ルヴァロワ技法  
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ルヴァロワ技法

 ルヴァロワ技法をよく理解するために、いくつかの記述と図面を借用してきました。これらを元に、分かり易くまとめてみようと思っています。しばらくお待ちください。

  世界史的にみて、前期、中期、後期に分かれる。前期は石核石器づくりが中心である。東アフリカからアジアにかけて分布する礫器(れっき)と、その発展として、アフリカからヨーロッパにわたる地域の握斧(にぎりおの)(ハンドアックス)がある。礫器は自然礫の一端を打ち欠いて刃にした道具である。刃のつくりだし方から、片面側だけ欠き取った片刃のもの(チョッパー)と両面に打ち分けた両刃のもの(チョッピングトゥール)がある。礫または部厚い剥片を用いて、全面にわたるように加工した石器がハンドアックスである。卵形または西洋梨形につくりあげた優美な作品があるが、いずれにしても、一つの石材から一つの石器がつくりだされている。
 中期には、石核の周辺を調整して似た剥片を剥ぎ取るルバロワ技法が生まれる。これはさらに高度な後期の石刃技法の基になる技術として評価できる。(後略)[松沢亜生]「日本大百科全書(ニッポニカ:「石器・旧石器時代」の項)」から

 前期旧石器時代から中期旧石器時代を中心に、ヨーロッパ、アジア、アフリカに広くみられる剥片(はくへん)製作技法。かつてはルヴァロワ文化がヨーロッパ、アフリカに広くみられると考えられていたが、ルヴァロワ文化というものは存在せず、アシュール文化、ムスティエ文化などのなかに解消してしまうことが明らかになり、種々の文化のなかに広くみられる技法がルヴァロワ技法として認められている。製作する剥片の形を想定し、注意深く調整された石核から、剥片を剥(は)がすのがルヴァロワ技法である。石核は亀甲(きっこう)形石核とよばれる。[藤本強]「日本大百科全書(ニッポニカ)」から

 その技法は、一方の手にもつ原石を、もう一方の手にもったハンマーで連続的に打ち欠き、それを数10回くり返した後、最後に薄い剥片を剥がしとる、という基本的な動作からなっている。そして、ネアンデルタールがイメージした剥片の形状には三つのタイプがあった。先端の尖った三角形の輪郭をもつポイント (Point)、ずんぐりした輪郭をもつフレーク (Flake)、細長の輪郭をもつブレード (Blade) である。剥片の先端部や側縁部がさらにこまかく加工、整形され、別タイプの石器(Side-scraper)へと作り替えられている例もある。同時に、薄片を剥がし取られた石核(Core)が混ざる。[赤沢威他]「堆積地層と石器」から

 ルヴァロワ方式は石器製作システムの大きな転換、すなわち一個の石塊から一種の石核石器を作ること から、一個の石核から多種の剥片石器を作り出すはるかに効率的かつ作業の特殊化を意図した技術である。 すでに 1893 年には E・ド・ムンクによって接合資料が図入りで注目され、1909 年に V・コモンが正確な 定義を行っていた。ルヴァロワ方式に関しては長らくフランソワ・ボルドの模式図が参照されてきた。筆者も1970 年代後半、レバノンのケウエ洞穴出土の石器群を整理・分析する際には、彼の著名な『前・中期 旧石器時代の石器型式』を手元においていた。しかし、西アジアの新資料の分析には、結局、新しい分類規準を模索し、設定しなければならなかった。当時、“ ルヴァロワゾ ‐ ムステリアン ” という概念の枠内で 同一の石器群内の「ルヴァロワ技法」(亀甲形石核)と「ムステリアン技法」(円盤形石核)の差異を識別し、どのように両者を実践的に分離するかが課題であった。背面の調整や作業面の剥離面構成が多様な残核が あることから「ルヴァロワ技法」と「ムステリアン技法」が複雑に絡み合い、それらの剥離工程が多様であ ることには気づいたが、当時は接合作業を知らず残核の形態観察以外に分析方法をもたなかったので、具 体的な工程を復元することができなかった。安斎正人著「西アジアの旧石器時代に関する覚書」から

 石核:原石が割られて剥片が剥離されたあとの残存部。石核の剥離方法と型式は人類が出現して以来連続的に発展した。不定型剥片が手当たり次第に剥離されている不定型石核→先定剥片を剥離したルヴァロワ型石核 (先定剥離とは、剥片が剥がされる前にその形や大きさが石核の上で入念に準備される剥離方法)→平行2側辺を持つ先定形態を有する石刃や細石刃が連続して、規則的に剥離されている石刃石核 と細石刃石核という発展である。大沼克彦著「世界の石器時代-その概要と石器製作技術の発展-」から

 南アフリカとヨーロッパのアシューリアンにおいては、握槌製作との関連でルヴァロワ技法が出現した。南アフリカのルヴァロワ技法の出現課程は、「握槌やクリーヴァーの需要が増すにつれ、それらを熔岩などの大石から打ち割りつづけて製作するという無駄を省くため、先ず大石から大形剥片を剥離し、この剥片を素材にしてこれらの石器を製作するようになった」(LQwe 1945)と説明されている。一方、ヨーロッパのルヴァロワ技法は握槌を薄身にする整形加工と関連して出現したようである。即ち、握槌の薄化整形は、分厚くもなく、また、薄すぎて脆くもない、ルヴァロワ剥片と同様な、切る作業に好適で丈夫な剥片をもたらした(Breuiland Kelley1956)。この偶然の出来事が記憶され、その改良としての入念な石核調整が考えだされて、ルヴァロワ技法が出現したのである。このような契機で出現した南アフリカとヨーロッパのルヴァロワ技法は、剥がされた剥片が分厚であることから、当時既に軟質ハンマーの使用が知られていたにもかかわらず、硬質ハンマーの直接打法によっておこなわれていた。ルヴァロワ技法は中期旧石器時代に盛行したが、この時代には多様化 し、 剥片、石刃、ポイントの3種剥片が剥がされた。硬質ハンマーの直接打法による入念な剥離であったが、 特に、西アジアのルヴァロワ・ポイント剥離の入念さが際立っている。ルヴァロワ技法における剥片形態の先定概念は後期旧石器時代の石刃技法に引き継がれ、発展した。単一、 あるいはせいぜい 2、3枚の先定剥片が剥がされたルヴァロワ技法に対して、石刃技法では平行2側辺を有する より多くの薄身石刃が軟質ハンマーで入念に、連続して剥がされた。大沼克彦著「世界の石器時代-その概要と石器製作技術の発展-」から


 以上に記されているとおり、石器の製作法の分野では、礫器製作・ 握槌製作を経て 「剥片の剥離」 という新しい手法が台頭しました。下の図が示しているように、石核から剥離した部分を、捨てるのでは無くいわば新製品として、採用しよう、しかも繰り返し剥離して剥片を活用しようとする技法です。この辺りのことを体系的に記した書物が、1992年イニザン他によって著された 「Technology of Knapped Stone」 で、これは1999年に 「Technology and Terminology of Knapped Stone」 として増補されました。前者は大沼克彦他によって直ちに邦訳され、「石器研究入門」 と名付けて出版されました。この翻訳作業は、広く石器の製造技法全体の把握無くしては行い得ないもので、また従来の慣用句だけでは、伝達しきれない概念をも含むため、大変示唆に富んだ結果に到達しています。英語で 「preferential」 、「recurrent」 と二分されていたルヴァロワ技法が、正確に意味するところは、この書によって詳らかにされました。以下に関連する目次部分を示して、参考に供します。            


ここでは「debitage」は「剥離作業」と訳されています。
Technology and Terminology of Knapped Stoneから 石器研究入門」から
上の表の[2.1. The Levallois methods.]に下の文章があります。 
 
Technology and Terminology of Knapped Stoneから  


ルヴァロワ技法による石器製法:参考図

 
   
 「ScienceDaily」から 
第1図:剥片を剥離する

ルヴァロワ技法の手順:1
.石を選ぶ。2.石核の周りから小さな剥片をはがす。32のへこみ部分から、表面の
剥片をはがす。4.表面を凸面にするため、はがし続ける。5.「石核」の中央から大きな「剥片」をはがす。
6.かくてルヴァロワ技法による「石核」と「剥片」ができる。
(From Bordes 1961)  
Neanderthal Behavior」から

         世界の石器時代-その概要と石器製作技術の発展-」から 
ルヴァロワ技法のGIF     















上記赤沢の記述の中の、「フレーク」が左図であり、「ポイント」が右図です。                         「Wikipedia」から                   「Don's Maps」から 
ルヴァロワ剥片の3タイプ  
          
                ポイント              フレーク          ブレード
                                          
写真は「道具 の進化 の見 方,考 え方」から 

 二種類のルヴァロワ技法
 ルヴァロワ技法には二つの種類があります。英語では「preferential」と「recurrent」の二つですが、
なかなか邦訳が見つかりません。

二種類のルヴァロワ技法  

Diversity of lithic production systems during the Middle Paleolithic in France」から
Technology and Terminology of Knapped Stone」・「石器研究入門」から


The Middle Stone Age archaeology of the Senegal River Valley」から  


San Bernardino Cave and the Appearance of Levallois Technology in Europe」から 
      
Technology and Terminology of Knapped Stone」・「石器研究入門」から


Levallois Lithic Technology from the Kapthurin Formation, Kenya 」から 


“Early” Middle Stone Age Lithic Technology of the Kapthurin Formation」から 


The Middle Stone Age archaeology of the Senegal River Valley」から


A Nubian Complex Site from Central Arabia」から 


Middle Palaeolithic and Neolithic Occupations around Mundafan Palaeolake, Saudi Arabia」から 
【参考】
preferential:プレファレンシャル
 1 先取の, 優先の, 先取権のある.
  ・ preferential right  先取特権, 優先権.
  ・ preferential treatment  優待.
 2 選択的な, 差別制の

recurrent:リカレント
 1 a 再発する, 周期的に起こる, 回帰[再発]性の (⇒intermittent SYN); 循環する.
  b 時々[周期的に]起こる.
 2【解剖】 〈神経・血管などの走向が〉逆の方に戻る, 回帰の.
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