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「優・・・?」
優は、大きく息を吸ってゆっくり吐きだした。
「友樹と崎山さんがギクシャクしたら・・・ぼくと先輩の関係もおかしくなりそうで恐かったんだ。だから黙ってた・・・・」
さらに続ける。
「ぼくと先輩の関係はとても不確かなものでいつ終わりが来てもおかしくなかったから。先輩の親友である崎山さんとぼくの親友である友樹の関係が壊れるのが恐かった。もう四人で連れ立って遊ぶことが出来なくなるなんて考えたくなかったんだ・・・」
「優・・・」
おれは名前を呼ぶことしかできなかった。こんな時の優には慰めの言葉なんて意味をなさないから。
「ごめんね。友樹にはたくさんたくさん助けてもらったのに・・・ぼくは自分のことしか考えてなくて・・・・・・」
おれは腹を立てるべきなんだろうか。散々協力させておいて、おれのことは放ったらかしかよって怒るべきなんだろうか。
それでも全然怒りなんて湧いてこない。



だっておれとあいつは約束したんだ。ふたりを幸せへと導くことを。
それがおれたちふたりの関係の始まりだったから・・・



「それでよかったんだよ、優。あの頃はおれもあいつも優たちをくっつけることに必死だったんだから。それに、優におれの気持ちバレちまったから、これからはいろいろ相談に乗ってもらうし!」
「友樹・・・」
「だからっ、泣くなって!先輩が帰ってきたら大変だぞ?優を泣かしたのかっておれが怒られるんだからさ。あの人、優のことに関しては容赦ないからさ!」
ほれ、餃子包まないと時間なくなるぞって、手を動かすことを促した。
優もティッシュで涙を拭いて、再び包み始めた。
「なぁ優・・・」
ひとつ気になることがあったおれは、優に呼びかける。
「今まで気付かないフリをしてくれていたのに、どうしておれに告白したんだ?気付いてるよって・・・」
優は一瞬考え込んだようだったが、おもむろに口を開いた。
「あのさ・・・先輩とこういう風になって、愛し愛されることがすごく素敵で幸せなことだって知ることができた。だから友樹にもそれを知って欲しいし、その相手が崎山さんだったらいいなって思うし、そのためだったらぼくは何だって協力しようと思ったから」
人を愛し愛されることは、こんなに人を変えるものなのだろうか。いつもおれに相談ばかりしていた優はそこにはいなくて、そのかわりにとても堂々とした、こっちが圧倒されそうな何かを持つ優がそこにいた。
そんな優が頼もしくて、おれは・・・心を奥に潜んでいる不安を口にしてみる。
「でもさ・・・おれはあいつを好きだけれど、あいつは何とも思ってないだろうし!あいつの好みはカワイイ系だろ?おれと正反対じゃん。つうかその前におれオトコだし」
「あっ、それは大丈夫」
「大丈夫って・・・?」
「崎山さんは、その・・・オトコの人OKなんだって。むしろオトコの人のほうがいいみたい」
「そ、そうなのか?」
それは寝耳に水だ!そんな話あっていいのか?
「うん。先輩が言ってた。案外友樹と合うかもな〜って。あっ、でも冗談で言ってたんだよ先輩は。絶対友樹の気持ちには気付いてないから!」
「そっか・・・・・・」
「だから、ぼくに出来ることは何でも言って?もっと頼ってくれていいから」
必死な優が可愛くて、おれはにこりと笑顔を向けた。
「サンキュ。頼りにしてるからさ、優」
その言葉に優も笑顔をかえしてくれた。
ガチャリと玄関のドアの開く音がして、おれたちはまだ山ほど残っている餃子のタネに視線を落として大笑いした。





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