蒼い夜






<4>








成瀬の顎を掴み顔だけ振り向かせると、くちびるを重ねた。
いつもより荒々しいくちづけに、一瞬成瀬が怯んだようだったが、くちびるを割り執拗に舌を絡ませれば、成瀬もおれの動きに合わせてきた。
無理な体勢では上手に雫を飲み込むことができず、何度も角度を変えて貪れば貪るほど水音が激しくなり、それがさらに欲望を突き動かす。
息継ぎのためにくちびるを離してもすぐに求め合い、夢中になった。
もともとおれも成瀬も、この行為が嫌いではなく、むしろ愛情の表現として頻繁にくちづけあう。
「・・・・・・んっ、ぅん・・・・・・」
時折漏れる成瀬の鼻にかかった声は艶を含んでいて、ますますおれの行為をエスカレートさせた。
カッターシャツの裾をズボンから引き出し、手を差し入れれば、少し汗ばんだ肌がおれの掌にまとわりつく。
「ち、ちょっと、ちょっと待って―――ッン・・・・・・」
おれの不埒な手の動きを感じて現実に返りかけた成瀬にさらに深いくちづけを落とした。
最初は抵抗しても、セックスに関しては好奇心旺盛な方だし快楽にも弱い方だから、すぐにくちづけに集中する。
背後から拘束するように抱きしめたまま、指先を肌に這わせて目的の肉粒を見つけると、キュッとつまんでやった。
腕の中で成瀬の身体がビクリと跳ねるのに気をよくして、おれはそれを指先でつまんでは引っ掻いた。
「こんなとこでっ、やめろって・・・」
本当にやめて欲しかったらおれの拘束なんてすぐに解けるだろう。
成瀬はそれなりに男子高校生の体格をしているし、何かに縛られているわけでもないのだから。
「やめろって言ったって、結構カラダは喜んでると思うんだが?」
片手を下ろしてゆき、ズボン越しにおそらく反応しているであろう場所に触れてみる。
案の定、そこは硬くなり、布地を押し上げていた。
「あんたが触るからだろ?」
「おまえが触って欲しそうだったからだろ?」
「んなことっ・・・・・・」
「直にさわってやるから」
ベルトに手をかけると、金属音がカチャカチャと静かな部屋にこだました。ジッパーを下ろすツーッという小さな音まで聞こえそうな静けさ。
手をスルリと滑り込ませると、そこは先走りの滴ですでに濡れていた。
「後で困るから。ほら、尻上げて」
困るのは自分だと理解しているのだろう。成瀬は素直に尻を上げるとズボンを脱がすのに協力した。
背中から抱き込んだまま、すっかり濡れそぼった雄をゆっくり扱いてやる。
表情は見えないが、どんどん大きくなるチュクチュクといういやらしい音と手の滑り具合が、成瀬の快感の度合いを教えてくれた。
「あんたっ、ここ・・・どこか、わかってる・・・?」
「学校」
「そんな、あっさり―――」
「学校だろうとどこだろうとふたりっきりなんだからかまやしない」
常に一目を気にしないといけない恋。
だからこそ、ふたりっきりの時には遠慮なんてしたくない。
それがどこであろうとも。
そう、今、この刹那、ここにはおれと成瀬、ふたりしかいない。
「それに、おれが真面目な教師じゃないってこと、おまえが一番わかってんだろ?」
教え子に恋をして、告白して、強引と言われても仕方ない方法で、手に入れたこの恋。
嘘をつかせて旅行に誘い、身体を繋げたあの夜。
悪い大人だという自覚はある。
教師失格だと罵られても言い訳できない。
いつ終わりが来るとも知れない危うい関係だから、ふたりっきりの時間を大切にしたい。
「ふたりっきりの時は容赦しない・・・」
耳朶を食みながら耳元でそう囁くと、成瀬は黙り込み、おれに身体を預けてきた。
カッターシャツの下でプツリと膨れ上がった胸の肉粒と、夜の空気に晒された雄を一緒に愛撫してやると、ビクビクっと身体を震わせる。
「ンッ――――」
口元に手の甲を押し付け、声を漏らすまいと歯を食いしばる成瀬の腕をそこから離すと、胸をいじっていた指先でくちびるをなぞり、そのまま口内に差し込んだ。
「はぁっ・・・うっ・・・んん・・・・・・」
おれの意図がわかっているのかは疑問だが、指で口の中をかき回せば、その指を追ってくるかのように、成瀬の熱い舌が絡んでくる。
身体を開いて性器を愛撫され、指をしゃぶっている成瀬の姿を想像して、おれは呟いた。
「おまえのやらしい姿が見れないのが残念だ」
「このっ、エロ変態教師!」
指を含んだままだから、はっきり発音できてないのがかわいい。 
「エロ教師に変態までついたか・・・なかなか素敵なネーミングだ。でもおまえだって結構ノリノリじゃないか」
「んなわけ―――」
「あるだろ?ここをこんなにして、言い訳できると思ってるのか?」
「やっ・・・・・・」
くびれをグルリと指先で抉り、先端をクリッと刺激してやれば、成瀬は身体をしならせ甘い声を上げた。
そのまま椅子から腰を上げ成瀬を立たせると、窓側の手すりに手をつかせた。







                                                                       





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