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「崎山さんのバースデー13日だって。ちゃんと予定空けといてね」
優に念を押され、おれは仕方なさそうに頷く。我ながらうまい演技だ。
「それと・・・プレゼントだけど・・・どうする?三人で合同にする?」
その方がいいものが買えるしって呟く優の言葉におれは焦ったが、まさかおれはおれで用意するなんて口が裂けても言えるわけがなくて・・・
「お、おうそうだな!おれ、そういうのよくわかんないから、優と先輩に任せるわ」
あ〜おれって、ほんっと損な性格だよな・・・・・・
「そうなの?でも三人で選ぼうよ。その方が崎山さんも喜ぶよ!」
ならそうしようかな・・・その一言がでてこない。意識しすぎだってわかってるんだけどな。
「いいよ!おれ、そういうのわかんないから!行ってもいっしょだし・・・それより先輩とデートしてくればいいじゃん。で・え・と!」
デートのところを強調してやると、優は顔を真っ赤にした。こんなことで照れる優って・・・カワイイ!
おれとは正反対だよな、まるっきり・・・
そういえば、あいつ、優にコクったことあるんだっけな。
優はずっと前から三上先輩のことが好きだったから、もちろんフラれたわけだけど、今でもヤツの口ぐせは「優くんカワイイ」であり、一緒に出かけるとバカの一つ覚えのように連発して、先輩の冷たい視線を買っている。
やっぱりあいつも優みたいに可愛くて素直なのがタイプなんだろうな・・・
そう思うと胸がギュッとしめつけられるけれど、おれはどうしても優のように振舞えない。
今だってそうだ。自分で自分の首を絞めているのはわかってるんだけど。
「ねぇ友樹・・・?」
「な、何?」
じーっとおれを探るように見る優の視線に耐え切れず、おれは視線を空に泳がせた。
「友樹って・・・崎山さんのことどう思ってるの?」
「なななななんで?」
ヤバイ!思いっきり動揺しまくりだ!こんなんじゃ優に見透かされてしまう・・・つうかもう遅い?
「友樹はさ、ぼくが先輩に片思いを始めてからずっとそばにいてくれたよね。相談に乗ってくれたりそっとしといてくれたり。ぼくは友樹に救われたことがたくさんあるんだ、気持ちの面で」
「それは当たり前だろ?おれは優がとても大事なんだから」
「ぼくだって友樹が大事だよ。だから・・・ぼくは頼れる存在じゃないかも知れないけれど、友樹が苦しい時にはぼくを頼って欲しいなって思ってるから。それだけは覚えておいてね」
にっこり笑うと「また明日ね」って手を振って門の中へと消えていく背中を見送りながら、無理には聞かない優の優しさに感謝した。




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結局何度も優に誘われたけれど、プレゼントの件はふたりに任せることにした。そして先輩と優が選んだものは、外国製のエスプレッソマシンだった。以前ヤツが欲しいと漏らしていたのを先輩が覚えていたらしい。
そういえば、ヤツはスタバでもわけのわからない専門用語を並べたて難しいドリンクを注文している。
高価なものだが三人だと買えないほどでもないし、やはり本人が欲しいものをプレゼントするのがいちばんだ。あいつの驚く顔を思い浮かべると、ちょっとうれしくなった。
それにしても、一緒に買いに行くなんて言わなくてよかった。そんなこじゃれたものはこの街に売っているわけもなく、ふたりは福岡まで足を伸ばしたらしい。何を買ったのかを報告してくれる優は楽しそうだったから、きっと有意義なデートだったんだろう。
「友樹、明日なんだけどお昼過ぎに来てくれる?」
「でも夕方からだろ?」
野郎四人でのパーティーなんて食べて飲むくらいしかすることはない。よって夕方に優の家に集まることとなっていた。
「だって、料理しなくちゃいけないじゃん。手伝ってよ、友樹」
おれが結構料理好きだって知っているから、優も遠慮なくおれに手伝わせようとする。
まぁ、どうせヒマだしいいんだけどね。
「いいよ?もうメニューとか決まってるの?」
「うん。買い物も午前中に先輩と済ませておくから。友樹は二時ごろに来てくれる?」
笑顔で約束をかわし、おれたちは別れた。






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