2005-07-09 Saturday
GREAT BRITAIN
 
阿鼻叫喚のさなか、国民性ということがかくも顕著に表出されるものかと、いまさらのごとくロンドン爆破テロをみて思った。その場にいあわせたわけではない、BBCやフランス2の流す映像を目にしただけだ、被害にあった人々はパニックに陥ったにちがいない、だが、カメラを向けられた男女の多くは気丈にコメントしていた。
 
 第二次大戦のさなか、ロンドンをはじめ英国の主たる都市のいくつかはナチスドイツの空襲にさらされ、多くの市民の生命が奪われるなど甚大な被害をこうむった。
ウィンストン・L・S・チャーチル英元首相が英国民に向けておこなった下院での演説、あるいは、ラジオ演説などの歴史的演説は、英国民の多くを奮い立たせる類のものであったと思われる。だが、ほんとうに英国民をして自ら奮い立たせたのは彼等自身の、不撓不屈の魂の発露によるものではなかったろうか。
 
 自らの魂の発露。神は決して乗りこえられない試練はお与えにならない、克服できるからこそお与えになる。それこそが英国の国民性であろう。BBCのカメラに向って、頭から血を流しながら、毅然とこたえていた男女に、私は、いまはじまったばかりの苛酷な試練に敢然と立ち向かってゆく英国魂を垣間見たのである。

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