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<第八話>






身体中あますところなくキスされ、おれも崎山の身体中にキスをした。
与え、与え合う。
どちらかだけが満足しても、満足しなくても、セックスは成立しないのだと知った。
自分の感じる部分を知ってもらいたい、そしてソコを愛してもらいたいと思う気持ちは、何の抵抗もなくおれに甘い声を上げさせたし、ずっと受ける側だったという崎山も、おれのつたない愛撫に素直に反応して、自分の好きな部分を教えてくれた。
セックスというより、じゃれあい・・・のようなものかもしれないけれど、おれたちにはそれが合っているようだった。
しかし、まがりなりともセックスの経験のある崎山とは違い、初めて他人の手によって愛撫を受けるおれの下半身は、思いとは裏腹にあっけなく崎山の手の中ではじけてしまった。
本当は口淫を受けているときにたまらなくなったのだけれど、最初からいくら恋人とはいえ口の中に出すのには抵抗があったから、おれは涙を浮かべて懇願した。
その涙はキモチよすぎるあまりに滲んできたものだったけれど、崎山もこれ以上変なケンカをしたくなかったのか、それともおれが可哀想になったのか、あっさり口から解放して、手淫に変えてくれた。
同じようにおれも頑張ったのだが、最後まで導くのは無理で・・・
「友樹の中でイキたい」
その言葉を聞いてとうとう来たかと覚悟を決めた。
もちろん受け入れる覚悟はできていた。
だから、あの時も風呂でキレイにすることにこだわったのだから。
でも、ずっと受けるほうだったと聞かされてから、おれを抱きたいと言ってはいるものの一向に後ろを慣らす行為を始めない崎山に、いらだたしくもあり安心もしていたのだ。
与えられるだけのものから始まった行為が、いつの間にかお互いがお互いを高めあう行為となっていたから、どちらが挿れてどちらが挿れられるとかそういう感覚が薄れていたのも事実だ。
けど、やはりひとつに溶け合うためには、受ける側は必要であるわけで・・・
こここまできたらひとつになりたい。
それに・・・身体の中で崎山を受け入れたい、感じたいキモチは確かにあった。
どうしてそんな気持ちになるのか、自分でも理解できなかったけれども。
「いいよ・・・?でも痛くしないでくれよな?」
最初は痛みも伴うだろうけど、やっぱりそれは最小限に止めて、ゆっくり感じ合いたかったから。
「当たり前やん・・・それがどんなに身体に負担なことかってものわかってる。それでもおれは友樹と繋がりたい。友樹の中を感じたい・・・」
その言葉だけで、身体が熱くなりそうだった。
おれは目を閉じ、崎山を受け入れる自分を想像した。
「足開いて・・・?」
催眠術にかかったように、素直に身体が動いてゆく。
冷たい何かを、自分でも見たこともない場所に感じて、咄嗟に足を閉じてしまう。
―――うっ・・・やっぱり恥ずかしい・・・・・・
「大丈夫。ジェルやさかい・・・ちょっとガマンやで?」
足元のほうで声がして、閉じた足を広げられた。
自分でも知らないあんな場所を崎山に見られているかと思うと、たまらなく恥ずかしい。
それに、あの綺麗で器用な指が、おれの身体の中に入っているのを想像すると、いたたまれなくなる。
「んんんっ・・・」
異物感に、くぐもった声が漏れる。どうしても神経が、意識がそこに集中してしまうのだ。
「痛い?」
「痛くないけ・・・キモチ悪い・・・」
気持ち悪いなんて失礼かと思ったのは一瞬で、勝手に思ったことが口からこぼれる。
「んっ・・・もうイヤっ・・・もういい・・・」
これは本心だった。
よく言う、キモチよすぎてイヤなんじゃなく、本当に気持ち悪かった。
おれの粘膜と崎山の指に擦られてジェルがたてるくちゅくちゅというなんとも卑猥な音が、この見慣れた部屋をさらに淫靡な世界に色づけてゆく。
「友樹・・・スゴイ好き・・・どうしようもないくらい好きや・・・だからもうちょっとガマンしてな?」
そう言うと、太腿の皮膚の薄い部分にキスをしてくる。
すると、きっとそこもおれの弱い場所だったのだろう、気がまぎれてきた。
それどころか、そんな場所にまで施されるキスに、感じてしまう自分がいる。
「ん・・・・・・」
さっきまでとは違う艶めいた声に安心したのか、中で蠢く指の動きが少し大胆になったように思った。
ほんの少し下半身を捩ったとき、探られていた指が違う場所に当たった。
「ああっ・・・」
なに?今のなんだ・・・?
背筋がぞくぞくし、元気のなくなっていた前が勢いを増しそうな予感。
「ココ友樹のイイところなんやな・・・」
その言葉と同時に、指がその場所を擦り上げる。
「あっ、やっ、ダメだっ、・・・」
今度のイヤは・・・おかしくなりそうなイヤだ。
そこを押されたり擦られるたびに、勝手に声が上がる。
もちろんその声は、色を含んだ声だ。
血の巡りが早くなり、何がなんだかわからなくなる。
キモチイイ・・・それだけだった。










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