2005-03-07 Monday
ソニーの悩み
 
 おそきに失した感はあるが、やっと経営陣が刷新された。もっと早く退任していればと、タラ、レバの話をしても詮ないことではあるが、せめて2年前に退陣してくれていれば今後の展開も期待のもてるものとなっていたろうにと残念でならない。
 
 ソニーの出井伸之氏と安藤国威氏は6月22日の株主総会後の取締役会において、それぞれ会長(兼グループ最高経営責任者)、社長を退任し、最高顧問、顧問となる。安藤氏の顧問はともかく、出井氏の最高顧問というのは気にくわない。
 
 一見スマートで、メディア主催のベストドレッサー賞に輝いたこともある出井氏だが、薄型テレビでは他社に大きくおくれをとり、DVDレコーダーでも競争に負けた。パソコンやデジカメでもソニー製品は高値を維持しつづけ、売上げはDELLに追いぬかれ苦杯をなめた。
 
 ソニー製品の高品質という時代はすでに終わり、あきらかに新しい時代を迎えているのに、ソニーは列車に乗りおくれた。他社のパソコン、デジカメの寿命が7年で、ソニー製品が14年ということはありえず、こわれるときがくれば、いずこもこわれるのである。
松下がいちはやくそのことに気づき、シャープをはじめとする先行組との競争力をつけるべく必死で立てなおしをはかったのと対照的に、出井氏はあまりに悠長にかまえすぎた。
 
 ソニー株が暴落といってもよいほどの安値で推移しているにもかかわらず、出井氏は時間を浪費することのほかにほとんどなにもせずここまできてしまった。個人投資家への責任を認識しているとはとうてい思えない所業の連続であった。ソニー株が日に日に値下がっているあいだ出井氏のしたことは、有名大学共同のロボット開発、米国の某大手映画・音楽会社の買収など。
 
 最高責任者という肩書きを有するのであれば、自社株が2年で半値以下になった責任をとってしかるべきなのだが、そこが日本的経営の概念の持ち主、なんら責任を取らないまま時だけが過ぎた。映画や音楽配信、ゲームやロボットで先行組に勝てると考えたなら呆れかえるほかない。
 
 ソフトウェアなら楽天やライブドア、ソフトバンクのほうが強いにきまっている。かれらは消費者の上にあぐらをかいておらず、低料金をうたい文句に、取れるところからは徹底的に取るという手法なのだ。インターネット上のオークションはそのいい例である。
 
 5年後、ソニーは経営権を外資系に譲渡、あるいは掌握されているのではないかと私は危惧している。カルロス・ゴーンのようなすご腕の経営者をトップにすえないかぎりそうなる公算は大きい。そして、そうなった暁にソニー株はふたたび上昇すると思っている。

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