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「友樹、崎山さんの誕生日って知ってる?」
「な、なんで?」
おれは、柄にもなく動揺してしまい、口ごもってしまった。
「以前に崎山さんふたご座だって聞いたからもうすぐかなぁって思って・・・」
もちろんヤツの誕生日くらい知っている。知っているけど、知っていることを優に知られたくなかった。
のんびり屋に見えるけど、他人のことに対してはひどく敏感な優だから、おれの気持ちまで読み取ってしまうかもしれない。
「聞いてどうすんの?」
「うん、6月って祝日もないし、梅雨でじめじめして湿っぽいから、お誕生会でもして、パッと盛り上がっちゃおうかな〜なんて思ったんだけど・・・」
ヤツの誕生会?それは是非実行して欲しいものだ。誕生会という名目があれば、堂々と祝えるしプレゼントも渡せるじゃんか!
「それ楽しそうじゃん?優、是非企画してくれよ!」
あくまで、そういうイベントが楽しそうだと伝える。ヤツの誕生会ではない、あくまでもイベントに賛成なんだと!
乗せるとイヤとは言えない優の性格につけこんで、おれはそのパーティーの約束を取り付けた。



となると・・・プレゼント探ししなきゃいけないな・・・・・・



おれはウキウキ気分で、家路へと急いだ。







*************





三上先輩の親友だという崎山を意識するようになったのは、ごくごく最近のことだ。
出会いは最悪だったけれど、あの頃想い合いながらもお互いの心を隠していた三上先輩と優をくっつけるための協力者として、おれたちの関係は始まった。
ヤツはことあるごとに、おれに協力させてふたりを刺激し、強制ではなくあくまでも自然にふたりの心を解きほぐし、とうとうふたりの想いを成就させることに成功した。もちろん、前提にあるのは先輩と優のお互いを愛するキモチであって、おれたちはそれの手助けというか、ほんの少しの後押しをしただけなんだけれど。
そんなこんなで四人で行動を共にすることが多かったおれたちは、必然的に先輩と優、ヤツとおれという二組に別れることとなる。ヤツはおれのことどう思っているのか知らないが、少し乱暴な関西弁と、その中に含まれる優しさに気付き始めた時から、おれはどんどんヤツを意識するようになった。
ふたりの恋が実を結び、協力者として始まったヤツとの関係もこれで終わりかと思うと、何だかとても寂しくて、もうあのキツイ関西弁で茶化されることもなくなるのかと思うととても悲しくて、このキモチのやり場に困って・・・
もしかして、おれは先輩と優の同性同士の恋に賛成はしていたけれど、それはやっぱり他人事で、まさか自分に降りかかるなんて思っていなくて、どこか心の奥底では、そんなものうまくいくもんじゃないって思っていたのかも知れない。
今だって、自分の気持ちがわからないままだ。
ただわかっているのは・・・ヤツといると楽しくて、ヤツといると苦しい。
そして、ヤツの誕生日を祝いたくて、ヤツにおめでとうとプレゼントを渡したい。
それだけは、正直な気持ちだった。






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