大切なものは・・・



<4>




片岡が・・・見合い・・・?
おれは、あいつの家がどんなんだか知らない。
つうか、あいつのこと何にも知らない。
あいつはおれのこと何でも知ってるのに・・・・・・
今回のおれの心の揺れの原因もそんなところにあったのかも知れない。
おれは、いつだって片岡と対等でいたかった。
そりゃおれのほうがかなり年下だけれど、おれなりにいろんな経験をしてきたという自負もあるし、そんじょそこらのことでへこたれない根性だって持っている。
片岡はオトナだけれど、それに負けたくなかった。
いつだって片岡はおれに甘えろという。
おれの前では虚勢を張るなという。
その分おれだって片岡を癒してやりたいと思う。
なのに、やっぱり片岡はいつだって余裕をかましていて・・・・・・
そして、思う。
おれと片岡の好き度を比較したならば、おれの方が断然多いんじゃないかって・・・・・・
セックスするようになって、どんどん好きになって、片岡はおれにとって安心できる場所であると同時に、ドキドキさせる場所でもある。
マンションで向かい合ってすわっている時も、車の中で肩を並べて座っているときも、安らぎとともに片岡の存在を意識しまくっているおれがいる。
キスしてくれるんじゃないか、抱きしめてくれるんじゃないか・・・
なのに、あいつは、まるでおれを空気みたいに思っているのだろうか。
いつだって余裕綽綽だ。
あのときだってそう。
おれが話しかけているのに無視し、ゲームに夢中になっていた。
バイトを早く切り上げてもらって、一緒にいる時間を作っているおれを何とも思っていないのだろうか?
おれは・・・ほんの少しでも時間を共有できて、うれしいのに・・・・・・
あの時、ドキドキする自分が馬鹿らしくなった。
自分ばっかり好きなんじゃないかって、イラついた。
帰ると言ったおれに、チュウもしてないのに帰るのかと吐いた片岡に、余計に腹が立った。
おれは、人形か?
ダッチワイフと一緒か?
ただの性欲処理のために付き合ってるのか?
そんなことは思いたくないし、心から思っているわけでもない。
好きだ、愛してるとおれに言ってくれる言葉は、真実だと思う。
けど、それでも、おれの想いのほうが大きそうで・・・・・・なんかイヤだった。
そして、おれは、あいつのことを何にも知らない。
あいつだっておれに話そうとしない。
おれが知っているのは・・・私立の高校教師にしては豪華すぎるマンションに住んでいるということだけ。
しかも学生時代から・・・・・・
そうか・・・片岡の家は、由緒ある家柄なんだ。
おれん家みたいに、貧乏子沢山じゃないんだ・・・・・・
おれは悲しかった。
その事実を、片岡本人から聞けなかったことが。
見合いか・・・それもいいかもしれないな・・・・・・
片岡の家にも、おれの家にも、そして片岡自身にも、そのほうがいいかもしれない・・・・・・
そして、今ならまだ、傷は浅くてすむだろう。そう思った。

                                                                       





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