2006-04-27 Thursday
不撓不屈
 
 たかが証券取引法違反、されど証券取引法違反である。ライブドアの企業買収にからむ工作に行き過ぎがあったのは事実であるが、個人投資家にとって頭痛の種は風説の流布。
マーケットはムードに影響され、風説の流布に対する免疫ができていない。早い話、株価はムードに弱く、風評に左右されがちなのである。
 
 ゼロ金利政策にクサビが打たれたといっても、市中の定期預金は超低金利を保ったまま推移している。バカバカしいからタンス預金する人も多いというが、若干のリスク承知で株や投資信託に資金を投入する個人投資家が増えている。規制緩和が実施され、銀行の多くが投資信託に手を出すようになった。
 
 株を買うにしても、従来の証券会社のバカ高い手数料に対抗して、イー・トレード、マネックス証券などのオンライン上の証券会社を利用すれば、一律数百円の格安手数料で株を売買できるようになった。そうなると、自宅から証券会社へ出向く時間と手間、交通費などの節約にもなる。時間と手間がかかる分、個人投資家が手数料をもらってしかるべきなのに、現況は逆さまだ。
 
 野村、日興、大和などの大手証券会社は、いまはふんぞり返っていられようが、5年、10年先、パソコンは苦手という年寄りが徐々に鬼籍に入っていった暁、経営不振に陥っていくかもしれないと思えるほどネット社会の趨勢は衰えを見せない。
 
 じっさい大手証券会社などというものは、日航と全日空が申し合わせたがごとく航空運賃を同一にするように同一手数料を設定する。違法ではないにせよ独占である。
航空二社の超割、特割といったバーゲン料金が横並びなのもどうかしている。機内のシート配列、デザインなどを斬新的に構築し、航空二社それぞれの個性を打ち出したすえの200〜1000円の価格差なら歓迎されるだろうに。
 
 熾烈な競争より仲良し料金を志向するのはユーザーにとって迷惑千万。乗客の安全確保をした上で、しのぎを削って独自料金を設定すべきである。同様に、証券三社も手数料を引き下げるべきである。買って手数料、売って手数料、どう転んでも、大手証券会社はトクするようにできている。
 
 今夜おそく、ホリエモンが三ヶ月ぶりに保釈された。彼にとって保釈金三億円ははした金、いまごろ、六本木ヒルズの自宅マンションでゆっくり風呂につかった後、久しぶりに飲むビールのうまさを体感していることであろう。長勾留の後の風呂と酒は格別である。
 
 三月で8キロ痩せたというホリエモンは、顔が締まって年相応に見えるようになった。収監前の美食と飲酒から解放されて痩せたことは明らかで、脂ぎったホリエモンの顔からギラギラが消えていた。粗食が身体に良い効果をもたらしたのである。
 
 東京拘置所で何を考えていたのかさだかではない。よもや個人投資家に無配当を続け、自分だけ贅沢し、私腹を肥やしてきたことへの反省があったとは思えないが、今後そうした反省ができるようなら、世論の一部を味方につけ難局を乗りきっていけるかもしれない。
 
 違法行為は違法行為として司法の裁断に委ねるとして、私たち個人投資家がホリエモンに期待するのは、法人名義で購入した自家用ジェット機に馬鹿面して乗っているホリエモンではない。既存社会の陋習に対抗し、打破することで大衆の支持を得る負けじ魂とでもいうか、困難に立ち向かい、困難を乗りこえていく不撓不屈の精神なのである。

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