「やっぱ、夢・・・かなぁ」 さっきは自分でも驚くほど取り乱してしまったけど、散々考えた挙句これは夢だと決めた。 なぜなら。 @俺は確かにプレゼントを持って出かけたはずだ。 A事故に遭った合ったような気がするが、服が血で汚れているわけでもない・・・擦り傷もない。 B運良く血が出なかったということも考えられるが、打撲くらいは負っているはずだ・・・だが、痛い所などない。 C現実世界にこんなところが存在するはずはないし、なんかこう・・・隔離された世界って感じがする。 などなど、考えたからだ。 「ん〜〜〜やっぱ、夢だ。そうに違いない!」 腕を組んでうんうんと、一人頷く。 「は〜、今何時なんだろ。さっさと目を覚まさないとヤバイよなぁ。それにしても、夢の中で、今自分は夢を見ているって自覚があるのも珍しいよ〜」 「夢ではありませんよ」 「うっわ〜〜〜〜っ!!」 背後から急に声。 これが怪盗の姿だったらさぞかしマヌケだろうという悲鳴を上げて、俺はへたり込んだ。 ああ夢でよかった・・・これが現実だったら、俺はとっくに死んでるか刑務所行きだ。 「驚かせてしまいましたか?」 「・・・まあね。それで?あんた誰?」 夢というのは本人の隠された願望を現すこともあるけど、通常は記憶の反芻・整理を行うところだ。 だから夢に出てきたということは・・・。 ・・・こんなおっさんとどこかで会ったことあったっけ?? 記憶を遡ってみても、目の前のおっさんに心当たりはない。 「すみません、どちら様?」 にこにこしているおっさんに取り合えず尋ねる。 「私はここの責任者です」 「・・・責任者?」 「あなたを迎えに来ました」 「迎えに来た?」 訳がわからず、鸚鵡返しに繰り返す。 「ええ。迎えに来ました、あなたを」 なんだぁ〜??このおっさん、頭は大丈夫か?・・・キッドの正体はばれてないし、俺はあんたなんか知らねーぞ?? いや、もしかして寺井ちゃんの知り合いとか・・・でもなぁ街中だったらわかるけど、これは無理だよなぁ。 幾ら俺が天才でも、話を聞いたことも合ったこともない奴の顔を想像はできない。 ・・・にしても、俺って想像力に乏しいんだろうか。 おっさんが身に纏っている衣装は白一色で、インドの女性が着るサリーに似てる。 「・・・あなたは、ここがどこだかわかっていますか?」 「どこって・・・」 俺の夢・・・じゃねーの? 「ここは休息の国と呼ばれています」 「――休息の国?」 「そうです。天の国へ旅立つ人々のための、休息の国なのです」 おっさんはゆっくりと、相変わらず落ちついた調子で続けた。 「そして、あなたを天の国まで案内するのが、私の仕事です」 う〜〜〜おっさんの言ってることがわからねぇ〜〜〜っ!冗談言ってるようには見えないけど、俺には到底理解できない。 ・・・そういやぁ、ちょっと前にやったゲームにこーいうのがあったような・・・? 「意味がよくわからないようですね」 ぼ―っとしている俺を見て、おっさんはすぐさまそう言った。 「それに、あなたは自分がどうなっているのかも、まだわかっていないようです」 「――え?」 おっさんは俺のすぐ前まで来て立ち止まった。 「ここは天の国・・・すなわち、天国行きの船を待つ人々の待合の場所です」 ――な・・んだって・・・? 「・・・天国・・・?」 声が震えているのが自分でもわかるけど、止められない。 「そうです。あなたもじきに旅立つのです」 「――じゃ、――じゃあ俺は――」 おっさんはやっぱり笑みを浮かべたまま、静かに言った。 「ええ・・・あなたはもう死んでいるのです――」
高藤さまから頂いた地雷小説2作めです。 |