みーばい亭の
ヤドカリ話
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42.円卓のヤド!


円卓で饗宴を繰り広げる磯水槽の住人たち
年に1度あるかないかの贅沢だ





「明日までの命」と宣告されたら、人生の最後に何が食べたいか?
星座も血液型も干支も誕生石も好きな動物も属性(?)も、何もかもが一致しない我々夫婦だが、この点だけは見事に意見が一致している。
「新鮮なアワビの生肝」である。

その味を表現するに、ありきたりの美辞麗句ではあまりにも力不足。
経験者は分かるだろうし、未経験者には「食え」としか言いようがない(^^;
あえて言うなら、「筆舌に尽くしがたい美味さ!」か。
グルメ・リポーター失格である(誰がやねん)

それはともかく・・・。
現実問題として、アワビは、高値で高価で高額で高嶺の花の貴重な高級食材。
遠い未来、我が家の貝塚を発掘調査した考古学者は、大量のアサリやシジミに混じって発見されるアワビ殻の少なさを見て、安サラリーマン家庭への同情の涙を禁じ得ないだろう。
洋服を買ったつもり、飲みに行ったつもり、CDを買ったつもり・・と、つもりを積み上げて、年に1度か2度、感涙に咽びながら食するアワビの生肝。
まさに、市場史上最高の至高で究極の食材である。
・・と、ここまで書けば、どなたか奇特な読者がみーばい亭宛にクール宅急便で送ってくれたりは・・・しないだろうな(笑)
もちろん、管理人が年に1度あるかないかの幸運に恵まれたときには、磯水槽の連中もそれなりの饗応を受けることになる。
裏側に僅かに残った貝柱はもちろん、表面に付いた藻類やキクスズメなどの付着生物も、ヤドカリたちのご馳走になるし、時には生き延びた付着生物がそのまま水槽内で成長して、管理人を楽しませてくれることもある。

そのアワビ肉への喰い付きの良さは、アサリやシオフキはもちろん、サザエやマガキをも遥かに凌ぐ。
やはり、人間が喰って美味い物は、ヤドカリが喰ってもうまいのだろう。

さあ、こいつらのためにも、来夏に向けての、アワビ貯金をはじめなくては(笑)

一心不乱に貝柱をむしるユビナガホンヤドカリ
貝好きのユビナガホンヤドカリの喰いっぷりを見ていると
思わず頬が緩んでくる




さて、今シーズンもそろそろ終盤。
今期最大のトピックといえば、昨シーズンから探索を続けていた、ホシゾラホンヤドカリの発見、採集に尽きるだろう。
目に付いた赤い触角のヤドカリを片っ端から白いバケツに放り込んで、じっくり観察するという、地道な(?)探索が実を結んで、今シーズン2匹のホシゾラホンヤドカリを捕獲!

ホンヤドカリ、ユビナガホンヤドカリ、ケアシホンヤドカリ、ヤマトホンヤドカリ、ベニホンヤドカリ、クロシマホンヤドカリ、ケブカヒメヨコバサミ、ブチヒメヨコバサミ、に続く越前海岸(というより私の採集ポイントだが)9番目のヤドカリ。009島村ジョーである。(因みに8番目のクロシマホンヤドカリはエイトマン東八郎)

この一週間、水槽のガラス越しにしっくりと観察した限りでは、ケアシホンヤドカリよりもさらにおとなしい性格で、どちらかといえばシャイで臆病な感じがする。
そのせいで、自然下では、なかなか見つけられないのかもしれない。
それにしても、同じような環境に同じような生物が当たり前のように生息する磯の生物多様性には、改めて驚かされる。
イソスジエビとスジエビモドキ然り、クボガイとイシダタミ然り、そしてケアシホンヤドカリとホシゾラホンヤドカリ然り。

肉眼で見える星空の星は5~6千個。
銀河系に存在する恒星は2千億個!
さらにそれに付随する惑星や衛星は・・・。
さらにさらに大宇宙には銀河系程度の小宇宙が数千億・・・・。

天文ファンは、人知を越えたはかりしれぬ宇宙の神秘に心を奪われるらしいが、磯物ファンは、ホシゾラホンヤドカリの体に点在する水色の星を眺めつつ、磯の不思議に心ときめかせるのだ!




こちらは、円卓の饗宴に参入したくて、殻のふちでジタバタしているケブカヒメヨコバサミ。

過去何度も磯水槽にお迎えしているお馴染みのヤドカリだが、1年越えで生かせたことのない難物。
ここ数年、採集しても持ち帰ることはなかったのだが、磯水槽に魚が居なくなったこともあって、久しぶりに飼ってみることにした。
相変わらず、動きが遅くてのんびりとした性格で、あの荒磯で生き残れるのだろうか?と心配になるが、個体数の多さを考えると、それなりに適応しているようだ。

今度の個体はなんとか長生きしてくれるといいのだが、白身魚が好きなので、餌の調達がたいへんである。

まあそれを理由に、飼い主の晩酌が豊かになることを、少しばかり期待しているのだが(笑)
タイとか~、ヒラメとか~、ホウボウとか~、コチとか~、ナメラとか~、アカジンとか~・・。
多少、妄想的希望も入っておりますが(^^;




6月に干潟から掘り出したシオフキの殻に付着していた小さなイソギンチャクだが、水槽に投入するや否や、シオフキから離れて底砂に移動。
サンゴ砂の粒に活着しているのか、底面板に活着しているのかは不明だが、魚肉やイカ肉はもちろん、ザリ餌だろうが、酸化したクリルだろうが、触手に振れる有機物は何でも呑み込む貪欲ぶりで、当初の10倍くらいの径に成長している。
まさに、生きたディスポーザーである。

惜しむべくは、数年前、磯水槽で一世風靡したヨロイソのように芸達者でないこと。
ちょっとはウケ狙わんと、磯水槽では生きていけへんで~。
2011.9.18

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