みーばい亭の
ヤドカリ話
バックナンバー   HOME

12.目つきが悪い!
個人的な観点から見ると、世の中の人々は大きく2つに分けることができる。
「知っている人」と「知らない人」だ。
「知らない人」は何十億人居ようが単なる風景に過ぎないからこれはどうでも良い。
社会生活において直接関わってくるのは、ごくわずかな「知っている人」。
これはさらに「好きな人」「嫌いな人」「どうでもいい人」の、3つに分けられる。
「草枕」の冒頭文ではないが、とかく住み難い世の中なのだから、曖昧な態度で人に接して流されてしまうより、多少角が立ってもすっきり単純に人間関係を割り切った方がストレスはたまらない。
「好きな人」とは楽しく飲めば良いし、「どうでもいい人」は挨拶だけしてすれ違えば良いのだ。
ただ問題なのは「嫌いな人」。
立場が許せば排除してしまいたい所だが、普通に社会生活を営んでいる以上、なかなかそういうわけにはいかない。
そうかといって顔を見るたびに怒鳴りあったり殴りあったりするのも疲れる。
自然、相手を黙殺することになるのだが、残念ながらこっちはそれほど人間ができていないので、抑えきれない嫌悪感がつい目に出てしまう。
おかげで子供の頃からさんざん目つきが悪いと言われ続けてきた(笑)
ホンヤドカリ
ホンヤドカリ
どこの磯でも普通に見られるおなじみのヤドカリ。
磯では多種を圧倒して繁栄しているだけあって、動きが素早くめっぽうタフ。
ドスの効いた三白眼はだてではない。
オカヤドカリブームを受けて一部で不穏な動きがあるようだが、この目つきだ。
「カワイー」キャラクターにするのは難しいだろうし、
裾野が広がることはないだろう・・と思うが。
現在大小あわせて5匹を飼育中。
一応海水水槽の主役


ケアシホンヤドカリ
ケアシホンヤドカリ
真っ赤なヒゲがトレードマーク。
ホンヤドカリやユビナガホンヤドカリに比べると、やや草食に近い雑食性。
そのせいか大柄なわりには、おっとりとした性格で動きも鈍い。
その反面剛胆なところがあって、
餌を横取りに来たクモハゼに体当たりで向かっていくこともある。
もっともその程度の攻撃で引き下がるようなクモハゼではないが(笑)
現在3匹。
他の節足動物に比べるとオカヤドカリの愛好家には女性が多い。
人気の秘密は複眼にあるらしい。
縦長でまつ毛状の突起まである大きめの複眼が女性の心を惹きつけるようだ。
元々、哺乳類は目の大きな個体に対しては本能的に攻撃性がそがれるという。
愛情を感じると言い換えてもいい。
哺乳類の子どもが体のわりに大きな目をしているのは、成獣の愛情を得て攻撃を受けることなく守り育ててもらうためだとか。
とりわけ子どもと接することの多いメスはその本能が強いそうだ。
もちろん「ヒト」も例外ではない。
確かに我々男性に比べると女性は大きな目を好む傾向があるようだ。
小さな女の子が描く人物の目が異様に大きいのも然り、(古典的な)少女漫画の奇形的な目鼻のバランスも然りである。
この複眼の形状が女の子やその母親までを購買層として取り込み、、安っぽく擬人化され、悪趣味な「ペイント貝」を着せられ、プラスチックの玩具とセットでなぶりものにされるという現在の悲惨な状況を招いたのだから皮肉なものだ。

一方、小さな複眼のせいで女性たちには今ひとつ人気のないホンヤドカリたち。
個人的に彼らの不機嫌な目つきには非常に親近感をおぼえるのだが、あまり一般受けはしないようだ。
おかげでオカヤドカリのようなおかしなブームにならずにすんでいるのだから、世の中何が幸いするかわからない。

しかしアップの画像をしげしげ眺めてみると、コイツらそろいもそろって本当に憎たらしい目つきをしている。
もしかして思いっきり嫌われているのかな? 俺。

ユビナガホンヤドカリ
ユビナガホンヤドカリ
磯ではなくて内湾や河口近くの干潟に多いヤドカリ
泥や砂の上を歩きやすいように歩脚の第一節がちょっと長め、ゆえに「指長」・・だと思う。
ただし水槽内では貝組みに登っていることが多くて行動パターンはホンヤドカリとそう変わらない。
一昨年潮干狩りに行ったついでに採集してきた3匹のうちの生き残り。
目つきの悪さはホンヤドカリにひけをとらないが、1年以上宿貝を交換していないので、
ヒゲゴケだらけでちょっとまぬけな姿になっている。
通称 マリモ

ムラサキオカヤドカリ
つぶらな瞳で遠くを見つめる「夢見る乙女」ムラサキオカヤドカリ(実はオス(^^;)
この複眼のおかげで多くの同胞たちが、吐き気がするようなペイント貝や虐待グッズとセットで玩具にされている。
この冬も適切な飼育環境を与えられずに死んでいった仲間が大勢いることだろう。
ヤドカリ好きとしては、心底やりきれない気分になる。
2007.4.13

前ヘ 次へ