1.植物調査について
この植物誌は当初の計画では、植物におよぼす気候の変化や、私ども二人で出来る労力を考えて十年を目標に完成することにしていましたが、ご指導戴いた先生方始めご協力戴いた地域の皆様のお陰と、私どもの努力の甲斐があって七年間の調査で編集まとめまで漕ぎ着けることができ、ここに漸く発表する運びとなりましたが、感慨深いものがあります。
今までにおこなった現地調査は7年間で合計541日を数え、年間最多は107日で、その他90日以上の年も3回あり、今振り返って大変苦労の多い日々だったことと共に、楽しかったことなどが思い起こされます。なお、このように日にちを要したのは、調査が通常行われる植物種の調べのほか、町内における種の分布と植物文化の伝承などの調査および総ての植物について花と果実の確認を行ったことなどによるものと思いますが、地元地域の調査研究だったので何とかここまでたどり着くことが出来ました。
2.猪名川町の山々について
3.気候と植物について
4.植物文化の伝承について
5.帰化・逸出植物について
6.豊かな自然を次世代への引継ぎに向けて
町内の山地は、環境庁の自然環境基礎調査における、自然度尺度の10段階区分から考えると自然度のやや低い二次林が殆どであり、昔は木材の切り出し、炭焼での伐採で山は里山として適度に整備され管理されていたと伝えられていますが、近年、山は放置されるものが多く里山としての機能が低下していると言われています。適度な維持管理で豊かな植物相の山林が永く、各世代へ引き継がれていくように願っています。
◎ 猪名川町に生育している貴重な植物の保全について
猪名川町に生育している、絶滅危惧植物の中に絶滅寸前の植物が多くあることが、この植物調査で確認されました。調査の初め頃に発見されたが、現在見当たらなくなっているものや、植物マニアによりごっそり全部持ち去られたもの、また、絶滅危惧植物に指定されていないが町内では希少で絶滅寸前のものなどがあり、これらを、どのように次世代に引き継いていくかが、当面の課題ですが、この保全は希少生物総てについて云える問題でもあります。このことは、この調査で歩いていて、地域住民の皆さんから希少な生物をどうすればよいのかと、時々聞かれた問題です。貴重なものは発見しても、誰にも云わず、そのまま黙って放置しておくことは、必ずしも大切な生物種の保護にはならないと思われます。
7.あとがき
この植物誌の発表後も、イナガワウツギの観察・町内に成育する植物の調査研究や、絶滅危惧植物の今後の推移を見守り、人々の交流・開発改修工事で侵入する帰化植物の調査などを、継続していく予定にしております。
この豊かな自然が次世代に確実に引き継ぎされることを願って。
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