2006-10-09 Monday
核実験
 
 三連休の三日目で、のんびりモードとお疲れモードの混じった10月9日正午頃、NHKが「北朝鮮が核実験を行った模様」と報道した。時おりしも安倍首相が訪中を終え韓国行きの航空機内。
 
 核実験については事前に北朝鮮が中国政府に伝え、中国政府が日韓米などの各大使間に伝えたということなので、各国政府は概ね知っていたわけである。知らされていなかったのは詳細。実験場所と規模の特定などの情報が交錯するなか、「もし事実であれば、容認できるものでなく、断固たる姿勢をとる」という声明が出された。
 
 今後、国連憲章第七章に基づく北朝鮮への制裁が国連安保理の壇上に上ることは疑いの余地がない。問題は制裁の内容である。拒否権を持つ常任理事国五カ国の中露は北朝鮮と同盟国、中露が北朝鮮に対して決然たる姿勢を示すとは思えない。
読売新聞ネット版によれば、「英BBC放送によると、英外務省は9日、北朝鮮の地下核実験実施の発表について、『核実験はきわめて挑発的な行為であり、我々は断固とした対応をとる用意がある』との声明を発表した」と報じた。
 
 英国は地理的に北朝鮮から遠い。遠いのによく言ってくれたと思う人もいるが、遠いから言えると思う人もいる。私は、いかにも英国らしい毅然たる物言いと評価しているけれど。
口では北朝鮮を非難しながら行動は裏腹ということもある。日本のメディアは、「中国と韓国が北朝鮮を強く非難した」と報道しているが、テレビ画面で中国の報道官や盧武鉉大統領の顔をみるかぎり、強さも認められないし、非難と受けとめることもできない。隣国のよしみ、同民族の苦衷か。
 
 核保有国・中国のタテマエの見極めというところだろうが、総じて外交は難しい。今回の核実験は、米国の動向を探る狙いと、北朝鮮国民への締め付け、すなわち彼らに敵視政策を強い、国内的不満を一気に集約する狙いがあったようにも思える。
基本的に将軍様と軍幹部は、核開発と核実験をおこなうことが生き残りの道だと思いこんでいる。21世紀は国際協調の時代である。時代遅れも甚だしいというほかなく、六カ国協議も国連決議も無視する行為は、つまるところ将軍様と軍幹部の保身・延命が目的であるといえるだろう。
 
 パキスタンが核実験に成功(1998年)したら、米国はムシャラクと会談したという近年の歴史もあるにはあるが、柳の下にドジョウが何匹もいるのかどうか。イランが米国に対して強硬姿勢を貫けるのは核保有だけでなく、産油大国の強みがあるからだ。
発展途上国のなかには、核を保有すれば、米国や先進諸国と対等のテーブルにつけると考えている国もある。経済支援を引き出す道具が核と考えている独裁者の存在も無視できない。北朝鮮が必ずしも非難されない理由はそこにもある。
地球上の国々すべてを集約することは困難。米国の望む制裁そのままを課すことも難しい。
 
 中露が米国の制裁決議案に難色を示すのは必死、修正を求めてくることは間違いなく、常任理事国の足並みが揃うかどうかは修正の内容いかんである。
国際社会の趨勢は核実験反対、北朝鮮けしからんの方向に動いている。中国が北朝鮮をかばう姿勢を断固崩さないということになれば中国が孤立する。中国はそれだけは避けたい。巧みに避けつつ妥協案を提示してくるだろう。
 
 将来的に軍事行動を見据えている米国の思惑通りにいかないことは確かとして、日本としては対北朝鮮制裁措置の指針を曲げず、辛抱強くはたらきかけていかねばならないだろう。

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