2005-04-08 Friday
今年の流行
 
 2005年にはやるのは中年女性のCEO(最高経営責任者)か、と思わせる三洋電機の新人事である。ダイエーのCEOに58歳の外車販売スーパーウーマンが就任して世間をアッと驚かせた(むろん驚かない者もいる)が、今度は大手家電メーカーの仰天人事、まだわずか二例とはいえ、世の中まさに中年女性花盛りである。
 
 三洋電機といえば、バブル時にカラー冷蔵庫(それまで冷蔵庫は白にきまっていた)の販売や、洗い分け全自動洗濯機(洗濯槽が二槽あり分別洗いが可能)などのユニークな発想で時代の寵児となったこともあるが、バブル崩壊後、デジタル製品の不振、中国市場への工場誘致失敗など、経営トップの若返りがささやかれていたなかでの人事刷新である。
 
 だが、三洋電機総帥・井植氏は会長職を退任したとはいえ、代表権を有する取締役にとどまるし、新社長は長男の井植敏雅氏、首はかわっても同族経営の中身はかわっていない。単に目先をかえたというだけのことである。これで時代を乗りきっていけるかどうかはまったく予想できず、今後はDVD機器やデジタルTVなどのデジタル家電を消費者にうまくアピールできるかいなかに社運が託されると思われる。
 
 サンヨー製のデジカメ、PC、液晶テレビ、DVDレコーダーなどを使っている知り合いは私にはいない。それがそのままサンヨー製品の普及を物語るわけのものではないが、一応の目安になることはまちがいあるまい。要するに売れていないのだ。
 
 さて、三洋電機の新CEO・野中ともよ氏(50歳)は記者会見の席上で、「いちばん驚いているのはわたくし。あれほどすごい人たち(三洋電機社員)がいて、すごいことをしているのに云々」とリップ・サービスを忘れなかったが、21世紀の経営戦略を持っているかどうかの詮索はともかく、人は気まぐれ、楽ちん世代は特にその傾向が強い。デジタル家電の売上げを伸ばす知恵はお持ちなのであろうか。
 
 若い営業マン、開発担当は従来の幹部よりついていきやすいのかもしれない、だが、幹部の首がすげかわったわけではなく、CEOがかわっただけなのである。企業の風通しがよくなっても、かわらないものはかわらない、そこが問題なのではないか。
新社長はあまりにめぐまれた環境の下で育っている。井植一族は関西出身で、一族の多くは甲南大、甲南女子大などのおぼっちゃん、おじょうさん学校出身、新社長は米国の大学出身らしい。そういう方々に時代の趨勢、ニーズがほんとうにわかるのだろうか。
 
 経営戦略の推進は最高幹部の資質、能力もさることながら、参謀役の適不適にもよる。
それらは両輪で、両方がよくないと物事は前に進まない。女性のCEOが今後ふえるかどうかの話については、過渡期的傾向として増加すると思われる。それは、家庭内のデジタル家電選びをするのは女性のほうが多い、つまり、奥さんお嬢さんが選択権を持つ時代だからである。
 
 ダイエーで食料品を買うのもほとんどが女性、照準を合わせるのは女性に対してである。だからといって、女性CEOがうまく機能するかどうかはまた別の問題なのだが、それはそれ、目先をかえて取り組むほかないのかもしれない。
そして、家電のほとんどが超大型店での安売り販売に収斂、集約されつつある昨今、家電業界全般の生き残りを賭けた熾烈な競争もまたつづくのである。

前頁 目次 次頁