2005-03-03 Thursday
ご乱行
 
 戦後強くなったのは靴下と女であるとずいぶん以前にメディアが喧伝していたことがある。戦前(昭和16年=1941年以前)の靴下はすぐにほころびて穴があいた。とはいっても、私は戦後間もないころに生まれたから穴のことは知らない。靴下がほころびやすかったのは戦前ばかりではなかろう、昭和30年代なかばくらいまでの靴下は弱かったように思う。
 
 戦後、女が強くなったことの理由は、日本国憲法制定に先立って衆議院議員選挙法が大幅に改革され、婦人参政権が認められ、満20歳以上の男女に選挙権が付与されたことにも一因がある。当選するには女性に嫌われてはおしまい、有権者の半分以上は女性なのだ。
有権者数もそれまでの3倍近くになった。それ以前、女性は選挙に立候補することもできず、むろん、選挙権もなかった。選挙権は1925年の選挙法改正により、25歳以上の男だけに与えられていたのである。
 
 たしかに女性の人権が認められるようになったのはおおいに朗報であったが、戦前を引きずっている男も依然として多かったこともあって、女性の社会進出や高評価は一部の分野‥オリンピックなどのスポーツ界‥をのぞいてまだまだ遅れていた。
戦後の教育を受けた人の多くが変わったのは、戦前の教育を受けた人々の影響が及ばなくなってからであろう。それは東京オリンピック後のことである。
 
 さて、お立ちあい、女性の強さはいまにかぎったことではなく、北条政子や日野富子はいわずもがな、庶民のなかにもカカア殿下は存在したわけであって、亭主に対して発散するだけなら問題にならない、公の場というか、ほかに人がおおぜいいる場所で発散するから問題になる。
 
 女子モーグルの金メダリスト・里谷多英はとかく酒乱の傾向があると以前から噂されていた。酒癖のわるい女は酒癖のわるい男より目立つ。酒乱は個人的問題だから、ふつうはだれも注目しないのだが、彼女の経歴とそのご乱行ぶりが尋常ではなかったのでメディアが取り上げた。
ことは女性の人権にかかわることゆえ、あまり大きな声ではいえない。ウィンター・スポーツの選手だから冬盛んに燃えるのだろう。
 
 3月3日の日刊スポーツ紙をかいつまんで記せば以下のごとし。
 
 里谷多英は2月7日、コーチらとともに六本木のクラブへ行った。
酒好きで知られる彼女は泥酔し、連れの若い白人男性とあやしいムードとなった。同紙は目撃証言として、里谷と白人男性が奥のVIPルームに移り、ソファで性行為におよんだと報じた。店員が止めに入ったところ、彼女は激怒し‥そりゃ激怒するでしょう、途中です‥頂上に達する前に雄叫び(雌叫び?)をあげ、グラスを投げたり、店員につかみかかったりしたらしい。
店側はやむなく110番、8日午前3時ごろ、かけつけた麻布署警察官が里谷と白人男性に任意同行をもとめ、里谷はそのまま拘置され、正午すぎに釈放されたという。
 
 亭主持ちの彼女としては、亭主のことなどふだんから眼中になかったのでしょう。
近年、発散型の女性が激増したとはいえ、これはいささか発散しすぎとは思うが、水際でモミ消され、巷間には伝わってこない話題を提供してくれたのはさすが元・金メダリスト、やることが豪快というか一直線というか、我慢が足りないというか、極楽は日が短いというか、穴があったというか。
 
 きょうは桃の節句、女性の顰蹙(ひんしゅく)を買うのを承知で脱稿。

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