セクシャルテイー 1
アジアに散らばる反政府ゲリラの動きを止めるために設置されたプリペンダーの基地は、それほど大きな施設ではなかったが、配置された人材はかなり特殊な人間が多かった。 メンバーの大半はスカウトされて入隊した者達で、その誘った人物がレデイ・アンやサリイ・ポオとなればその異色さは群を抜いていたかもしれない。 そのためか、正式名称である“エリア91”より、“変人部隊”と呼ばれることの方が多かった。 だが、特殊な人種が多いとはいっても、ごく普通にエリートコースを歩んできた者も多少はいるわけで、そういう人間にとっては迷惑な呼び名であったろう。 へんぴな場所に建つ基地は、とりあえず生活に困らないだけの物資が揃えられていたが、男ばかりともなれば当然足りないものが出てくる。 政府のために働くとは言っても、聖人君子になるわけではないし、男の生理だけはいかんともしがたく・・・ といって、この基地に十数人しかいない女性は全て看護婦なので、その手の面倒までみてもらうというわけにもいかなかった。 だがまあ、白衣の天使云々は一応建前で、よろしくやってる者もいるにはいた。 しかし、それでも女の数が少ないのだから、結局、殆どは数十キロ離れた町まで行って女を買うしかなかった。 レデイ・アンもそこまで規制するほど頭が堅いわけではないので、週に一度交代で町に出ることを許可している。 十日ほど前に赴任してきたショーン・アクセルも、その日、初めて同僚と町へ出ていた。 まだ20才半ばという若さで、しかも甘いマスクのショーンに、通りに立っていた女たちは一様に色めきたった。 この地方で一番大きな町とはいっても、やはり田舎町なので余所から来る人間は少なく、たとえ変人部隊であろうとお客に変わりなかったから、それがショーンのような若いハンサムとなれば目の色が変わるのも当然といえば当然で。 「よりどりみどりだな、おまえ」 と、ショーンを案内してきた同僚が羨ましがる。 彼女たちにとって、彼等も大事なお得意さまに変わりはないから粗雑に扱うことはないが、どうしても好みの男の方に気がいくのは仕方のないことだった。 ショーンは、同僚の嫉妬の目を気にすることなく、通りに立つ女たちの中でひときわ美しい女に声をかけた。 すると、彼等は一様にやられたという顔になった。 他の女たちも悪くはないのだが、ショーンの選んだ女は特別で、こんな田舎には信じられないほどの美女だったのだ。 ただ、この美女は気まぐれで、めったに通りに出ることはないので、男たちの間では幻のビーナスと呼ばれていた。 めったにお目にかかれない女に、初めてやってきた若造が出会い、そしてものにしたのだから、彼等が面白くないのは当然だ。 よかったか?と基地への帰り道に一人がやっかみ気分で問うと、ショーンは、そりゃあもう!とにやけたので、彼等はさらにむかついてしまった。 本気で一発殴ってやろうかとも彼等は思ったが、この男が見かけによらず腕っ節が強いことを知っているので、それは思い留まった。 基地のコンピューター室で勤務する彼等なので、ショーン・アクセルという男の経歴はとうに承知している。 彼等の関心を特に引いたのは、男がコンピューターの扱いにかけては天才的で、しかも少年の頃に軍のコンピューターにハックしウイルスまでばらまいたという前科持ちであり、その上身元を偽って一時期入隊していた上官の顎を砕いて除隊になったという経歴だった。 調べてみると、ショーンは学生の頃ボクシングでメダルを取っていた。 天は、この男に二物も三物も与えていたというわけだ。 ショーンたちが基地に戻った時、二人の新顔がやってきていた。 着くのは翌日の昼だと聞いていたが、どうやら早く着いたらしい。 戻ってすぐに呼び出しを受けたショーン達は、もしかしたら、この変人部隊の中でも最も奇妙なもの達ではないかと思える二人を紹介された。 この基地の責任者である男が紹介した二人は、どう見ても十代の子供にしか見えなかった。 もしかしなくても、この基地の最年少となる二人だ。 年齢は同じだというが、片方はえらく幼く見えた。 華奢な体型からそう見えたのかもしれないが。 といって、もう一方の少年が逞しいというわけでもない。 白い中国服を着た漆黒の髪の少年は、彼等が知る同じ年代の少年に比べても細い身体つきだ。 その少年が、武術教官として赴任してきたというのだから驚きだった。 そして、シャツとジーンズというこっちはごく普通の服装のもう一人は、もう比べるのも問題外だと思えるほど造りが華奢だ。 やはり東洋系なのだろうが、混血しているのか髪はダークブラウンで、瞳の色は引き込まれてしまいそうな蒼であった。 すげえ・・・と誰かの口から感嘆の呟きが漏れたが、それはそこにいた全員の感想であったろう。 そして、その美少女の専門が情報処理であると知ったショーンは、勿論大喜びだ。 あの類いまれとも思える美少女とこれから一緒に仕事ができるなら、もうグチなどこぼすこともない。 (お〜!まんざら悪い所じゃねえじゃん!) あの女、レデイ・アンに殆ど脅迫に近い依頼でこんな田舎までやってきたが、さきほど抱いた美女や、そして同僚となる美少女に出会えたことでショーンはしごく上機嫌になった。
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