1.モンフォール小屋とモンフォール山
 (Cab du Mont Fort & Mont Fort )

参考地図は「Bモンフォール小屋からプラフルーリ小屋経由アローラ」のぺージにあります  


モンフォール小屋(Cab du Mont Fort 2457m)に最短で入るには、麓のル・シャブル(Le Chable 821m)からゴンドラに乗ってヴェルビエ(Verbier)を経由し、2つ目のレ・ルイネット(Les Ruinettes 2192m)迄上る。ここから南に向かって3本の平行する道が付いているが、一番上の道を進み山腹を廻りこんでラ・ショー(La Chaux 2266m)のゴンドラ乗り場に行く道から途中で左に入って直接小屋に向かうのが一番近いと思う。
今回はラ・ショーから再びゴンドラに乗ってモン・フォール山頂(Mont Fort 3328m)に上り、その後戻って小屋に入ったので、ラ・ショーのゴンドラ乗り場を経由した。
この一帯はスイスでも指折りの大スキー場で、リフトがあちこちに有り山腹の殆どが手を加えられ緑が少なく開発し尽くされた感じで、のどかなアルプスの雰囲気ではなかった。
しかし、山腹からの景色はグラン・コンバン山群やモンブラン山群の美しい展望が南から西にかけて広がり、ゴンドラで上るモン・フォールの頂上からは360度の展望で、マッターホルンを始めとするヴァリス地方の名だたる4000m峰が東方面に加わって見える。しかも意外と近くに見えるので驚かされる。
また、頂上からはモン・フォール小屋とプラフルーリ小屋(Cab de Prafleuri 2624m)間の3つの峠を見下ろすことができ、ここを歩く場合の予備知識を得ることができる。
モン・フォール小屋から見る夕日、
 左の山はダン・ドュ・ミディ(3257m)

<再会>
午前中、バスでモーヴワザン(Mauvoisin)からル・シャブル(Le Chable)に移動する時、途中のフィオネ(Fionay)から乗ってきた男女2人の顔を見て、アレ、どこかで見た顔と思った。向うも座席に座りながらこちらを見ている。お互い同時にアーと声をだした。 6日前グリューベン(Gruben)の山岳ホテルで一緒でメイドパス(Meidpass)で話しをしたオランダ人のペアーだ。
聞くと、ヴァイスホルン・ホテル(Hotel Weisshorn)、ツィナール(zinal)、モワリ小屋(Cab de Moiry)、アローラ(Arolla)、プラフルーリ小屋(Cab de Prafleuri)、そしてルヴィー小屋(Cab de Louvie)から今下りてきて、オランダに今日帰る所だとのこと。私も歩いた所を説明し、お互いの健闘をたたえあった。これからの計画を話すと、男性の方がこの辺りに何度も来ているようで、ゴンドラ駅のレ・ルイネットに見晴らしの良いレストランがあること、モンフォール頂上からはプラフルーリ小屋に行くルートが下に良く見えること、ルヴィー小屋はモン・フォール小屋のように周囲が荒れてなくて良いこと、アローラに抜けるのにシェーヴル峠(Col de Chevres)を越えるかリードマッテン峠(Col de Riedmatten)にするかはどちらが良いとも言えないこと。その峠の前のシェイロン氷河(Gl. de Cheilon)は問題なく渡れること、など、色々と教えてくれた。
終点の
ル・シャブルまでの短い時間だったが、メイドパスでどこかでまた会うかもしれない、と言っていたのがズバリと当たって、思い出深い再会だった。


 歩いた日;2010年7月20日
 コース;Res Ruinettesー(40min)La Chaux-(40min)Cab du Mont Fort
    合計時間:1h20min
    標高差: 登り265m  最高標高:,2,457m 


今日は気楽な一日のはずだが、何処に行けば良いのか心配になるほどゴンドラやリフトや道があちこちに有って、緊張しっぱなしだった。
ル・シャブルでチケットを買ってゴンドラに乗り込みヴェルビエを通過して終点のラ・ルイネットで降りる。広々とした山腹だが、ブルトーザーでならされたような斜面で、冬は一面スキーのゲレンデになる所だと思う。丁度食事時なのでオランダ人に教えてもらったゴンドラ駅横の大きなレストランで昼食をとる。テラスは西を向いていて、雲が多いがモンブラン山群と昨日近くを歩いたグラン・コンバン山群が正面に見え、展望地に座っているような見晴らし抜群のレストランだった。

レ・ルイネットのレストランから見るモンブラン山群
左アルジェンティエール針峰(3901m)その右雲がかかったシャルドネ針峰(3824m)、
モンブランはもっと左だが完全に雲の中
レ・ルイネットのレストランから見るグランコンバン山群
山は左からトゥーネロン・ブラン氷山の山がグラン・コンバン(4314m)、その右手前がコンバン・ド・コルバシエール(3716m)、右端がプチ・コンバン(3663m)



モンフォール小屋から東を見上げる
左上はジャンシアンヌ中間駅、中央上はモンフォール頂上
右端はシュー峠(青白マークの上級トレイル)

ここから左手の山腹の陰になっているラ・ショーのゴンドラ乗り場に向かうが、その方向に道が3本も平行してある。どれを行っていいか分からないので店員に聞くと、どれでも好きな道を行ったらいいと言う。自然と真ん中の道を選んで進む。ほぼフラットな道だがゴンドラからゴンドラに乗り換えるのに歩く距離としては尋常ではない。3km以上はあると思うが40分ほどもかかってラ・ショーのゴンドラ乗り場に着いた。
(ここからゴンドラでモン・フォール山を往復したが「モン・フォール山」の項に記載します)

ラ・ショーから山小屋に行くのも色々な道が見えて分かりにくい。モンフォール山への乗り場の建物の山側の道を進むのが正解のようだ。目の前にあるように見えたモン・フォール小屋だが歩くと結構遠く、40分かかって小屋に着いた。




<出会い>
小屋に着いてテラスでビールを飲んで景色を眺めていると「日本の方ですか?」と声がした。今回のスイス山行中、山岳ホテルや山小屋泊まりは8泊目だが、始めて日本語を聞いた。ジュネーブに近いフランスに住んでおられる日本人のH氏で、シャモニーからツェルマットまでのオート・ルートを1人で歩いている途中で、今日が6日目とのことだった。一切乗り物には乗らずで、今日も麓のル・シャブルから標高差1600m以上を登ってこられたとのことで驚いてしまう。聞くと2年前にフランスからサンチャゴ巡礼の道をフランスから1600km以上も歩かれたそうで、長い巡礼の道中で人生観が変わったとのことだった。「フランス語もスペイン語も分からない私でも歩けますか」と聞くと「歩けますとも、絶対に歩くべきです」とのことだった。
ウェブサイト上を見る限り、夏のオートルートを完歩している日本人は見当たらないし、サンチャゴ巡礼をフランスから歩き通した日本人も見ていないので、これは凄いと思った。次の日のプラフルーリ小屋では枕を並べ、ヨーロッパ各国の文化や日本との違い、政治や経済や今まで歩んできた事など、話題が尽きず、夜の更けるのも忘れるほどだった。
こういう出会いや会話は、やはり日本に居たのでは生まれない。海外の山に出かけることの楽しさと素晴らしさを改めて感じた。




モン・フォール山

ゴンドラで上がるモン・フォール山(Mont Fort)は標高3328mでさほど高い山ではないが、周囲にあまり高い山がないので頂上からの景色は素晴らしい。上るルートは2つあって、一つは北側のナンダ谷(Val de Nendaz)方面からと、もう1つは西側のル・シャブルから上ることができる。
今回ル・シャブルから上がって、ラ・ショーまで来て、ここから再びゴンドラに乗り、次の中間駅・ジャンシアンヌ峠(Gentianes 2980m)で乗り換えて、ようやくモンフォール山頂駅に着いた。頂上はもう少し上で20m程登る。
途中歩いたり3回も乗り換えたりと、手間がかかるので頂上に来るまでに2時間ほどは見ておいたほうが良いと思う。
モン・フォール山に上るだけならナンダ谷から上がった方が便利だそうです。詳しくは「おーと」さんの「夫婦で歩くスイスアルプス/モン・フォール展望台」を見て下さい。

モンフォール山頂駅前(3308m)と頂上(3328m) モン・フォールの頂上



頂上に立つと、先ず東方向に、ロザブランシュ(Rosablanche 3336m)に白く覆いかぶさるグラン・デゼール氷河(Grand Desert)と、その奥にヴァリス地方を代表する山々がずらりと並んでいるのが目に入る。
明日歩く予定の2つ目の峠のルヴィー峠(Col de Louvie 2921m)は目の前のプチ・モンフォルトの裏側で見えないが、3つ目の峠のプラフルーリ峠(Col de Prafleuri 2987m)は左手にはっきり見える。
トレイルまでは目視できず、雪や氷河の白い所が多すぎて何処を歩くのかと返って心配になった。

東方向を見る      
左の小氷河のある凹みがプラフルーリ峠(2987m)、中央の大きな氷河はグラン・デゼール氷河、その左下の氷河はプチ・モン・フォルト氷河          

左部拡大
手前左の凹みがプラフルーリ峠、
右大きく占めている山はポワント・ド・ヴァソン(3489m)、そのピークの後ろはグラン・コル二エ(3962m) 、その右はオーバーガーベルホルン(4063m)、右端半分見えているのはダン・ブランシュ(4357m) 


頂上に展望説明パネルが取り付けられていて山の名前が良く分かる。それによるとグラン・コルニエ(Grand Cornier 3962m)の左にはツェナールロートホルン(Zinalrothorn 4221m)やヴァイスホルン(Weisshorn 4506m)やビスホルン(Bishorn 4153m)、それにミシャベル山群のドーム(Dom 4545m)等も見えるらしい。今日は写真のように氷河の一部が見えるだけで残念ながら雲に隠れてピークは見えなかった。
しかし、他のピークは雲が多いもののほぼ全部を見通せた。



中央部拡大
奥の山は左からダン・ブランシュ(4357m)、中ほどはマッターホルン(4478m)、右氷河の山はダン・デラン(4171m)
右部拡大
左手前はロザブランシュ(3,336m)、その右奥はピーニュ・ダローラ(3,790m)、右端はモン・ブラン・ド・シェイロン(3870m)



南方向を見る           
左の湖はモーヴワザンダム湖右中ほどの湖はルヴィー湖(2213m)
中央の高い山がグラン・コンバン(4314m)その左がトゥーネロン・ブラン(3700m)、その右はコンバン・ド・コルバシエール(3716m)、右端はプチ・コンバン(3663m)


南を見るとグラン・コンバン山群(Grand Combin 4314m)の全景とモーヴワザンダム湖(Rac de Mauvoisin)の一部が見える。昨日歩いたモレーンがはっきり見え、パノシエール小屋(Panossiere Cabin 2641m)も肉眼で分かる。越えたオタヌ峠(Col des Otanes 2880m)の位置も見え、モーヴワザンに向かって下りた斜面もだいたい分かる。

下に見える谷はバニュの谷で今朝バスでこの谷を左から右に走ってきた。湖はル-ヴィ湖で肉眼で小屋も見える。オランダのペアーが泊まったルヴィー小屋(Cab de Louvie 2240m)だ。良い小屋だと言っていたのは湖からバニュの谷(Val de Vagnes)のフィオネ(Fionay)に出るので、荒れたスキー場を通る必要がないからだと思う。

湖の右上が明日歩く一つ目の峠のテルマン峠(Col Termin 2648m)だ。

オランダ人が言っていた通り、明日歩く3つの峠の凡そがモン・フォールの頂上から分かった。



グラン・コンバン山群の拡大



南西方向は、モンブラン山群が並んで見える。雲が多くて個々の山が良く分からないがモンブランの白い頭やグランドジョラスの黒い壁は分かる。

目の前に尾根続きのベック・デ・ロス(Bec des Rosses 3223m)があり、その下はバニュの谷で、モンブラン山群の手前の谷はグラン・サン・ベルナールに続くアントルモン谷(val d'Entremont)でベック・ド・ロスの方角辺りでフェレ谷(Val de Ferret)と2つに分かれている。

南西方角を見る


西方向を見る
左の山はトゥール・サリエール(3220m)、
中ほどの山はダン・ドュ・ミディ山群(3257m)



西方向を見ると、ダン・ドュ・ミディ山群(Dents du Midi 3257m)と、その左にトゥール・サリエール(Tour Selliere 3220m)が見える。
手前に深く窪んで見える谷間にマルティニ(Martigny)の街があるが、マルティニの市内から見ると広々としていて、これほどの谷間に街があるとはどうしても思えないから不思議だ。




北方向を見る
北方向を見るとローヌ谷(Val Rhone)のシオン(Sion)の街が見え、その手前にナンダの谷(val de Nendaz)が上に伸びてきている。
ローヌ谷の北側にヴィルトホルン(Wildhorn 3248m)が見えるはずだが雲の中のようだ。



モン・フォールの頂上に上がるまでに長い時間がかかるし、頂上に休憩所は無いし、頂上以外に何処にも行けないし、不便な山だが、展望だけは素晴らしい。






モンフォール小屋からプラフルーリ小屋→