シューレス・ジョーにとっての
  "Field of Dreams"




レイは、声に導かれるまま、トウモロコシ畑をつぶし、野球場をつくった。
しかし、クリスマスが過ぎ、春が来ても、誰も現われない、何もおこらない。
収穫が減り、貯金を使い果たし、農場を維持することさえままならなくなったレイに、
娘のカリンがいった。

「球場に 誰か いるわよ。」

真っ暗なグランドに、シューレス・ジョーがひとりたたずむ。
その姿に、形容しがたい感動で胸が熱くなる。

”野球ができるのか”
”そうとも”

2人は自然とグローブとバットをもつ

シューレス・ジョーはレフトでレイのノックを受ける。
そして、次にバッターボックスにはいり、
レイの投げる外角低めの直球をホームラン。

ジョーはいう。

「野球はいい。
 金なんか要らない プレーできれば・・・
 弾を打つ音 におい
 ボールかグローブを 顔に近づけたことがあるか?
 町から町への 汽車での移動も楽しかった。
 ホテル 真鍮のタンつぼに真鍮のベッド
 そして観衆・・・
 大きな当たりに皆立ち上がる。
 金なんか 要らない。」

球場をみつめるシューレス・ジョーの瞳がなんとも印象的だ。

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原作では、球場にやってきたシューレス・ジョーが、こう告白している。(抄 訳)

  * * * * *

「金なんて、本当は欲しくはなかったのだ。食べるだけの金で十分だった。 いや、働きながらただで野球をやってもよかったのだ。」
「戦争で頭を吹き飛ばされた男が、それに気づかず、そのまま走り続けた 話を聞いたことがある。ある老人は、何十年も前に腕をなくしたというのに、夜中にその腕がかゆくてかくそうだ。永久追放されて二度と野球が出来ないってのは、そんなふうだった。体のどこかをすっぱり失った感じだった。」
「もう一度野球が出来るなら、悪魔のチームにだって入るさ。」

  * * * * *

すべてを投げ出してでも、もう一度野球がやりたかった。
ジョーが愛したのは、野球によって獲得する金や名声ではなく、ただひたすらに野球をすることそのものだった。

それを奪い取られたジョーにとって、ここはまさにフィールド・オブ・ドリームスなのだ。

「また来てもいいか?」
「いいとも あんたの球場だ。」
「仲間が8人いるんだ。連れてきてもいいかい? きっと喜ぶだろう。」
「来てくれ。いつでも歓迎するよ。」
 ジョーとともに球界を追放されたチームメイトたちだ。

そして、ジョーはたずねる。

「ここは天国なのか。」
「いいや アイオワさ。」

この会話は、映画の終盤に、レイと父親との間でも交わされる。
「ここは天国なのか。」
「アイオワさ。 天国は本当にあるのかい?」
「あるとも。そこは夢の叶うところだ。」
「それなら・・・ここは天国かもしれない。」

ここにきた人はみんな思うのだ。
「ここは天国だ。」

シューレス・ジョーは、
ここに訪れた人たちみんなの "Dreams come true" を手助けする。

グラハムには打席でアドバイスし、最後に声をかける。  「いい選手だ。」

テレンス・マンにはトウモロコシ畑に誘う。  「一緒に来ないか。」

そしてレイには、
若き日の父親が来ていることを教える。

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驚いたレイはジョーにいう。

「”それを作れば 彼はやって来る”   あれは、君(ジョー)の声だったのか。」
「違うよ 君(レイ)の声さ。」

" Field of Dreams " に降りたったシューレス・ジョーはレイにいう。

ここは君にとっての " Field of Dreams " なのだと。



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