christmas serenade

甘い夜







第五話






「隆弘さん・・・・・・?」
消え入りそうな声で名前を呼ばれ、隆弘は少しキツイ口調になったことを反省した。
別に凛に腹をたてているわけではないのだ。
あまりに凛が欲望に素直で、隆弘よりも先をいっているように思えて焦ってしまったのだ。
この手で凛をキモチよくさせたい。
誰にも触らせたくない。
それが凛自身の手でであったとしても。
最初がいけなかったのかもしれない。
遊び心で、凛に自分で胸を弄らせたのは隆弘なのだ。
恥ずかしがる凛を見てみたいと、そんな不埒なキモチが隆弘にそうさせたのだが、あれで凛の箍が外れたようだ。
初めての経験を素直に受け入れ快楽を追い求める凛に、置いていかれるような焦燥感を感じて、さらに凛を煽るような言葉を並べ立てて・・・・・・
隆弘はギュッと凛を抱きしめた。
凛の身体に回した手が凛の心音を捉え、その音が凛の気持ちを代弁しているようにドクドク早鳴っていた。
「触ってっていったのは凛だろ?ならおれに任せておけよ」
「で、でも・・・・・・」
「隅から隅まで触ってやるって約束したろ?おれは凛に挿れたい、凛の中でキモチよくなりたい。だからおれがちゃんと準備してやるから」
「だ、だけどっ、あ、あんな―――」
「なら聞くけど、凛はおれのケツの穴なんか汚くて触れないか?」
凛が大きく首を横に振った。
「それと一緒。凛がおれに見せたくないのなら別だけどな」
「そんなことっ・・・・・・」
そのまま黙り込んでしまった凛を抱きしめたまま、隆弘はベッドのヘッドボードに凭れかかった。
時間はたっぷりあるのだ。急がなくてもいい。
お互い納得がいくまでゆっくり待てばいい。こうして抱き合っているだけの時間も貴重なスキンシップだ。
「お、おれ、どうすればいいかな?」
凛が遠慮がちに口を開いた。
「た、隆弘さんの言うとおりにするから。おれ、どうすればいい?どうすれば隆弘さんやりやすい?」
問いかける口調はとても真剣で一途なのに、その内容はかなり過激だ。
そのギャップが隆弘には楽しく、凛がセックスという行為に積極的なことが嬉しい。
隆弘が凛を欲しがっているように、凛も隆弘を欲しがってくれている。
その事実を改めて感じて、隆弘は凛への愛しさを再確認したのだった。
「それじゃ、四つんばいになって、おれのように尻を向けて」
仰向けで足を大きく開かせる体勢も考えたのだが、どこかの本で後ろから慣らすのが無理がなくていいと読んだのを思い出したのだ。
恥ずかしい体勢に凛は一瞬息を呑んだが、従来の素直な性格が幸いしてか、そろそろと身体を動かし始めた。
「おれの身体をまたぐようにして・・・そうそう、もう少し腰を落として尻を上げてごらん?」
凛は隆弘の言うとおりに隆弘の身体の上で姿勢を変えた。シックスナインのような体勢だが、今日は凛にこの形での愛撫を望むことはしない。
目に飛び込んできた凛の小ぶりな尻は、白くてかわいらしい丸みを帯びていた。
手を伸ばして尻たぶに触れると、ぴくりと凛の身体が震えたのがわかった。
隆弘にすべてをさらけ出す無防備な凛。隆弘を信じてくれている証拠だ。
キスしたい衝動にかられ、そっと左右の丸みにくちびるを寄せた。
「た、隆弘さんっ」
「凛、すごくかわいい・・・・・・」
尻がかわいく思えた上にキスするなんて、ちょっと変態じみてないか、なんて考えが頭の片隅に浮かんだけれど、こんな欲求を覚えたのは初めてで、おそらく相手が凛だからだろうと納得させる。
隆弘は凛が用意したラブローションを手に取ると、凛の背中、腰の下のあたりに垂らした。
「ひやっ・・・」
突然の冷たい感触に驚いた凛が声を上げる。
「じゃ、慣らしてくから。痛かったらちゃんと教えるんだぞ?」
凛が頷くのを見届けて、隆弘は左手で谷間をそっと割り広げると、垂らしたローションを指先に絡めて肌を伝わせた。
小さな蕾は慎ましやかに閉じていて、まるで隆弘を待っているかのようだ。
「隆弘さ・・・そんな、見ないで・・・・・・」
視線を感じるのか凛が泣きそうな声で訴えるが、はいそうですか、と止める気はさらさらない。
「どうして?凛はこんなところも可愛いんだな」
「いやだ、も・・・・・・」
ローションを絡めた指先でそっと蕾を撫でてみると、凛の身体が羞恥のためか赤みを増したように思えた。
少しローションを足して、隆弘は指先をゆっくり蕾に差し入れた。
「アッ・・・・・・」
ツプリと第一関節まで飲み込んだ蕾の中は、女性経験豊富な隆弘の想像以上に暖かい。
何よりも驚いたのはかなりの締め付けだった。
指一本でこの状態では、隆弘を飲み込むには相当慣らして柔らかくする必要がある。
「きついな・・・・・・」
独り言のようにつぶやいた隆弘の声に、凛の身体がびくっと反応した。
「ごめんなさい」
「凛・・・?」
「おれ、結構頑張って練習したつもりだったんだけど・・・」
そういえば、さっき、自分で準備できるとか何とか言っていたな、と隆弘は記憶を辿る。
「凛、練習・・・してたのか?」
「だ、だって、隆弘さん、こんなとこ触るの嫌かなって思ってたから」
顔をシーツに埋めたまま、不安そうな声音で自分の気持ちを伝える凛。
「だけどっ!」
凛はゆっくりと首だけ振り返ると、隆弘に微笑みかける。
「隆弘さんとひとつになりたいから。隆弘さんに触ってもらえて嬉しいから。面倒かもしれないけど・・・全部して欲しい」
凛ははっきりとそう言った。
語尾は消えるような声になってしまっていたけれども。
その言葉は隆弘の下半身を直撃した。
それでなくとも、凛に触れているだけでかなりヤバイことになっているというのに。
「凛は・・・おれを煽ってるのか・・・?」
「そ、そんなこと―――」
「今のはかなりキた。凛覚悟しとけよ?」














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