Are you happy?


そのに





「―――んぱい・・?」



はっと我にかえる。



「もう、ぼーっとしちゃって・・・さっ、食べましょうよ!」



目の前には、まんまるのデコレーションケーキ。イチゴが敷きつめられている。そこに、20本のろうそく。
「火、つけましょうね」
マッチでろうそくに火を灯し、明かりを消そうとした。
「一気に消してくださいよ〜あっ、その前に、あの歌歌わなきゃね!」
優は立ち上がって、リビングに置かれたピアノの蓋を開けた。
「優・・・ピアノ・・・?」
「先輩が留守の時に練習したんですよ・・・?昔習ってたことあるから。それでは、三上直人の二十歳のお誕生日を祝って・・・」





  はぴばーすでーとぅゆー  はぴばーすでーとぅゆー
  はぴばーすでーでぃあなーおとー  はぴばーすでーとぅゆー






おれは、優がピアノを弾くのも、歌を歌うのも始めて見た。それは、とても澄んだ歌声だった。
「―――優、うまいじゃん!」
おれは、手のひらがしびれるくらい、拍手をした。
「間違えなくて、よかったです」
照れながら、明かりを落とし、おれの隣りに腰を下ろした。
「さっ、ろうそく消してください」
促されて、ふーっと一気に風を送った。
「おめでとう、先輩!」
暗闇の中、くちびるに柔らかいモノがふれた。ほんの一瞬だけ・・・





えっ?





考えるまもなく、明かりがつけられた。





今のって・・・優・・・?





隣りの優を見るけれど、何も変わりはない。優からキスなんてされたこともないし、もしそうだとしたら、優がこんな平常心でいられるわけはない・・・と思う。
「じゃあ、切りますね〜」
ケーキにナイフを入れ、小皿に取り分け、おれに渡す。
「結構、自信作なんです」

優が、そう言っただけのことはある。生クリームをふんだんに使っているわりに、イチゴの甘酸っぱさが効いていて、甘ったるくない。
「優、めちゃくちゃおいしい!」
おれが、感嘆の声をあげると、うれしそうに目を細めた。
さっき、あんなにたくさんの料理を食べたばかりなのに、甘いものは入るところが違うのか、どんどん胃袋の中に入っていく。
もくもくとフォークを口に運ぶおれを隣りで眺めていた優は、「あっ」と小さな声をあげた。





「先輩、クリームがついてる」
「えっ?どこ――」





何〜〜〜〜?





何と、優はおれのくちびるの端についていたクリームを、な、舐め取ったのだ!
ま、まさかっ、ゆ、優がこんなことを!
おれとしたことが、びっくりして固まってしまった。
「先輩、子どもみたい。かわいい〜」
ふふっと悪戯っぽく笑う優。
さらに、優はおれを驚かせた。
「先輩、イチゴ大好きですよね・・・?」
自分の口にイチゴを含んで、お、おれに、キ、キスをっ!
くちびるが合わさり、おれが迎え入れるように大きめに口を開くと、優が舌でイチゴを運んでくる。優のぬくもりで少し生暖かくなったイチゴ。
「どう?おいしい?」
んなもん、おいしいに決まってるじゃないか!
さ、さらに、優はとんでもないことを言ったのだ!





「じゃあ、次は、ぼくを食べる?」





こ、これは、優なのか?
おれの誕生日だから、サービスしているのか?
だけど、サービス過剰すぎだ!






「その前に、お風呂入らなくちゃね。一緒に入る?」





いいいい一緒に・・・?





今さら、照れることはない。もうすでに見ていないところはないくらい、おれは優の身体を知りつくしている。
なのに、一緒にお風呂・・・入りたい・・・お風呂でなんて、初めてのシチュエーションだ・・・・・・
しかし、今一緒にお風呂に入ったら、おれはたぶん抑えられない。優をヤリ殺してしまいかけない。



「先輩・・・顔が真っ赤だよ・・・?」



なに〜?ど、どうしたオレ!



「やっぱ、お風呂はゆっくりひとりがいいですよね?先輩、お先にどうぞ」
おれは、早々とお風呂から出てきた。優が消えてしまわないか心配で・・・
「あれ?早いですね。じゃあぼくも入ってきますけど・・・どこで食べますか?」
「はっ?」
まだ何か食べるのか・・・?
「先輩の部屋でする?ぼくの部屋でする?」
何てストレートな優!おれはすっかり優のペースにはまっている。
「―――おれの部屋で・・・」
「じゃあ、行きますから・・・・・・」
そう言って、バスルームに消えた。






                                                                       










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