みーばい亭の
ヤドカリ話
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17.ゾエア全滅

今年も飼育下で交接、産卵をなしとげたナキオカヤドカリのカップル
一見仲良さそうなオシドリぶりだが・・・




心配な5月が過ぎ、夏が近付いてくると、オカヤドカリたちは繁殖シーズンを迎えます。
みーばい亭の水槽内でも6月に入った頃から、オスがメスを追いまわしたり覆いかぶさったりする様子が見られるようになりました。
そして6月22日、古参のナキオカヤドカリの抱卵を確認。
7月3日、とりあえず無事に放幼させることができました。
ただ、なかなか時間の取れない現在の状況では、一昨年のようなきめ細かな管理はできそうもありませんので、ろ過の効いた海水水槽の一角に保育容器を設置することで換水の手間を省こうと目論みましたが、結果は惨敗。
やはりオカヤドカリの繁殖はそう甘くはないようです。

失敗の記録を公開してもあまり意味はないと思うのですが、苦難を避け楽な道を選んだ自分自身への戒めも兼ねて、手元のメモを貼っておきますので、ご笑覧ください。


ナキオカヤドカリのゾエア
2007年7月3日記
梅雨の雨が鬱陶しく降りしきる午前5時、ナキオカヤドカリのクメが放幼した。
自然下での放幼は日没後から午後10時くらいまでの間に行われることが多いらしいが、我が家の場合、ムラサキオカヤドカリは2回とも昼間、ナキオカヤドカリはかなりの確率で早朝に放幼している。
少しは飼い主の都合も考えてもらいたい。
もしかしたら飼い主への嫌がらせに、わざとやっているのだろうか?
まあ、日頃の待遇を考えると心当たりがなくもないが・・(^^;
それはともかく、みーばい亭で飼育しているナキオカヤドカリとしては4年連続、同個体では3年連続の繁殖である。
1年目は、引越しでドタバタしている最中だったので、充分な準備も世話もできずに失敗。
2年目は、数匹を何とか上陸するまで育てあげたものの、陸上生活に上手く適応させることができずに全滅。
そして昨年は、放幼時期を見誤って卵が充分に成熟する前に、海水に浸けたせいだと思うのだが、孵化個体の歩留まりが極端に悪くてあえなく玉砕。
今年はとりあえずゾエアを無事に確保することができた。
今のところ保育容器の中を元気に泳いでいるが、さてどうなりますやら。


AM5:00 放幼開始
AM6:15 保育容器に収容
PM8:00 ブライン給餌開始

2007年7月4日記
毎日毎日、こまめにゴミを吸い出して、時間をかけて慎重に換水。
孵化させた、ブラインシュリンプのノープリウスを一日数回充分に給餌。
水温や比重をこまめに確認・・。

以上のように、手間と時間を惜しまずにきめ細かな世話をすれば、とりあえず上陸するまで育てられることは、一昨年の経験で分かった。
同じように育てれば、最低でも同じような結果は得られるだろう。
しかし分かっていることを繰り返すのも芸がない・・というのは強がりで、正直これから50日間集中力を持続する自信がない。
一日中オカヤドカリの世話をやいているほど、ニッポンのサラリーマンは暇ではないのだ。
というわけで、今年のテーマは「手間と時間をできるだけかけない幼生飼育」、早い話が「手抜き」である。
まず、もっとも時間のかかる換水と掃除の手間を省くために、保育容器にろ過機能を持たせてやれば良いのだが、話はそう簡単ではない。
なんせゾエアは小さいのだ。
下手に水を回せば翻弄されて餌をとれないし、吸水パイプに吸い込まれたら元も子もない。
それならろ過の効いた水槽内に通水性のある保育室を作ってやれば良い。
話が長くなったが、要するにグッピーなどの仔を取るあのやり方である。
かねてから用意してあった保育室(といってもペットボトルを半分に切って水槽の縁に針金で引っ掛けただけ)を磯水槽に設置。
これにエアチューブを沈めて、ポコポコと水を動かしてやる。
これで、換水の手間はなし。
掃除も数日に一度底に溜まったゴミを吸い出してやれば充分だろう。
水槽の水温は数日をかけて、27〜8℃まで上げてある。
水質は・・同類のホンヤドカリやケアシホンヤドカリが平気で生きているのだから、まあ良いだろう。
貧栄養のサンゴ礁・・というわけには行かないが、子供のうちから甘やかすとろくな大人に育たない。
後はひたすらブラインを補給するだけだ。
ただし一日一回だけ。
すり潰した人工餌も併用すれば何とかなるだろう。
さて、この手抜きシステムでどこまで生かすことができるか?
琉球大学での飢餓実験では十数日間生存したらしい。
せめて、それ以上は生きてくれるといいのだが・・(^^;

PM8:00 ブライン給餌 



2007年7月5日記
保育容器がペットボトルなので中がよく見えないが、とりあえず生きているようだ。
鮮明な画像は撮りようもないのでご容赦願いたい。
ここまで残り物+余り物を利用して乗り切ってきたが、さすがに一昨年のブラインエッグでは、孵化率が低い。
それくらいは新しいのを買ったほうがいいかも(^^;


PM7:30ブライン給餌  



2007年7月6日記
孵化から3日。
底に溜まったゴミをスポイドで吸い出してみるとゾエアの死骸が10体ほどあった。
少し過密気味なので、まあこんなものだろう。
昨年はこの時点で全滅だったから、とりあえず昨年の実績はクリア(笑)
今回は20cmほどの深さがある改造ペットボトルで飼育しているので昼行性の傾向が強いことが良くわかる。
照明が付いている間は、中層から上層を漂っているが、真っ暗になると底に沈んでしまう。
採餌は、昼間明るい間に行っているらしい。
給餌は午後8時前後になるので充分に餌が採れるように、照明は10時ごろまで点けておくことにする。

PM8:00 ブライン給餌  ゴミ取り



2007年7月7日記
今夜は七夕・・新暦だから別にどうでもいいが(笑)
世話はブラインを湧かすだけだから楽チン。
きめ細かな観察がしにくいので、状況が良くつかめないが、昨日からの大量死が続いている様子。

PM6:00 ブライン給餌  ゴミ取り



2007年7月8日記
ゾエア、大分少なくなった。
それでも水槽に顔を近づけて目を凝らしていると、ゾエアがブラインを狩る様子が見られることがある。
頑張れ。


PM5:00 ブライン給餌



2007年7月9日記
大量死続く。
生き残りは5〜6匹程度。
餌は問題なく食べているので、脱皮が原因か?
やはりいい加減な環境では上手くいかないようだ。

残ったゾエアを眺めながらふと考えたのだが、水中を漂っているゾエアはどのようにして脱皮をしているのだろうか?
中層に浮かんだままではちょっと無理があるような気がする。
やはりいったん水底に下りて脱皮をすると考える方が自然ではないか?
成体ほどではないにしても、甲殻類の脱皮の大変さを思うと、ゾエアの脱皮環境には、あまりにも無頓着すぎたのではないだろうか?
そういえば、一昨年ゾエアを育てていた時に、試しに投入したサンゴ砂の下に隠れているゾエアがいた。
あの個体が脱皮のために隠れていたのかどうかは分からないが、今から思うと水底の環境にもう少し気を使う必要があったのかもしれない。

すでに手遅れかもしれないが、気休めに水槽の底砂を少し保育容器の底に敷いてみた。


PM8:00  ブライン給餌  ゴミ取り サンゴ砂投入



2007年7月10日記
ゾエア、ほとんど残っていない。
今年はこれまでか・・。
容器内にブラインが結構残っているので、給餌は中止。




2007年7月12日記
作戦終了・・


教訓
「オカヤドカリ飼育に王道なし」

こんないい加減な方法で繁殖するのなら、今頃CB個体が普通に流通しているはず。
オカヤドカリの繁殖を狙う方は、手間隙を掛けて真面目に取り組まれることをおすすめします(笑)


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抱卵・・そして流産
ナキオカヤドカリを育てる!
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3年連続の産卵という偉業をなしとげたナキオカヤドカリのクメ
年増の色香がオスを惑わす(笑)





2005年組の中で一番成長の早い個体がメスと判明
オカヤドカリは生まれて2年で繁殖活動をはじめるとのことなので、試しに古株水槽に「嫁入り」させてみた
画像は長年連れ添った年増ヤドを袖にして、若い娘を追いまわすお代官様

「む・ふ・ふ 年増もええが、やはり若い娘はこたえられんの〜  これ、そう恥ずかしがらずに近うよれ」

おいおい\(^^)





古株のオスが交互に交接を迫るが、乙女のガードは固いようで
未だ産卵には至っていない

「ふん、若けりゃいいってモンじゃないよっ」

押し倒される小娘を横目にして、鉄火に強がる百戦錬磨の年増ヤド(笑)





唯一、オカヤド産卵の恩恵にあずかったソラスズメダイ
ある意味自然界の縮図である(^^;
 
「とれとれのオカヤドゾエア、美味しゅうございました・・
 ピチピチのブライン、美味しゅうございました・・
 来年もよろしくぅ〜(^-^)」








番外編

庭のトロ舟池を泳ぐヒメダカの群れ
ヤゴに食われカラスに狙われながらも健気に殖え続けている
ヤドカリに比べるとメダカの繁殖など何もしないに等しい
オカヤドカリもこれくらいお気楽に殖えてくれるといいのだが・・・



2007.7.15

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