2005-04-05 Tuesday
色にふけったばっかりに‥
 
 「仮名手本忠臣蔵・六段目」、早野勘平のせりふ『色に耽ったばっかりに』は、勘平の主・塩冶判官(浅野内匠頭)が江戸城・松ノ廊下で高師直(吉良上野介)に刃傷(にんじょう)に及んだとき、恋人の腰元・お軽と逢引きし、愛の交歓をかわしていたことを悔いたことばである。
 
 お家の大事に自分は快楽にふけっていた、なんとあさましいことかと勘平は嘆息するのだが、そのとき勘平は腰刀を腹に突き立てたあとだった。忠臣蔵が時代をこえて日本人の心性に訴えかけるのは、恩を受けた人や大切に思う相手が困窮をきわめたり、生命の危機がせまったりしているときに、自分は呑気にしてはいられないという意識が前提となっている。
 
 そこには、人は人、自分は自分といった排他的価値観は微塵もみられず、自己中心主義をまがまがしいことと否定する姿勢が打ち出されるのであるが、こういう芝居に一定の評価があたえられるのは、本邦のほかには韓国など儒教の影響をうけた国だけではないだろうか。
 
 自省の念、自己省察が存在するがゆえに人は人なのであるときいた風なことをいってオツにすますつもりはない、対象となる相手の親密度が高ければ高いほど、自分が遊び呆けている間にその人が災難にあったときの衝撃は大きい。それが自分の子とか配偶者ならなおさらである。
 
 横浜ベイスターズの佐々木主浩(かずひろ=37歳)が先月正式離婚し、近々タレントの榎本某(24歳)と入籍予定であるという。榎本某はすでに妊娠しており、ふたりの愛の結晶はいずれ誕生する。佐々木主浩の別れた夫人(36歳)は元タレントで、彼らの間にはたしか子供が二人いたように記憶している。仄聞するところでは、子供たちの親権は父・佐々木主浩に付託されたらしい。
 
 離婚の原因の主たるところは当事者同士にしかわからないが、夫が米国のメジャーリーグ・マリナーズに移籍したあたりから暗雲がたれこめはじめたもののようである。
かの地で佐々木と榎本某が連れだって歩くすがたを目撃したファンもいる。佐々木はメジャーに移籍する以前に暴力事件(スナックの客との乱闘)にかかわっており、それが表沙汰にならなかったのは、その筋の方々がモミ消したからではないかともっぱらの噂である。
 
 190a、98`(いずれも公称)の立派な体躯であるし、野球で鍛えた身体はさぞ力強かろう。子供のころから野球漬けの毎日であったから、野球以外のこと、社会常識などはほとんど学習してこなかったろう。
わずかな例外をのぞいて野球選手のほとんどは同様で、彼らが現役を離れ、監督やコーチ、解説者などになってはじめて社会常識の壁にぶちあたる。異論はあろうが、だいたいそういってまちがいはない。
 
 野球選手はマザコンが多い、世事にうとい、それゆえ夫人がしっかり監督しないと破綻をきたす。身体が資本の商売だから、ふつうのサラリーマンより食生活の重要性が高く、料理にたずさわる者は、栄養価の高いバランスのとれたメニューを考えねばならない。そこが肝心なのだ。
 
 佐々木と榎本某との相性が抜群に良かったのか、佐々木は上記のことどもへの認識が稀薄のように思える。、私がヤキモキせずとも、いずれ帳尻は合う。榎本某が単なる色事の相手であったなら結果は悲惨である。
田淵幸一氏の夫人ジャネット八田(元タレント)さんのように亭主に尽くす料理上手とは思えず前途多難、佐々木も盛りをすぎたことは明らかで、逆説的な言い方だが、それゆえ色にふけったのである。勘平と異なるのは、勘平は色恋、佐々木は不倫という点で、佐々木の異名も不倫大魔神と変更されるべきであり、現役引退も間近ではなかろうか。

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