シューレス・ジョー と ベースボール
アイオワのトウモロコシ畑野中にぽつんとある小さな野球場。 そこに一人の野球選手が立ったとき、形容しがたい感動で胸が熱くなる。 選手の名は、ジョー・ジャクソン、別名「シューレス・ジョー」 ベーブルースや対カップと並ぶ大リーグの歴史を飾る強打者だ。 マイナー時代に、スパイクを履かず、素足でプレーをしたというエピソードから「素足のジョー」と呼ばれるこの選手、汚れた英雄として球史に名を残した幻の強打者でもある。 1919年のワールドシリーズ、シンシナチ・レッズとの対戦したホワイトソックスは、その戦力から絶対優勢を伝えられいたにもかかわらず、シリーズで敗れ去ったのだが、このとき、ホワイトソックスの主力選手8人が金銭を授受、八百長試合をやったという事件がおきた。 全米を騒然とさせた「ブラックソックス・スキャンダル」である。 ジョーもその中の一人だった。 裁判が行われたのであるが、裁判所を出るジョーに向かって、一人の少年が叫んだ。 「嘘だと言ってよ、ジョー」 アメリカの人々の悲痛な願いを代表する言葉だった。 1921年、裁判の結果は全員無罪の判決、喝采を叫ぶ選手やファン。 だが、この喜びも瞬時のこと、この事件を契機に大リーグの初代コミッショナーに就任したランディス判事のツルの一声。 「何人も球界を汚させない」 この強い意志の下で全員永久追放の身となったのだ。 ワールドシリーズでのジョーの成績は、12安打1ホームラン無失策で、打率0.375は両チームトップ。とても八百長を演じたとは思えないものだった。以後、大リーグでジョーのプレーを見ることはできなかった。 これが、シューレス・ジョーの「幻の強打者」「汚れた英雄」としての姿になる。悔やんでも悔やみきれないファンの心情、フィールド・オブ・ドリームスでは、レイ・キンセラの父ジョンを借りて「号泣した」と伝える。 シューレス・ジョー(左)、ベーブルースとジョー(右) ジョーと同時に球界を追放されたホワイトソックスの選手たち (前列が選手たちで、左から2番目がジョー) 1919年は、ベーブ・ルースが29本のホームランを放ち、始めて本塁打王に輝いた年と同じである。 そして、1993年8月、アメリカの「サンフランシスコ歴史再考裁判所」は、故ジョー・ジョクソンに無罪の判決を言い渡した。「彼は八百長を知っていたが、自分ではしなかった」と認めたのだ。 また、2001年、マリナーズのイチロー外野手(27)は、ジョー・ジャクソンが残した大リーグのシーズン新人最多安打記録を90年ぶりに塗り替えている。 アメリカ にとっての ベースボール アメリカにとって野球が如何に重要な位置を占めているかは、この「ブラックソックス」事件の裁判長を勤めたマクドナルド判事が書き残した、野球に対する文書に表れている。 「野球はアメリカの精神風土や性格の形成に大きな影響を与えている。それは、自分の力で功績を挙げていく精神やフェアプレーの精神でこれは国民に浸透さすべきものだ。野球は公明正大、正々堂々と行うべきもので、一般市民が野球に対する熱意を持続するか立ち消えるになるかは、ここにかかわっている。」 さらに 「野球はアメリカの文化制度のひとつだ。」 とまで言わしめている。 フィールド・オブ・ドリームスはこれに対して、答えを出している。 映画のなかで、テレンスマンは語る。 「長い年月変わらなかったのは野球だけだ。 アメリカは驀進するスチームローラだ。 すべてが崩れ、再建され、また崩れる。 だが、野球はその中で踏みこたえた。 野球のグランドとゲームは、この国の歴史の一部だ。 失われた善が再び甦る可能性を示してくれる。」 アメリカにとって、如何に野球が大切かを知るものです。 |