2周年&20万打記念
ふたり×2



        第四話









「こら、覗き見が趣味だったとは知らなかったな」
っくり口から手を離すと、成瀬はハーハーと静かに息を吐いた。

「な、なんだよ―――」
言い返す言葉をシーッと諭しながらも羽交い絞め状態の腕は解かない。
再び静まり返る廊下でふたりは息を殺した。
襖の向こうから聞こえるか細い声が一掃高まってゆく。
そっと後ろから覗き込んだ成瀬の表情は暗くて見て取れないが、腕の中の身体は熱く火照っていた。
「カラダ熱いぞ?興奮してるのか?」
からかい混じりの片岡の言葉に、成瀬は身をよじって片岡を睨み付けた。
「あ、あんたこそ、どこにいたんだよ!」
「どこって、おまえの隣りのベッドで寝てたんだが」
「てか、なんでおれがベッドに寝てるんだ?おれは優くんとこっちの和室で―――」
「和室で寝ていて、三上くんが忍んできても寝たふりで通すのか?」
「バ、バカ!おれがいたらセック・・・あんあなことするわけないだろう!」
セックス、と口にしかけて、慌てて言い直す成瀬に可愛さを覚えて、片岡は饒舌になる。もちろんヒソヒソ声でだが。
「いや、わからんぞ?三上くん、お前が優くんを構いすぎることに偉くご立腹だったからな。自分のものだってアピールするためにはそれくらいやりかねないぞ?」
成瀬もその意見に同意したのかグウと黙り込んでしまった。
(ほんとこいつは単純というかなんというか・・・)

「とりあえず引き上げるぞ」
片岡はそのまま成瀬をベッドルームへと引っ張り込んだ。
「ち、ちょっと、あ、あんた、何考えてる―――」
声を荒げる成瀬をシィーッと諭し、耳元で囁いた。
「おまえがかなり興奮してるようだから、鎮めてやろうと思って」
成瀬をベッドに押し倒すと、成瀬の浴衣の裾を割った。
下着の上からなぞれば、やはりそこは少しばかり硬くなっていた。
じたばた抵抗する足を、乗り上げた身体で固定して、片岡はそこにくちびるを寄せると、軽く甘噛みする。
ピクンとそこが反応し、成瀬の身体から力が抜けた。
「人のセックス覗き見してこんなにして。いやらしいヤツだな」
下着越しだから少しばかり強い愛撫でも大丈夫だろうと、いつもよりも強めに舌を押し当てなぞり、強く吸い付くと、すぐに芯がとおってくる。先端に歯を当てると、小さな吐息が頭上から聞こえた。
片岡の唾液と成瀬の滴で下着はすっかり湿り、その部分だけ色が変わってゆく。
最初はジタバタしていた成瀬も、元来快楽に流されやすい性質だからか、途中から片岡に身を任せていた。
「な・・・、も、もう・・・・・・」
快感の証なのか、股間に顔を埋める片岡の髪に絡まる成瀬の指先に力がこもり、もどかしいようにその髪をまさぐる。
「もう、なんだ?」
まるで成瀬の意図するところがわからないようにやんわり無視して、ひときわ強く先端の括れを舌先で辿ると、成瀬の内股がギュッと片岡の身体を挟み込んだ。
「ぬ、脱がしてほしっ・・・・・・」
「直にさわってほしいのか?」
(今日はかなり興奮してるようだ)

段の成瀬はもっと強気のセックスをしかけてくる。片岡の言葉責めにもなかなか屈しようとしないのだ。

しかしどうやら今夜はかなり高ぶっているようだ。
(初めて人のセックスを見て興奮してるのか)
それならそれでこちらも楽しませてもらおう。
いつもより反応の早い成瀬に気をよくした片岡は、成瀬の希望通り下着を取り払うと、滴をこぼしている成瀬の肉欲を口に含んだ。
「は、ぁ・・・ん・・・・・・」
ちらりと視線を上げると、唇をギュッと噛んで甘い声を我慢している表情が飛び込んできた。
片岡はすでに硬くなっているソコから唇を離すと、成瀬の髪に手を伸ばした。
「亮」
優しく髪を梳きながらその生え際にキスを落とすと、成瀬がゆっくりとまぶたを開いた。
もちろんその間も片方の手での手淫はやめることなく。
「あっちに聞こえないから。我慢するな」
「そ、そんなことわかんないだろ」
「あっちだって同じことやってるんだ。人のこと気にしてる余裕なんてあるはずないじゃないか」
「でも、もしバレたら・・・・・・」
「バカ。おれたちのこと、向こうにはすっかりバレてるぞ」
「う、うそっ」
「おれだって三上くんと優くんには最初に会ったときに気づいたし」
「ってことは・・・おれ、だけ・・・?」
「だから。今回だってちゃんと2部屋取っておいただろ?あっちがこのベッドルームを、おれたちは和室って予定だったんだ。優くんはセックスの後は朝までぐったりだっていうから和室を覗くなんてありえない。だからお互い刺激的な夜を過ごそうってことになってたのに、おまえは優くんと寝るとか言い出すし、せっかくこっちのベッドルームに引っ張ってきたのに、おれのことに気づかずにあっちの部屋覗きに行くし」
「人を覗き魔みたいに言うな!あれは成り行きで・・・」
「すっかり眠り込んだおれも悪かったんだけどな。ってわけで、あっちのことは全然気にする必要ないから」
「だから・・・なんだよ・・・・?」
「この夜を楽しもうってことだ。せっかくの旅行だから、な、亮」
耳元で名前を呼ぶと、成瀬が照れたような表情を見せる。
(こいつ、ほんと名前呼ばれることに弱いんだよな・・・でもそこがかわいいところだけど)
耳朶から頬へ、そして首筋へと唇を這わせれば、ねだるように成瀬が唇を寄せてくる。
すっかり馴染んだ体温を感じながら、舌を絡めてキスを交わすと、ますます体温が上昇した気がした。
かろうじで帯で合わさっているだけの浴衣を取り払い、片岡は自分の浴衣の放り投げた。
素肌を重ね、下半身を密着させると、すっかり勃起したふたりの肉欲がいやらしい弾力で擦れあう。
愛されるのを待っているささやかな尖りに舌を絡め、チュッと吸い上げる。
片岡の背中に回された成瀬の指先に力がこもるのが嬉しくて、片岡は執拗に胸へ口付けた。
「あ、あっ・・・、は・・・ぁ・・・・・・・」
ふたりぶんの透明の滴で濡れた指先を、いつも片岡を暖かく迎えてくれる身体の奥へと伸ばそうとしたとき。
「お、おれも、アンタの、舐めたい」
一方的に快感を受け入れさせるのを嫌う成瀬の言葉に、片岡は苦笑いしながら頷いた。
ベッドボードに背を預け足を投げ出すと、片岡がその間に蹲り、片岡の股間にくちびるを寄せた。
「う、ンッ・・・んぅ・・・・・・」
口に含む前からそれなりの大きさを硬度を保っていたものを、成瀬が大きな口を開けて咥え込む。
くちびるを窄めて扱きながら、舌を絡めて筋や括れを刺激するその舌技は、片岡が教えたものだ。
教えたといっても、レクチャーしたわけではなく、片岡が成瀬にいつもしてやるのを吸収したのだけれど。
「そう・・・上手になったな・・・」
咥え込んだその顔が見たくて、少し長めの髪を梳きながら、額に浮かんだ汗を指先で拭ってやる。そのまま頬に滑らせ、優しく指先を遊ばせた。
片岡はそろりと手を伸ばして、サイドテーブルに置かれた袋から潤滑剤を取り出すと、手のひらに溢し、体温で温めた後、蹲り懸命に奉仕する成瀬の後ろに指を伸ばした。
「ンッ・・・・・・」
予想外の衝撃に成瀬の動きが止まるが、おかまいなしに指を進めた。







 





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