Aqua Noise







その10






「ンッ・・・・・・」
幾度となく抱き合ったが、凛に口で奉仕させたことはほとんどない。
そんなことをさせなくても凛に触れているだけで隆弘のものは十分な大きさに勃起するし、隆弘自身も凛の身体を愛撫するのが楽しかった。
どこに触れても身体を震わせ声を上げる凛の艶めいた姿は、何にもまして隆弘を悦ばせるのだ。
凛はされてばかりの愛撫に時折不満そうな表情を浮かべたけれども、すぐに隆弘の愛撫に溺れた。
だからだろうか。
いつもより急激にこみあげてくる快感に、隆弘は息をつめた。
目を閉じると全神経が集中してしまいそうだ。
隆弘の足の間に顔を埋めて懸命に頭を動かす凛に目を眇める。
ぎこちない舌遣いに愛しさがこみあげ、隆弘は手を伸ばすと髪の生え際を指先で優しく撫でる。
「凛、上手だ・・・とても気持ちいいよ」
らしくなく声が上擦っている隆弘に、凛が咥えたまま視線を上げる。
(うわっ、エロっ!!!)
唾液で濡れた赤いくちびるから出ているグロテスクなものは、まぎれもなく自分のものだ。
慣れない行為はやはり苦しいのだろう、目元に少し涙をにじませる凛をかわいそうだと思いながらも、嗜虐的な気持ちが見え隠れして、やめろと言えない。
むしろもっともっと凛を感じたくなる。
「舌先で先のほうをを・・・そうそう・・・あと、裏側のほう」
隆弘が指示をするとすぐく対応してくれる。
尖らせた舌先で敏感な部分を擦られると、小さな波が身体を走り抜ける。
本来ならそろそろ凛にやめさせて、今度は隆弘が凛を可愛がり、そして最後を一緒に迎えるのだが、凛にも隆弘にも仕事がある。
ましてや立ち仕事である凛の身体に負担をかけることはできない。
「凛、もういいから」
ポンポンと背中を叩き合図しても、凛は首を横に振って、隆弘を離そうとしない。
「凛、もう・・・そろそろおれも限界だから」
少し強引に身体を離すと、凛もやっと顔を上げた。
「隆弘さん・・・好き・・・・・・」
そう呟くとすばやく履いていたパンツを下着ごと脱ぎ捨てて、隆弘の膝に跨ってくる。
またもや予想外の凛の行動に隆弘は一瞬唖然として、そして慌てた。
「凛、無理だって!おまえ、慣らしてもない―――」
「大丈夫だから・・・おれ、いますぐに隆弘さんが欲しい・・・・・・」
隆弘への奉仕だけで濡らしていたのだろうか。
凛は自分自身に浮かんだ先走りに触れると後ろにそれを塗りつけ、すっかり勃ち上がった隆弘を後ろ手で支えると、ゆっくりと腰を下ろしてゆく。
「凛、やめろっ、おまえ、こんなっ・・」
先端が覚えのある粘膜に触れ、ゆっくりと包み込まれてゆく。
「ンっ、う、あっ、アッ・・・・・・」
ギュッと眉間にシワを寄せて、遠慮がちに凛がうめく。
「・・・っ、・・・・・・」
恐ろしく狭い場所を押し広げてゆく感覚。
経験したことのない締め付けに、隆弘も眉を寄せた。
初めての時にだってこんなに狭くはなかった。あの時は時間をかけて丹念に解して柔らかくして受け入れ態勢を整えた。
「たかひろ、さ・・・・・・」
隆弘に向かって伸ばされた凛の指先を絡めとる。
ギュッと握り合うと、凛は小さな笑みを浮かべ、大きく息を吸うと、ゆっくり吐いた。
呼吸に合わせてじりじりと隆弘を飲み込み、ついに隆弘の太股に、全体重を乗せるに至る。
「入った・・・・・・?」
「あぁ、よく頑張ったな、凛」
目尻に浮かんだ涙を親指で掬い取り、頬を包み込む。
「今日は・・・キスもまだだったな」
顔を近づけると、凛は目を閉じた。
長い睫毛に見惚れながら、そっとくちづける。
落ち着かせるように、小さなキスを何度も何度も繰り返していると、タイミングを計って凛が目を開く。
下半身は繋がったまま、キスの時間が少しずつ長くなり、舌を絡めるほどに深くなるころには、凛の両腕が隆弘の首に回され、指先が髪をまさぐっていた。
そのまま凛が少し腰を動かす。
最初はゆっくりと、そして徐々に激しく。
「ヤ、あ、あっ、あっ・・・」
「凛、イイか・・・・・・?」
しがみ付いてくる凛を抱きしめながら、隆弘もその身体を突き上げる。
「ヤッ、たかひろさ、声、こえ、出ちゃ、・・・・・・」
古いアパートは壁が薄いことは隆弘も知っていた。
「ン―――」
喘ぎ声を飲み込むようなキスを凛にしかけると、隆弘は絶頂を目指して激しく凛を揺さぶった。













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