みーばい亭の
ヤドカリ話
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11.魚たち

日頃「趣味はフィッシュウォッチング」と公言していますが、実際に眺めるのは魚だけではなくて、軟体動物、節足動物、棘皮動物、腔腸動物、扁形動物、海綿動物、それに海藻や海草、ウミガメやウミヘビなどの爬虫類まで、その時々の興味や海況に応じて様々な生き物が対象になります。
「フィッシュウォッチング」という言葉を使っているのは単に通りが良いからであって、経験上「生き物ウォッチング」や「海生生物観察」などというとよけいな説明が必要になることが多くて面倒なのです(笑)
実際、魚は代表的な海生生物ですし、海中で滝のように流れるグルクンの群れを目の当たりにしたりすると、「やっぱり海は魚たちの世界なのだ」という思いを強くします。
シルル紀に地球初の脊椎動物として誕生してから4億数千万年。
魚類は今のこの時代に繁栄のピークを迎えているのだそうです。

さて、身近な無脊椎動物をメインにした「磯インバテタンク」というコンセプトでスタートした我が家の海水水槽。
脊椎動物である魚はあくまで脇役のはずだったのですが・・・。
今回は(いろんな意味で)「主役を食った」魚たちの近況です。


まずは一番の古株、カミナリベラのチビ銀です。
当初は同種のデカ銀にいじめられて拒食症になり、一時は駄目かと思うほど弱りきっていたのですが、その後いじめを克服、微妙な力関係のバランスを保ちながら同居を続けてきました。
昨年デカ銀が突然死した後は、のびのびと水槽暮らしを謳歌しているのですが、体は相変わらず細いままで成長も止まっているようです。
やはり幼魚の頃の拒食が影響しているのも知れません。
それでも一日中ビュンビュンと元気いっぱい泳ぎ回っていますし、食欲も旺盛、まさに「痩せの大食い」です。
水槽の住人の中ではもっとも遊泳力が優れていますので、水面近くは独壇場ですし、中層、低層と狭いながらも水槽をフルに活用して自由気ままに暮らしています。
眠る時には砂を掘って適度にほぐしてくれますので、ろ過の調子も良好です。




こちらはソラスズメダイのスーちゃん。
小さい頃は宝石のよう青く輝いていた体も、今ではすっかり黒ずんでフナみたいになってしまいました。
それでも良く馴れて人懐っこいので、一応「アイドル」の座はキープしています。
見た目に似合わず気が荒くて、他の魚に喧嘩を売ることは日常茶飯事ですし、ガラス面を掃除するスクレーパにも思いっきり体当たりしてきます。
しょっちゅう鱗をはがしたり頭を怪我したりしていますので飼い主が見ていないときにもずいぶん暴れているようです。
貝組みの下の砂を掘って巣穴を作るのが趣味で、小さい頃は一所懸命にサンゴ砂を運び出す仕草も可愛かったのですが、今では尾鰭を振って一気に掻き出しますので貝組みがすぐに崩れてしまいます。
このままでは危険なので体に合わせた大き目の「貝殻マンション」を新築して水槽の真ん中に設置やったところ、さっそく一階に入居してくれました。
どうやらお気に召したようです。
倒されないように底面フィルターの上に直接置いていますので、ろ過効率は多少悪くなりますが、今のところ水質は問題なく安定しています。
相変わらず海水魚としての自覚はないようで金魚の餌ばかり食べているのですが、意外なことにタイなど白身魚の切り身が大好物で、ヤドカリに給餌するついでに小さく切って沈めてやると大喜びで食べてしまいます。
共食いさせているようでちょっと気がひけるのですが(^^;)


最後は新参ながら一番態度のでかいクモハゼのハゼどんです。
元々、食いしん坊で太り気味だったのですが、年明け頃からお腹が膨らんで、おたまじゃくしみたいな体型になってしまいました。
はじめは便秘だろうと気楽に面白がっていたのですが、だんだんと元気がなくなり3月になると目の前に大好物のクリルを落としてやっても見向きもしなくなってしまいました。
元気がないだけならまだしも、食欲がないというのは尋常なことではありません。
ここへ来てさすがに心配になってきました。
苦しそうに口を開けて荒い呼吸をしているのを見るのは忍びないのですが、どうすることもできません。
そのまま3月も終わりに近付き、さすがにもう駄目かとあきらめかけた矢先・・・・卵を産みました(笑)
ピントがあまくて分かりにくいかもしれませんが、体の下に写っている薄黄色の粒々が卵です。
この時点ではまだお腹が膨らんでいますが、その後何回か産卵を繰り返して今ではすっかり元の体型に戻っています。
クモハゼはオスが産卵床を用意してメスを招き入れ、産卵が終わるとそのままオスが卵を守るのだそうです。
ハゼどんの場合、水槽にオスがいなかったので産むに産めず、ギリギリまで我慢したあげく耐え切れずに、スーちゃんのマンションに産んでしまったのでしょう。
寝床を産卵床にされてしまったスーちゃん、さぞかし迷惑がっているかと思いきや、大喜びでハゼどんの卵を食べています。
家に帰ると村田吉弘さんが台所で包丁を握っていて、「菊乃井」の料理を次から次へと出してくれるようなものですから、スーちゃんにとっては至福の数日間だったことと思います。
当のハゼどんはすぐ横でスーちゃんが卵を食べていても別に追い払いもせず無関心、自分で卵を守ろうという気持ちはまったく持ち合わせていないようです。
それでも自分が食べることはありませんでしたので、多少の母性はあるのかなと思っていたら・・・パクッ(笑)
どうやら、葛藤の末に食欲が母性に打ち勝ったようです。

過去には喧嘩やイジメなど、いろいろ大変なこともあったみーばい亭の魚社会ですが、おかげさまで今は安定した良い関係を保っています。
卵の食べ過ぎで苦しんでいたスーちゃんも復活、ハゼどんも排便・・じゃなくて産卵してすっきり、チビ銀は相変わらずマイペース。

海水水槽もどことなく春めいてきたようです。

産卵を終えてすっきりスリムに・・・なったかな?
2007.4.6

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