて流れている。Grand Desertと云うくらいなので、もっと荒々しい所かと思っていたが、眺める内に伸び伸びとした安らぎを覚えた。
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岩の台地を進んできて振り替える グラン・デゼール氷河と 左は3141mのピーク |
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グラン・モン・カルム(3205m)の前の氷河 |
岩の台地を抜けると砂礫に変わりプラフルーリ峠の最後の登りになる。
右手を見るとまた氷河が現れた。今まで見てきた氷河と同じかと思ったが良く見ると違う。グラン・モン・カルム(Grand
Mont Calme 3205m)の稜線に沿った氷河で地図には名前が無い。もしかすると雪渓かもしれない。
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プラフルーリ峠(2987m)より東方向を見る、モンブラン山群の一部が薄っすらと見える 遠くの山は左からヴェルト針峰(4122m)、その左はシャルドネ針峰(3824m)、その右はトゥ―ル針峰(3540m)、 右手前の山はプチ・モンフォール(3135m) |
3つ目の最後の峠・プラフルーリ峠に着いた。今日歩く中で標高が2987mと一番高い所なので、2つ目の峠のルヴィー峠越しにモンブラン山群の一部が見える。
目の前に氷河が流れ、その後ろにゴツゴツとした岩山があり、その岩山を越えてモンブラン山群が薄っすらと見える、ここの景色もなかなかのものだ。
プラフルーリ峠から南を見ると、景色がガラリと変わってこれがまた凄い。明日歩くコースが手に取るように分かる。直ぐ手前にルー峠(Col
des Roux 2804m)が見え、ディス湖(Lac des Dix 2364m)は山の陰で見えないが遠く細く伸びるシェイロン氷河(Gl.
de Cheilon)の横の稜線の一番くぼんだ所がシェーヴル峠(Pas de Chevres 2855m)と見て取れる。真ん中のビーニュ・ダローラ(Pigne
d'Arolla 3790m)の左にはレヴェック(L'Evque 3716m)やモートル・ド・レヴェック(Mitrede
l'Eveque 3654m)やモン・コロン(Mont Collon 3637m)等のアローラ(Arolla)近くの山が一望にできる。
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プラフルーリ峠(2987m)から南方向を見る 中央の山はビーニュ・ダローラ(3790m)、その左へ順にレ・ヴェック(3716m)、ミートル・ド・レヴェック(3654m)、モン・コロン(3637m)、 中央の氷河はシェイロン氷河、その左はモン・ブラン・シェイロン(3870m) |
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雪融け氷や氷河融けの水が流れる平坦地 |
モン・フォール小屋で一緒になったフランス在住のH氏は私より30分程後に小屋を出たはずだが、この峠で一緒になった。早い足だ。
しばし峠からの景色を眺めてから急な下りに入った。下には氷河や雪渓から流れた小川や水溜りがあちこちにある。少し川幅の広い小川もあったがなんとか濡れずに渡れた。雨が強いとバシャバシャと水に入らないといけない所かもしれない。
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プラフルーリ小屋が見えた(中央) |
平地を過ぎると、もう一段の下りがあって、その下り口からようやくプラフルーリ小屋(Cab de Prafleuri 2624m)が見えた。
谷川まで下りて橋を渡ると直ぐ目の前が小屋だが、最後に砂利道の上りがあって、足が上がらず踏ん張りが利かずで呼吸が乱れる。小屋には午後3時少し過ぎに着いた。
プラフルーリ小屋は新しい小屋だが、案内された部屋のベッドは3段(始めて見た)の一番上、私の背丈より遥かに高くて上り下りも大変な感じ、部屋も狭くて周囲に物を広げるスペースも殆んどないので、ウフェーと思っている所へ、フランンス在住のH氏が旧小屋なら空いているそうだがどうする?と尋ねてきてくれた。ありがたい、と早速移動。古くて半分倉庫に近い感じはしたが2段の床でマットレスもあって、2人で枕を並べて寝ることができた。僅かな同宿者しか居らず、快適であった。
当然ながらH氏との会話が弾んだことは云うまでもない。