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2004年11月27日(土)
紅葉

先日、母と京都の高台寺に紅葉を観に出かけてきた。
高台寺は豊臣秀吉の正妻北政所、通称ねね縁のお寺で、今ライトアップなどもしていて話題のお寺だ。
祇園に程近く、京都情緒溢れた東山界隈にあり、その日は高台寺前で外国の男性と日本の女性の結婚式を偶然見ることが出来た。
男性は紋付袴姿、女性は白無垢で、式は一通り終わったのか、二人で人力車に乗ったところを、親族は友人達に写真を撮ってもらったあと、二人を乗せて人力車は清水寺の方へ走っていった。
母もこの辺を歩くのは初めてらしく、八坂神社を抜けて石塀小路から高台寺へと抜ける通りを傍から見ていても楽しそうに歩いていた。
雰囲気のいいイタリア料理店や喫茶店を見ながら、昼を食べて出てきたことを少し後悔している様子が可笑しかった。
高台寺の中を小一時間かけてゆっくりと巡った。想像していた以上の紅葉ではなかったので、もう少し紅葉を観に清水寺のほうへ歩こうかとも思ったのだが、足の悪い母を気遣って止めた。
後で聞くと、母ももう少し紅葉が見たいと思っていたようで、それならと、車で今度は南禅寺界隈を観に行こうと向かったが、車を止める場所がなく、こちらは断念した。
車中から南禅寺、永観堂、銀閣寺道の紅葉を観ながら帰途に着いた。近く電車で南禅寺あたりを散策しに出かけようと思う。
天気はあいにく曇りがちだったが、一瞬の晴れ間に撮った写真が右の写真だ。
左の写真は映画『透光の樹』のパンフレットとサントラCD。
パンフレットには朝日新聞で掲載された秋吉さんと高樹さんの対談とはまた別の対談が載ってたり、撮影時の秘話などもあるので必見です!
CDの方は一枚のジャズCDとして充分に聞ける内容なので、映画『透光の樹』をご覧になった方はもちろん、ご覧になってない方も是非聞いてみてください♪ 

2004年11月17日(水)
能登の旅(3)

今回の旅で活躍したのは折りたたみ自転車。
もともと8人乗りの車だから、一人旅には大きすぎるぐらいで、折りたたまずとも後ろのトランク部に積んでいけた。
車をホテルに置かしてもらって、自転車でホテルから程近い金剱宮へ。
『透光の樹』の初めの部分でも出てくる、鶴来の町の名前とも関わりの深い神社だ。
その昔、源義経が頼朝から逃れて奥州藤原氏のもとへ逃げる時にもこの地を訪れたとかで、それにまつわる石などもあるが、その名前や伝承から来る猛々しい印象はなく、秋晴れの爽やかな天気そのものの穏やかな佇まいだった。
神社は小高いなだらかな山を背にして、県道沿いにあるようだが、実は県道を挟んで下手の手取側沿いに開けた町から神社へと上る階段がある。日曜日の朝だというのに地元の高校生が竹箒を持って掃除している様子は、旅する者として見ていて微笑ましかった。
六郎杉は駅で言えば、この金剱宮の最寄の駅から2つほど先の日御子(ひのみこ)に近い。
自転車で行けば30分かかるかからないかの距離だろうか。日御子駅の近くで農作業をしている女の人に「六郎杉」の場所を尋ねると、すこし驚いた風で、でも丁寧に教えてもらえた。
教えられたとおり住宅に挟まれた路地を行くと、すぐに一群れの杉木立を見つけることができた。住宅地というほど民家があるわけでなく、また、そばに建つ建物もみんな新しいものばかりで、千桐と郷の最初の出会いはなおさら、それから25年後の再会のころにも、きっと「六郎杉」は『透光の樹』の中のように畑の中にぽつんとその木立を際立たせていたのかもしれないと思えた。
写真では影になって分かりにくいが、千桐が座ったであろう幹が、地面を這うように少し伸びた後、なだらかに空に向かっている。高樹さんが初めてこの樹をご覧になったのはいつ頃のことか分からないが、この樹をご覧になったことが、『透光の樹』という作品を生み出したのは確かで、そういう思いにふけりながら、リュックから缶ビールを取り出して、しばらく千桐と同じように六郎杉に腰をかけて物思いにふけった。
CとGの字で出来た耳たぶのマークを樹の幹に探したけれど、当然ありませんでした(笑)。
この後、自転車で鶴来の町の散策を続け、お土産に鶴来の地酒、菊酒『菊姫』と『萬歳楽』を買ってホテルまで戻ると、その日泊まる予定をしていた能登半島の北端に位置する木ノ浦の国民宿舎に向かって車を走らせた。

2004年11月14日(日)
能登の旅(2)

舞台挨拶の後、すぐに発って千里浜に向かった。
空はどんよりとしていて、夕陽が見れるかどうか訝ったが、ともかく波打ち際に車を止めて海が見ながら波音に身を任せたいと思った。
妻と最初のデートの場所と書いたが、そのときはデートだと思っていたわけではない。
その頃、妻と僕は同じ会社に勤めていて、彼女は僕の上司だったわけだが、当時僕は結婚していたし、妻には8年ほど同棲していた人がいた。
ただ、妻の方の関係が随分冷え切っていたらしく、仕事の面でもいろいろ抱えて悩んでいたようで、何かの話の折に、千里浜の海が見たいという話になったのだった。
二人が男と女を意識するようになるのは、これからまだ先の話なので、あの時、少なくとも妻の方には、僕に対して特別な感情を抱いていたとは思えない。
僕はと言えば、正直な話、ときめいてはいたが、それとて彼女への恋愛感情と言うものではなく、願わくば彼との関係が修復して欲しいとさえ思っていた。
今から思えば、そう思うほどに、彼女を意識していたと言えるが、そのときは自分の結婚生活に満足していたし、それを壊す気持ちは少しもなかった。
それでも、あのドライブが、二人の距離を近づけたのは確かで、あのときに車の中から見た夕陽と、暗くなるにつれくっきりと空に残った爪あとのような月が、僕達二人の忘れられない光景になった。

午後3時過ぎに千里浜に着いた。千里浜に着くと必ずといっていいほど寄った浜茶屋で蛤の焼いたものとイカ焼きで遅い昼食をとった。お店の女の人に、この秋に襲った台風の影響を聞いてみたところ、それほどひどい雨風ではなかったとのこと。ひどい時は、店を飲み込む高さにまで波が来ると言う。ビールで喉を潤したい気持ちに駆られたものの、さすがにそれはしなかった。
店を出て、適当なところに車を止めた後、日が沈むまで、波打ち際を歩いたり、海に石を放ったりして、妻を思いながら時間を過ごした。

幸い、日が沈むあたりの空に少し雲の切れ間が出来てきて、何とか夕陽も見ることが出来た。
思い返してみれば、今回の旅で夕方に雲がなくなったのはこの日だけで、夕陽を見れたのは、やっぱり幸運だったんだと思える。
すっかり暗くなってから、僕は千里浜を後にした。

この日は鶴来の街に泊まることにしていた。鶴来へと向かう車中で携帯が鳴った。母からだった。今新潟ですごい地震が起きたみたいで、金沢も震度4を記録しているが大丈夫か?というものだった。
車を走らせていたこともあってか、まったく揺れを感じなかった。街も特に何事もないように、車が行きかっていた。
このときは、この地震がたいしたものではないだろうと思っていたのだが、阪神大震災以来の大きな地震であり、被害が殊の外大きいことが少しずつ明らかになっていった。
だが、鶴来の街は地震があったかどうかも分からないほど、平穏そのものだった。ホテルについても地震の話題に触れられることはなかった。
その日泊まるホテルを見つけるのに随分苦労した。一人旅で、まして土曜日に急な宿泊ということで、民宿はどこも断られた。
ネットでようやく見つけた鶴来のビジネスホテル。写真で見る限り随分と古そうな建物で、正直なところ、最悪なイメージを持って到着したのだが、案の定、前日に連絡を入れ、携帯の番号を伝えてあったにもかかわらず、僕が来るかどうかはっきりしなかったので部屋をまだ用意していないとのこと。
ここで怒っても仕方がないと、ロビーで部屋の用意が済むのを待つことにした。
ロビーといっても、小さなソファーのセットとテレビが、小さなカウンターの前においてあったぐらいだったのだが、古さを感じさせるものの、荒廃した感じがないので、少しほっとした。
15分ほど待って案内された部屋は、2DKの部屋として間貸しできるほどの広さでトイレも風呂も付いていて、ロビー同様、古さを感じさせるものの小奇麗にされていた。
この内容で一泊5千円なら、もう十分だと少し気分がよくなった僕は、荷物を解く間もなく、夜ご飯を食べがてら、鶴来の夜の町を散歩することにした。
8時にまだなっていないというのに、街の中は人通りも車もまばらで、街灯はかえって街の暗さを強めるようにさえ思えた。
でも、昔の宿場町の感じが残っていて、過疎の進んだ街の荒んだ感じはなく、むしろどこか凛とした佇まいを感じさせる街だと、すっかり気に入ってしまった。
とはいえ、ファミレスやファーストフード、あるいはチェーン店の居酒屋などがあるわけでなく、どこもこじんまりとした店構えで、地元の常連客しかいそうにないと思われる店に入るのが躊躇われた。
ホテルから程近いところの何軒かの店を窓やドア越しに覗いてみたが、なかなか一人で入る勇気がなく、どうしようかとしばらくうろうろした。
ホテルに入る前に一軒、お寿司屋さんを見つけて、本当言えばそこに行くつもりで出てきたのだったが、人見知りな性格が顔を出して、どうにも入りづらかったのだが、ふと窓越しに映画『透光の樹』のポスターが貼ってあるのを見つけて心が定まった。きっと妻が隣にいたら何の躊躇もなく入っただろうと、思い切って入ってみた。
カウンターに2、3組、やっぱり常連らしい人がいて、自分もカウンターの隅っこに腰を下ろした。
大将は見慣れない男に多少の戸惑いを見せながら挨拶をしてくれ、まもなく若奥さんが注文を聞きに来てくれた。
とりあえずビールを注文した後、カウンター越しに若大将に造りの盛り合わせを頼んだ。
造りを肴にビールを飲んでいると、大将が仕事ですかと訪ねてきた。
金沢の方で映画『透光の樹』を他より早くやっていたので、それを観に滋賀から来たのだと答えた。
途端に大将の顔が崩れていくのが目に見えて分かった。
「ここも出たんですよ。」と大将。
何のことか一瞬分からず周りを見回してみると、なんとなく見覚えのある光景。
そう、今日見てきたばかりの『透光の樹』の千桐が働いていたお寿司屋さんだった。
見てきたばかりだから、まざまざと映画の寿司屋さんの光景が蘇って、何とも嬉しい気持ちがこみ上げてくるのを抑えられなくなってしまった。
それからは大将に撮影時の大変だった話を、そのときに撮られたスナップ写真を見せてもらいながら聞かせてもらい、僕も高樹さんのHPを作っていて、高樹さんには大変お世話になっていることなどを話して、話はひとしきり盛り上がった。
翌日、『透光の樹』のモデルにもなった「六郎杉」を見に行くことを大将に話したら、地図まで持ってきて場所を説明してもらえた。
ホテルを取れたのも偶然だし、このお寿司屋さんに入ったのも偶然だったが、こうした巡り合わせの不思議を、考えないではいられなかった。
どんな旅になるのかと、不安を抱えながら出てきたが、初日のこの幸運で、僕の中の不安は一掃されてしまった。

写真は千里浜の夕陽と鶴来の銘酒『菊姫』。
BBSでお世話になっているカブト・シローさんもお勧めの地酒。
やや甘い目だがすっきりとした香り豊かな味わいである。
ちなみにホテルの名前は『ビジネスホテル手取川』。
お寿司屋さんは映画『透光の樹』のパンフレットにも載っているが、『西川屋』さん。
鶴来の町の真ん中に位置しているので、散策するにはもってこいのロケーションですし、お勧めです。
六郎杉についてはまた後日に。

フレーム
2004年11月8日(月)
能登の旅(1)

能登を巡る旅は、以前から考えていた妻との最初のデートの場所、千里浜を訪ねたいと思っていたところ、映画『透光の樹』が他に先駆けて、金沢近辺の映画館で上映されることを知ったので、それならば小説の舞台となった鶴来町を訪ねる旅と合わせていってみようということになったのでした。
10月23日の朝6時ぐらいに家を出るつもりでいたのですが、結局寝付けず夜通し起きていたので、そのまま4時過ぎに出かけることにしました。
車で旅に出ることが多かった夫婦でしたので、旅に出かける前のいつもの興奮を一緒に分かち合うべき妻が助手席にいないことを思っただけで、涙がこみ上げてくるという、これからの旅がどんなものになるか思いやられるような出発でした。

あらかじめネットで調べた映画の上映時間は、初回が11時から、2回目が14時からで、2回目の上演前に秋吉さんらの舞台挨拶があるとのことでした。
14時からの映画を観てしまうと当初の目的だった千里浜の夕陽を見に行く時間がギリギリになって、ゆっくり時間を過ごせないと思ったので、初回を見た後、2回目の映画のチケットだけ買って、舞台挨拶を見た後に出ようと考えたのですが、行ってみると2回目のチケットは既に完売済みでした。
もともと舞台挨拶だけと思っていたので、初回のチケットを買った後、2回目の上映を立ち見してはダメですかと尋ねたところ、舞台挨拶のみの立ち見券なら差し上げますといってもらい、この旅で最初の幸運に恵まれたのでした。
映画の感想はBBSにも書き込んだので、省略します。
舞台挨拶に立たれた秋吉さんは、映画よりもさらに若々しい感じがしました。
確か僕が中学生のころだったと思いますが、テレビドラマに出ていた彼女を見て、彼女の持つ不思議なオーラに惹かれて、一時期タイプの女性を聞かれたとき、秋吉久美子と答えていたぐらいですから、未だに気になっている女優ではありましたが、あの頃から少しも変わらない不思議なオーラを発しておられました。
いや、前はもっと人をはねつけるぐらいに強いオーラだったような気がしますが、随分とやわらかく、しっとりとした感じが加わったような気はしました。
自ら着ていた着物が800万円することを明かされ、その日で着るのが3回目になるそうで、「これで元は取れたかしら」と開場に笑いを誘っておられました。
春のシーンを厳寒期に撮らなければならず、とにかく寒かったことなど、撮影の苦労話をされましたが、何だか嬉々として少女らしくて、改めて秋吉さんの人としての魅力を感じた次第です。
一緒に舞台に立たれた根岸監督も、監督時には怖くて厳しい旨を聞いてましたが、やや緊張気味に、照れながら挨拶されている様子は、とても好感持てました。
今もショーケンの問題など、一筋縄ではいかないいろいろなトラブルがあって、相当苦労された作品だったようですが、それだけに思い入れも強く、この作品に自信も持っておられるようです。
まだご覧になってない方は、ぜひ、劇場へ足を運んでみてくださいね。
撮影しないでくださいと言われたのですが、こっそり遠くから1枚だけ取らせてもらいました。
不鮮明で暗い画像ですが、舞台挨拶の雰囲気だけでも楽しんでください。