2007-01-14 Sunday
華麗なる一族
 
 山崎豊子原作「華麗なる一族」は二度目のテレビドラマ化である。だが、なんといっても映画の「華麗なる一族」がよかった。今回のTBS系列ドラマの一回目をみたが、「砂の器」といい「白い巨塔」といい、先年のものとの違いは顕著で、評にかからずというほかない。
 
 原作にない人物を登場させる=局の都合や脚本、演出家によってテレビタレントに役を与える=のもよしあしである。各々のタレントにそれだけの能力、表現力があれば問題はないが、割り当てられた本数に帳尻を合わせて、余計な人物や場面をこしらえると、焦点がぼやけて、わけのわからないドラマとなる。
 
 そんなことをするより、登場人物の人間像を彫りさげるほうが陰影に富んでおもしろかろうに。もっとも、深く彫るに値するタレントはいない。彫りが浅いというか、軽すぎて、北大路欣也の時代がかった重さだけが突出してしまう。
 
 映画の「華麗なる一族」と比較するつもりはない。木村拓哉は仲代達矢、長谷川京子は山本陽子、柳葉敏郎は二谷英明、北大路欣也は佐分利信。もうよいだろう、役者のガラとニンがあまりに違いすぎて比較にならない。
ただ、鈴木京香は京マチ子ほどの色気、貫禄、演技力はなくとも、独特のいやらしさをうまく表現していて、悪女のハラはある。また、仲村トオルも田宮二郎ほどの風格はないが、役柄のニヒルとキザは互角といってもよい。
 
 映画は1974年公開、出演者のほとんどは鬼籍に入ってしまった。佐分利信、田宮二郎、小沢栄太郎、河津清三郎、志村喬、加藤嘉、西村晃、滝沢修など、名優という名にふさわしい華麗なる人々だった。 
 
 
 ※「華麗なる一族」は山陽特殊製鋼倒産事件をモデルにしたとされ、架空の阪神銀行は神戸銀行をモデルにし、その頭取は神戸銀行代々の頭取・岡崎家当主といわれている※

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